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宿研通信 11月号

気になる宿屋レポート 末吉が行く

宿泊予約経営研究所所長の末吉秀典が注目の宿泊施設をご紹介するこのコーナー。
今月は、「ての字屋」さんの体験レポートをお届けします。

「草津温泉 ての字屋」

日本一の自然湧出量を誇る
温泉の町、草津

♪草津良いとこ一度はおいで あ~どっこいしょ
お湯の中にもこーりゃ花が咲くよ ちょいなちょいな

草津節の鼻歌交じりで長野新幹線あさま号から軽井沢に降り立てば、
澄んだ青空に黄金色の陽の光が秋の装いを感じさせてくれました。
車で軽井沢の街を抜け、左手に浅間山を眺めながら進んでいくと、
日本三名泉に数えられる草津の温泉街に入っていきます。

草津温泉は毎分32,300リットル以上の温泉が湧き出ており、自然湧出量日本一を誇ります。
街中では共同浴場、足湯などを楽しむことができ、
木の桶が並びもうもうと湯けむりを上げている湯畑は草津温泉のシンボルとなっています。
今回ご紹介するのは、その湯畑の傍に佇み、
美しい温泉文化と上質な気品を愉しめる湯宿「ての字屋」です。

宿屋としての創業は江戸時代末期ですが、ての字屋の由来は1192年まで遡ります。
源頼朝公が鷹狩りの際に温泉を見つけ、
案内役の者に温泉の発展を任せたという有名な逸話が。
屋号である「ての字屋」は当時の領主であった湯本家の繁栄を
人々が「天の字(てんのじ)」と称したことに由来しています。

毎分4,000リットル湧出する
草津のシンボル湯畑
毎分4,000リットル湧出する草津のシンボル湯畑

草津一の名湯が楽しめる
老舗旅館の贅沢

宿の前にたどりつくと、温泉料亭の風格を醸し出す宿構えと、
幽玄な行灯の灯りが旅人の旅情を掻き立ててくれるようです。

江戸末期創業 羽織に受け継ぐ
老舗旅館ての字屋
江戸末期創業 羽織に受け継ぐ老舗旅館ての字屋
幽玄な行灯の灯りと
一客一亭のおもてなし
幽玄な行灯の灯りと一客一亭のおもてなし

客室はわずか12室ですが間取りが広く、数寄屋造りの落ち着いた空間が広がります。
その中でも路地に面した客室は、
静寂の中にも行き交う人々の息吹を感じる京都の町屋のような雰囲気です。

ゆったりとした
純和風の数寄屋造りの客室
ゆったりとした純和風の数寄屋造りの客室
幽玄な灯りに誘われ
静寂な刻を愉しむ坪庭
幽玄な灯りに誘われ静寂な刻を愉しむ坪庭

翌朝のお着替え用の浴衣セット
枕元に添えて
翌朝のお着替え用の浴衣セット枕元に添えて
主人オリジナルセレクトの
ジャズCD
主人オリジナルセレクトのジャズCD

ての字屋は1200余年の歴史を誇る草津温泉唯一の天然岩風呂が有名で、
温泉宿番付などでは常に上位にランクインしています。
岩盤から直接湧き出る源泉は、乳白色でとろりとした肌触り。
樹齢500年を超える古代ひのきの湯槽に身を沈め、
目の前で湧き出す草津一の源泉を堪能できるのは、ての字屋だけの贅沢です。

名湯草津温泉唯一の天然岩風呂
温泉宿番付でも常に上位に
名湯草津温泉唯一の天然岩風呂温泉宿番付でも常に上位に
岩盤から湧き出る源泉は
とろりとした乳白色
岩盤から湧き出る源泉はとろりとした乳白色

秋の暮れゆく夕刻、一品ずつ仲居さんが丁寧に運んできてくれる自慢の京風懐石料理に舌鼓。
懐石には旬の素材はもとより、早生や名残を感じさせる素材も使われていました。
懐石料理の愉しみは一品一品の意味を考え、感じながらいただくこと。
今回も大変美味しくいただきました。ご馳走様でした。

料亭の品格
ての字屋自慢の京風懐石料理
料亭の品格ての字屋自慢の京風懐石料理
築地直送の
新鮮なお造りと見事な器
築地直送の新鮮なお造りと見事な器

秋の季節を
先取りする土瓶蒸し
秋の季節を先取りする土瓶蒸し

一組のお客さまに対し、一つのおもてなし
ての字屋「一客一亭」の心

今回は、女将の立川ふさ子さんに、ての字屋の魅力について伺いました。

「温泉もお料理も魅力の一つですが、一番の魅力はおもてなしの心です。
お客さまとの間合いを大切に。近づきすぎず、離れすぎず、を常に心がけています」

ての字屋では、電話で予約を受ける際にお客さまの旅行スタイルを想像し、
ご到着時のおもてなしの準備を仲居さん伝えているのだとか。
玄関に飾られた「一客一亭」の額に、女将の心が表れているようです。

「お客さま一人ひとりにちょっとした気遣いを心がけています」と語ってくれたのは、
フロントコンシェルジュの沼田久美さん。

「例えば、これから冬の季節に散歩に出かけられるお客さまを見かけた時には、
防寒用のマフラーを手渡し、お帰りになったときには換えのタオルと浴衣を差し上げております。
常に妥協せず、これでいいやとは思わない。
そうすることでお客さまからのありがとうという一言がモチベーションに繋がります」

まさに一組のお客さまに対し、一つのおもてなし。
その小粋な気遣いが、気品ある館に色を添えています。


右側が女将の立川ふさ子さん
左側が沼田久美さん
右側が女将の立川ふさ子さん左側が沼田久美さん

現代的な高級旅館がもてはやされる今日この頃ですが、ての字屋は温泉街の老舗として佇み、
高級料亭の品格と上質な湯処でお客さまをもてなしてくれます。
日本文化の美しさを改めて感じさせてくれる湯宿でした。


(文・写真:末吉 秀典)

今月の宿屋データ
宿屋 草津温泉 ての字屋
所在地・連絡先
宿泊予約サイト
 →一休.COM
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