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宿研通信 9月号

気になる宿屋レポート 末吉が行く

宿泊予約経営研究所所長の末吉秀典が注目の宿泊施設をご紹介するこのコーナー。
今月は、「旅館 玉子湯」さんの体験レポートをお届けします。

「旅館 玉子湯」

東北新幹線福島駅から車で約25分。
吾妻山に向かう途中の果樹園を通り過ぎ、曲がりくねった磐梯スカイラインを進んでいくと、
木々の緑に赤茶けた屋根が目を引く、高湯温泉の旅館 玉子湯が現れてきます。
高湯温泉は、東北の名湯の一つ。蔵王・白布温泉とともに奥州三高湯と謳われており、
山間に流れる川水からは高湯温泉の特徴でもある硫黄の香りが漂ってきます。

100年以上、人々を
癒やして来た玉子湯

玉子湯の創業は明治元年(1868年)。
独特の白濁した温泉は、東北屈指の薬湯として、昔から諸病に悩む人々を癒やしてきました。
源泉自体は無色透明の温泉ですが、空気に触れることで
硫黄成分が凝結して湯の花となり、白濁したにごり湯となります。
季節の光の加減で、真っ白から少し青みがかった色への変化を愉しむこともできます。


明治元年から変わらない
湯小屋「玉子湯」
明治元年から変わらない湯小屋「玉子湯」
お部屋のキーも
真っ黒に変色するくらい凄い源泉
お部屋のキーも真っ黒に変色するくらい凄い源泉

館内は和室の客室が57部屋。
コーヒーラウンジ、お土産処、ラーメン処、バーとお食事処、宴会場で構成されており、
特にコーヒーラウンジから望む湯小屋を中心とした美しい庭園が心を和ませてくれます。

季節ごとに彩りを変える
手入れの行き届いた庭園を望む
季節ごとに彩りを変える手入れの行き届いた庭園を望む
ゆったりとした落ち着きのある
玉子湯の和室
ゆったりとした落ち着きのある玉子湯の和室

コーヒーラウンジから望む
湯小屋「玉子湯」と庭園
コーヒーラウンジから望む湯小屋「玉子湯」と庭園
季節ごとの吾妻の旬材を使用した
玉子湯のお料理
季節ごとの吾妻の旬材を使用した玉子湯のお料理
 
「源泉かけ流し宣言」に表れる、
温泉への自信

玉子湯の館内には「源泉かけ流し宣言」の看板が掲げられています。
これは地域全ての施設が源泉の湯を加水・加温せずに湯船に供給しているという宣言です。
溢れ出た湯を循環させずに排水し、供給していることが前提で、
平成22年6月に高湯温泉が東北地方で初めてこの宣言を行いました。
温泉に対して絶対的な自信を持っていることを感じさせます。

東北としては初の
「源泉かけ流しの宿」宣言
東北としては初の「源泉かけ流しの宿」宣言

玉子湯自慢の浴室は7種類と豊富。創業当時から変わらない湯小屋「玉子湯」や、
野性味溢れる野天風呂「天渓の湯」「天翔の湯」、女性専用露天風呂「瀬音」、
家族連れや2人連れでも癒やされる「のんびり足湯」。
そして内湯として男女別の大浴場「滝の湯」、「仙気の湯」などがあり、
滞在中は様々な温泉を楽しむことができます。

明治元年から変わらない鄙びた木造の湯小屋。
その白濁した湯に身を浸して目を閉じると、瀬音に混じり、
鳥や虫の鳴き声、草木のざわめきが真っ黒な自分だけの空間に広がります。
それはまるで小さなオーケストラを愉しむように、次の季節の移ろいを感じさせてくれるよう。
湯小屋に灯がともる夕暮れ時、ベンチで火照った体をうちわで仰ぎながら、
暮れゆく山間の景色を愉しむのも玉子湯ならではの過ごし方です。

 
野趣溢れる
野天風呂「天渓の湯」
野趣溢れる野天風呂「天渓の湯」
光の加減で
色合いを変化させる「天翔の湯」
光の加減で色合いを変化させる「天翔の湯」
 
上質な源泉を木枠がしっかりと包み込む
大浴場「滝の湯」
上質な源泉を木枠がしっかりと包み込む大浴場「滝の湯」
白濁した湯面に木々と空の映り込みも美しい
女性専用露天風呂
白濁した湯面に木々と空の映り込みも美しい女性専用露天風呂
 
今こそ、宿からの
力強いメッセージを!

支配人の佐藤正夫さんとお話をさせていただくと、
話題はやはり3月11日に発生した地震による、福島第一原発事故の風評被害について。

「書き入れ時のお盆の時期でさえWebを活用してなんとか満館にできたという状況です。
地元を中心とした、多くのリピーターのお客さまに支えていただいていますが、
子ども連れのお客さまが少なくなっていることが心配です。
温泉の質や建物、周辺の環境も、震災前と何も変わっていないので、
また以前のように、全国から温泉を愉しむたくさんのお客さまに
来ていただければと願っています」と、語ってくれました。

この夏、栃木県や群馬県の施設さまも風評の影響を大きく受けています。
事故の影響がどこまで続くのか予測しにくい状況ですが、
各宿泊予約サイトを通じて宿泊を楽しみにしてくださるお客さまも多くいらっしゃいます。
そのため、今こそ「私たちは元気にしています!」という力強いメッセージを
発信し続ける努力が、必要なのではないでしょうか。
そして、私たちもそのメッセージをお客さまに届ける
お手伝いをさせていただきたいと改めて感じました。

震災の影響から生まれた
風流なサービス

この夏の計画停電対策として、玉子湯ではオリジナルのうちわをつくり、
お泊まりいただいたお客さまに配っているそうです。
お客さまに暑い夏を乗り切っていただくためのサービスとのことで、
湯上がり時に大変重宝されているそうです。
火照った体を冷やすのにうちわは役に立ちますし、
なんと言っても玉子湯の庭園で日本の夏の情緒も同時に楽しむことができます。

皆さまも、露天風呂や湯処でうちわを提供してみてはいかがでしょうか?
うちわを仰ぎながら、お客さま同士が会話を楽しむ光景が見られるかもしれません。



(文・写真:末吉 秀典)

今月の宿屋データ
宿屋 旅館 玉子湯
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