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宿研通信 12月号

気になる宿屋レポート 末吉が行く

宿泊予約経営研究所所長の末吉秀典が注目の宿泊施設をご紹介するこのコーナー。
今月は、「嵯峨塩鉱泉 嵯峨塩館」さんの体験レポートをお届けします。

「嵯峨塩鉱泉 嵯峨塩館」

戦国時代から知られる鉱泉を持つ老舗旅館

ブドウ栽培や良質なワインの生産で有名な山梨県勝沼。
そこから、武田家終焉の地と云われる景徳院を通り過ぎ、黄葉に染まる山間部を進むと、
古民家風の一軒宿「嵯峨塩館」が現れます。

今回ご紹介する「嵯峨塩鉱泉 嵯峨塩館」さんは、
各宿泊予約サイトのクチコミで高い評価を得ている人気の秘湯宿です。
実は私自身のお気に入り宿のひとつでもあり、よく知人にオススメしています。

嵯峨塩館の歴史は古く、鉱泉自体は武田信玄の隠し湯として戦国時代から知られていました。
宿屋は明治中期に創業、110年以上の月日をかけ今日に至っています。

施設の周りは色彩豊かな落葉樹で一面覆い尽くされており、
日川の清冽な沢水の音が秘境の情景を一層盛り立てているようです。


 
本館1階の客室『しらかば』 本館1階の客室『しらかば』
本館2階の客室『すずらん』 本館2階の客室『すずらん』



本館3階の客室『あけび』 本館3階の客室『あけび』


館内は明治から大正にかけた創業当時に建てられた母屋を改築した本館と、
新たにできた別館を中心に構成されています。
12室の客室、男女別の古代檜風呂の浴場と露天風呂や、古民家の重厚な梁で組まれたロビー、
囲炉裏が据えられた談話室、土産処、食事処などがあります。

食事は春夏秋冬、嵯峨塩の自然が体感し旬材の良さを堪能できるようになっています。



彩り鮮やかな季節の旬を活かした
山家会席料理
彩り鮮やかな季節の旬を活かした山家会席料理
朝からご飯とお味噌汁のお代りが
ついつい進んでしまう朝食
朝からご飯とお味噌汁のお代りがついつい進んでしまう朝食



夕食後は囲炉裏を囲んで
好評の切餅焼きをいただきます
夕食後は囲炉裏を囲んで好評の切餅焼きをいただきます


浴場に隠された、女将のおもてなしの心

私が初めて宿泊した時に、懐かしくも贅沢だと感動した仕掛けが浴場にあります。
それは、体を洗う湯がシャワーではなく掛け湯になっていたことです。

湯椅子の目の前には、無色透明で上質な鉱泉湯がゆらゆらと揺れながら満たされていて、
そこから湯桶でお湯をすくい、直接お湯を体に掛け清め流す。これは本当に心地いいです。

この、あえて洗い場を掛け湯にしているところに宿屋のこだわりがあります。

女将の辻差百合さんにお話を伺ったところ、お風呂からあがる時も、
嵯峨塩の、ph10.2と高アルカリで美肌効果がある、
効能豊かな掛け湯で流してもらいたいという願いがこの仕掛けには込められているそうです。
そして、掛け湯が当たり前だった昔を再現し、体感してもらいたいという思いもあるのだとか。
このこだわりが、はるばる宿泊に来られたお客さまへの誠意なのでしょう。




古代檜の香り漂う内風呂
古代檜の香り漂う内風呂
四季を通じて嵯峨塩の自然を
体感できる露天風呂
四季を通じて嵯峨塩の自然を体感できる露天風呂


ゆらゆらと上質なお湯を湛える掛け湯 ゆらゆらと上質なお湯を湛える掛け湯
直接湯桶で汲み取り体に掛け流します 直接湯桶で汲み取り体に掛け流します


さらに、“手作り”にもこだわりがあります。
館内の調度品の多くはご主人の手によって作られており、
お食事に使う野菜なども同様に手作りされているそうです。
自家菜園の無農薬野菜から、刺身こんにゃく、味噌に至るまで、
できる限り手作りのものをご提供できるように心がけているとのことでした。



自然と文明の調和に選ばれる理由がある

自然を感じられる様々な仕掛けの一方で、客室のしつらえを見てみると、
最新のDVD付き液晶テレビや加湿器がしっかりと備えられています。

私が伺った日は、ロビーの床を、いま話題の自動掃除機「ルンバ」数台が
駆けずり回って(?)掃除をしていました。
山奥の一軒宿らしからぬ最新設備が揃っているあたりが、
高いクチコミ評価を集めている理由だと感じられます。

嵯峨塩館は、山の懐深い湯宿ならではの自然の趣、
ご主人と女将さんの感性で生まれ育った宿と言っても過言ではありません。
現代人が求め憧れる自然の空間と、
発達した文明の利便性が調和しているところにお客さまは惹かれるのでしょう。

ぜひ、皆さまも一度ご宿泊いただければと思います。


嵯峨塩館女将の辻差百合さん。
嵯峨塩館女将の辻差百合さん。
今後は貸切露天風呂を作りたいですねと
語っていただきました。

(文・写真:末吉 秀典)

今月の宿屋データ
宿屋 嵯峨塩館
所在地・連絡先
宿泊予約サイト
アクセス
電車でJR中央本線甲斐大和駅からタクシーで約20分
お車で中央自動車道大月ICから国道20号経由で約45分