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宿泊予約経営研究所所長の末吉秀典が注目の宿泊施設をご紹介するこのコーナー。
今月は、奥湯布院高原リゾート「奥宿 無相荘」さんの体験レポートをお届けします。
全国的に有名な由布院温泉をはじめ、川沿いの湯平温泉や、
珍しい強酸性の泉質で知られる塚原温泉など特性の違う温泉地を有している大分県由布市。
四季を通して多くの観光客で賑わいを見せる一大温泉郷です。
塚原高原は標高約650mに丘陵が連なり、
由布院のシンボル・由布岳を真裏から望むことができます。
青い空と風になびく雲がよく似合うこの場所は、
「千と千尋の神隠し」の草原のシーンを思い出させます。
残念ながら私が訪れた日は小雪が舞う寒い日でしたが…。
今回は手付かずの自然が残る塚原高原に佇む、
奥湯布院高原リゾート「奥宿 無相荘」を紹介させていただきます。
奥湯布院高原リゾートは、奥湯布院温泉「霧と星あかりの棚湯」と
7つの貸切湯が楽しめる日帰り入浴施設、地鶏・豊後牛を炭火焼きで味わえるレストラン「炭熊」。
そして、5つの露天風呂付きの客室と、意匠の異なるスイートルームが5室。
合計10室を有した「奥宿 無相荘」の構成となっています。
その他にエステルームや専用のヘリポートもあり、自家用ヘリコプターでの送迎も可能です。
宿泊は、スイートの玉響(たまゆら)。93平方メートルの客室の中に、
メゾネット形式のベッドルームとリビングスペースが2ヶ所ずつ。
由布岳を眺望するバルコニーテラスと天然温泉の露天風呂付きです。
二人で過ごすには十分すぎる空間には、ジャズの音色が心地良く流れています。
アメニティにフェラガモをエントリーする辺りにも、女将のセンスが覗えますね。
スイート専用ラウンジでチェックインを済ませた後は、
お客さまからの要望以外は特にお構いはしないとのこと。
夕陽に染まる由布岳を眺めながら、
ゆったりとソファーで寛ぐも良し、天然温泉の露天風呂で愉しむも良し。
誰にも邪魔されない、二人だけの時間がゆっくりと過ぎていきます。
日が暮れゆく頃、専用のカートに乗って炭火焼きレストラン「炭熊」へ。
囲炉裏風のテーブルに炭を並べ、食前酒が添えられると炭火焼懐石がスタート。
前菜やお造りの他、豆乳饅頭や高原野菜の温サラダなど、
地元素材を活かした料理が一品一品運ばれてきます。
地元豊後の赤地鶏と豊後牛を炭火で炙り、オリジナルの塩とタレをつけていただけば、
柔らかで豊潤な味わいに思わず笑顔がこぼれます。
食事の後、外に出て空を見上げれば満天の星空。
今回は嬉しいことに「霧と星あかりの棚湯」を貸切にして入浴できることに。
宿泊のお客さまが少ないときには、貸切のご案内をしているとのことです。
そのおかげで、満天の星の下、贅沢な棚湯で温泉を堪能することができました。
オーナーの大山昌徳さんに奥湯布院高原リゾートの誕生の秘話をお聞きすると、
以前から塚原高原にツーリングに来ていたことが始まりだそうです。
ある時、小高い丘を登った先に広がっていた大自然の景色が気に入り、
すぐに現在の土地を購入したとのこと。
「その丘が今ヘリポートになっている所。
ここから見る景色が本当に感動的だったんですよ」と嬉しそうに話してくれました。
そして4年前、レストランの営業からスタートしました。
「最初は観光客に認知されず鳴かず飛ばず。
それでも、お客さまが誰もいない夜間でもレストランの灯りを決して消しませんでした。
すると、近くに高速道路が通っているので、車窓から暗闇の中でレストランの灯りが目立つことで、
少しずつお客さまが増えてきました」と語るのは女将の大山静子さん。
3年前に天然温泉の日帰り入浴施設である貸切風呂をはじめ、2年前に棚湯の露天風呂を拡張。
そして、昨年の1月に宿泊施設である「奥宿 無相荘」を開業しました。
「ここの自然が大好きだから、最初は食べる処を造った。
次に温泉があったから日帰り入浴施設を造った。
やっぱりこの自然をゆったりと愉しんでいただきたいから宿屋を始めた。そういうことなんです」
“過ぎたる接客、ご干渉は一切ございません。
奥湯布院の大自然の中でゆっくりと時間をお過ごし下さい”というのが無相荘のコンセプト。
オーナーがこの地で感じた心得の具現化が、この無相荘なのでしょう。
現在は和室タイプの客室を増設中とのことで、
辺り一帯が緑で覆われる春には、無相荘はまた大きく夢が広がっているかもしれませんね。
(文・写真:末吉 秀典)
奥宿 無相荘 |
〒879-5101 大分県由布市湯布院町塚原1240-32
0977-28-2310 →奥宿 無相荘 公式HP |
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車で大分自動車道湯布院ICから県道616号で25分
電車でJR久大本線由布院駅からタクシーで15分 |