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宿研通信 2月号

気になる宿屋レポート 末吉が行く

宿泊予約経営研究所所長の末吉秀典が注目の宿泊施設をご紹介するこのコーナー。
今月は、「峡泉」さんの体験レポートをお届けします。

「峡泉」

船頭さんのガイドを聴きながら舟くだりを楽しめる名勝 天竜峡。
首都圏から高速バスで約4時間20分、中京圏からはJR飯田経由で約3時間の道のりです。
普段近場の観光が多い方だと「♪はぁ~るばる、来たぜ、天竜峡」と
口ずさんでしまうような場所かもしれませんね。

しかし、首都圏からの道中は富士山やなだらかに広がる
甲府盆地、八ヶ岳、諏訪湖が、岡谷ジャンクションから高速を南に向かうと、
雪化粧をした南アルプスと、山の稜線が美しい中央アルプス、
木曽駒ヶ岳の眺望を楽しむことができます。


シンプルな施設が、名勝を最大限に活かす

隠れ宿と称される峡泉は、国定公園内にあり、館内の設備は至ってシンプル。
木々に囲まれた総桧造りの宿屋に、季節の移り変わりで趣の変化する庭園と、
ラウンジロビー、男女別のお風呂、エステサロンがあります。

平成元年に湧出した温泉はラドンの含有量が県内で1番、全国でも7番目の珍しい泉質で、
湯船の中でツルツルになる感触は「美肌の湯」として女性に好評です。


 
ソファーに腰掛けて
眺める時間が心地よい庭園
ソファーに腰掛けて眺める時間が心地よい庭園
県内でラドン含有1番の湯は
美肌にも効果的(姫方)
県内でラドン含有1番の湯は美肌にも効果的(姫方)


 

館内の通路・各客室からは、奇勝絶景に新緑の川がゆるりと流れる天竜峡を
眼下に望むことができ、景勝を存分に活かした造りになっています。

客室はわずか8室。それぞれ異なる間取りで全室が天竜峡に面するようになっています。
縁側のイスに腰かけて、ゆるゆると流れる天竜川の渓谷を愉しむ時間は格別です。

暖房器具は床暖房を採用しているので、冬季の厳しい天候でも快適に過ごすことができます。



天竜峡を望むテラス付客室「菊の間」 天竜峡を望むテラス付客室「菊の間」
客室「藤の間」から望む天竜峡 客室「藤の間」から望む天竜峡


館内・客室にはちょっとした竹炭 館内・客室にはちょっとした竹炭



月変わりの京風懐石は、板長のこだわり

お料理は板長こだわりの京風懐石。食事の最初にいただく地元長野のアンズ酒は、
自分が信州の宿に訪れていることを改めて気づかせてくれます。

懐石の内容は毎月変わり、基本的に同じメニューということはないそうです。
一品一品、目と舌で旅人を魅了するための工夫が凝らされており、料理人のこだわりが見えます。

夕食の懐石も素晴らしいですが、お客さまから特に好評なのが朝食です。
玉子焼き、味噌汁、煮物、お造りどれをとっても旨い。
朝からこんなに食べてしまってよいのだろうかと思うほど箸がすすみます。
朝食だけでも一食の価値があると言っても過言ではありません。



毎月変わる彩り鮮やかな
京風懐石料理
毎月変わる彩り鮮やかな京風懐石料理
一品一品に箸が進み
気がつけば完食の朝食
一品一品に箸が進み気がつけば完食の朝食


静けさを聴く、という無上の贅沢

主人の斉藤和秀さんとはもう十数年のお付き合いになります。
彼は飯田・天竜の地元文化を大切にしており、それはサービスにも表れています。

お客さまに飯田の伝統工芸でもある水引で飾り物をプレゼントしたり、
ラウンジに地場産業である飯田の半生菓子の試食コーナーを設けたりと
地元への深い愛情が感じられます。

いつもお会いしてお話すると、地元観光の活性化が話題になります。
「南信州には素晴らしいところがたくさんあるのですが、
首都圏・関西圏からは距離的にハンデがあります。
もっとたくさんの方に来ていただき、飯田の地を堪能していただきたい。
リニア中央新幹線に期待しましょうかね。」と斉藤さん。

春には、飯田・伊那市内の一本桜の名所を
桜守と一緒に巡る宿泊プランを企画しているそうです。



静かな渓谷の隠れ宿 峡泉のご主人
齋藤和秀さん
静かな渓谷の隠れ宿 峡泉のご主人 齋藤和秀さん
飯田の半生菓子の数々、
お好きなだけ召し上がれ
飯田の半生菓子の数々、お好きなだけ召し上がれ


私はこれまで4~5回ほど宿泊させていただいておりますが、
いつも気づかされ、心地よく感じることがあります。

上質の湯。上質な料理。くつろぐには十分なシンプルな空間。
この宿の真骨頂は「静けさを聴く」こと。それは最高の時間の過ごし方です。

上質の時間を心ゆくまで愉しめる大人の宿で、
静けさに耳を澄ませ無上の贅沢を感じてみていただければと思います。



(文・写真:末吉 秀典)

今月の宿屋データ
宿屋 峡泉
所在地・連絡先
宿泊予約サイト
アクセス
電車でJR東海道新幹線豊橋駅を経由、JR飯田線天竜峡駅から徒歩で約5分
お車で中央自動車道飯田山本ICから三遠南信自動車道天竜峡IC経由で約5分