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宿研通信 5月号

気になる宿屋レポート 末吉が行く

宿泊予約経営研究所所長の末吉秀典が注目の宿泊施設をご紹介するこのコーナー。
今月は、「ぎおん 畑中」さんの体験レポートをお届けします。

「ぎおん 畑中」

風情ある歴史的な寺社仏閣、季節の彩りを映し出す庭園が美しい古都京都。
景観だけでなく、伝統工芸や京菓子、筋沿いの洒落たお店、
絶品料理なども京都ならではの楽しみです。
日本の歴史が集約されている古都には、旅人が集う気づきの舞台がたくさん用意されています。

京の宿屋に泊まることも、古都の楽しみだと私は思っています。
古都の散策を終え、湯につかって汗を落とし、客室でほんの少し自分だけの時間を過ごし、
旬の京料理に舌鼓を打つ。誰しも一度は憧れる情景ではないでしょうか。

今回はそんな贅沢な時間を過ごせる宿屋のひとつ、
祇園の名で親しまれている八坂神社の近くに居を構える、「ぎおん 畑中」をご紹介します。


古都京都の祇園で出会う幽玄な空間

八坂神社への参拝客や芸妓・舞妓さんが行き交う祇園界隈。
小さな瓦葺きの門をくぐり、打ち水された石畳の階段の奥へ足を進めると、
ぎおん 畑中の閑静な玄関にたどりつきます。
一歩足を踏み入れると、現代数寄屋造りの館内は京の町屋らしく奥に広がり、
東山文化の侘び寂びを感じさせます。

客室は本館に12室、離れに9室の全21室。
いずれも10帖または12.5帖と、比較的ゆったりとした空間です。
私がおすすめしたい客室の過ごし方は、障子を開けて全ての灯りを落とすこと。
そうすると、坪庭の緑が室内のテーブルに映え、それは美しくなるのです。
喧騒を無くした客室で、ぜひ試してみてください。


 
お客さまのご到着におもてなしの笑顔で お客さまのご到着におもてなしの笑顔で
坪庭を眺めて寛ぐ。現代数奇屋造りのロビー 坪庭を眺めて寛ぐ。現代数奇屋造りのロビー


お抹茶と京菓子のおもてなし お抹茶と京菓子のおもてなし
坪庭に映えるかわいらしい下駄 坪庭に映えるかわいらしい下駄


風呂は内風呂、男女別大浴場どちらも高野槙を使用しています。 お湯も八坂神社の清水と同じ水源からひいているため肌触りがとても優しく、 心に癒しと安らぎを与えてくれます。



贅沢な高野槙を使用した大浴場 まるで客室のような寛ぎ処


味、盛りつけ、器すべてに詰まった京料理へのこだわり

本格的な京料理も、多くのお客さまから好評を受けています。
お料理をいただく前に献立を見て気づかされるのは、
料理の一品一品にそれぞれ旬の素材が使われていることです。
食前酒やデザートも例外ではありません。
まだ味わう前から、京料理の伝統、季節感を大切にしていることが感じられます。

実際にいただくと盛り付けの量もちょうどよく、
見栄えも彩り美しく器と食材の調和がとれています。
このあたりが、お客さまから高い評価を得る理由なのでしょう。
どのお料理にも、料理長の京料理へのこだわりが見てとれます。



卯月の料理献立 卯月の料理献立
一品一品が華麗な畑中の京料理 一品一品が華麗な畑中の京料理


先付の雲丹を
のせた青竹豆腐
先付の雲丹をのせた青竹豆腐
炊合の塚原筍の
土佐煮
炊合の塚原筍の土佐煮
焼肴の桜鱒の木の
芽焼き
焼肴の桜鱒の木の芽焼き
強肴の稚鮎と蛍烏賊の
春野菜潮寄せ
強肴の稚鮎と蛍烏賊の春野菜潮寄せ


お座敷遊びを多くの人々に知ってもらいたいという想い

代表の畑中誠司さんにお話を伺うと、祇園の街並に対する絶対的な自信を語ってくれました。

「畑中の周辺に足を伸ばすと、古都の風情を満喫できる清水寺、
高台寺、知恩院、建仁寺、四条花見小路などが楽しめるんです。
由緒ある寺社仏閣、季節を彩る自然と、人が創り上げてきた街並み。
これだけ恵まれた場所にある宿屋はそう多くないと思います」

そんな畑中さんは、2年前から「舞妓の夕べ」を打ち出し、
舞妓さんの京舞と京料理を味わえる京都観光のイベントを積極的に仕掛けています。
敷居の高いお座敷遊びを、
もっと多くの人々に知ってもらいたいという思いから始めたのだそうです。
近い将来、畑中に宿泊された方には毎日、
舞妓さんの京舞を見ていただけるようにしたいのだ、と語ってくれました。

室町時代に京の人々が山里に庵を造り、
都にいながらにして閑寂の境地を味わう、という美学を体現したぎおん 畑中。
ここには、京の宿屋に泊まる奥深さが、
さらに深まるのを感じられる瞬間との出会いが待っていました。



新緑艶やかな畑中の楓もみじ 新緑艶やかな畑中の楓もみじ
畑中の門前を通り過ぎる人力車 畑中の門前を通り過ぎる人力車


(文・写真:末吉 秀典)

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宿屋 ぎおん 畑中
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