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宿研通信 8月号

気になる宿屋レポート 末吉が行く

宿泊予約経営研究所所長の末吉秀典が注目の宿泊施設をご紹介するこのコーナー。
今月は、「星のや 竹富島」さんの体験レポートをお届けします。

「星のや 竹富島」

大雨と強風をもたらした台風4号が夜中に関東地方を通過。
その翌朝、空一面に雲が広がる羽田空港から朝一番の直行便にのり、
石垣空港まで約3時間のフライトです。
空港からタクシーでフェリーターミナルまで移動し、
高速艇に揺られること約10分で目的地・竹富島へ到着。
南国特有のフルーツの甘い香りとムッとした湿気が桟橋で迎えてくれます。

竹富島は、島全体が国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されており、
面積はおよそ5.4平方キロメートル。人口はわずか300人ほどの小さな島です。
島内には主に3つの集落があり、琉球の伝統文化・自然・景観の保全に努めています。

特に島の象徴的な集落は、一戸ごとにサンゴ岩を積み上げた石垣、通称「グック」に囲まれ、
色鮮やかなブーゲンビリアが咲きみだれます。
魔除けのシーサーが乗った赤瓦屋根の平屋「フーヤ」が建ち、
目隠しと魔除けを兼ねた「ヒンプン」と呼ばれる壁があるのが特徴的です。

石垣港と竹富島を
約10分で結ぶ高速艇
石垣港と竹富島を約10分で結ぶ高速艇
重要伝統的建造物群保存地区の
西集落の景観
重要伝統的建造物群保存地区の西集落の景観

サンゴ岩を手摘みして造る
グック(石垣)と白砂の路
サンゴ岩を手摘みして造るグック(石垣)と白砂の路
一体一体表情が違う
魔除け獅子シーサー
重要伝統的建造物群保存地区の西集落の景観

白い砂で敷き詰められた路はいにしえの琉球の原風景を彷彿させてくれます。
また、珊瑚礁によって外洋からの高い波から守られた海岸線は、
遠浅で色彩豊かな熱帯魚が泳ぐ透き通った海と、美しい砂浜を楽しめるビーチとして、
多くの観光客で賑わうスポットとなっています。

しかし、聞けば次の台風5号が石垣島へ接近しているため、
今回の2泊3日の滞在期間中はずっと激しい雷雨予報とのこと。
夏の日差しが降り注ぎ、
白い砂浜と沖縄独特のバニラブルーのビーチでゆったりと寛ぐことを期待していましたが…
天気ばかりはどうしようもないようです。

琉球の伝統を今に残す
もうひとつの日本

今回は6月1日開業した話題の「星のや 竹富島」の宿泊をレポート。
「星のや」としては、軽井沢・京都について3番目に開業する旗艦の宿屋です。

桟橋から宿まで、小型バスで5分ほどの道のり。
その間、スタッフが竹富島の風習や植生について方言を交えて楽しく解説をしてくれます。
車窓からは自然に育ったパパイヤや島バナナを見ることができ、
早くも南国気分で、宿屋への期待も高まります。

沖縄特有の門をくぐり、レセプションでチェックインを終えたら、宿泊棟へと向かいます。
6haを超える敷地に48棟の集落が形成され、
ダイニングやラウンジ、ショップなどが入った楕円形の集いの館、
24時間開放されているプールとプールサイドテラス、スパ棟、
そして集落を一望できる見晴台で構成されています。

エントランスの赤瓦の門前に建つ
魔除けのヒンプンの壁
エントランスの赤瓦の門前に建つ魔除けのヒンプンの壁
開放的なレセプションにて
まずはチェックインの手続き
開放的なレセプションにてまずはチェックインの手続き

ウェルカムドリンクと
サーターアンダギーをどうぞ
ウェルカムドリンクとサーターアンダギーをどうぞ
24時間開放されている
プールとプールサイドテラス
24時間開放されているプールとプールサイドテラス

外観は竹富島の伝統的な赤瓦家屋、伝統的な琉球の家屋にのっとって玄関はありません。
部屋の出入りは正面の縁側、またはサイドの窓越しより直接室内へ入ります。
内観は開放的なリビングルームと寝室のベッドルームという間取りになっています。

一棟一棟グックに囲まれ、
シーサーを供えた赤瓦屋根の客室
一棟一棟グックに囲まれ、シーサーを供えた赤瓦屋根の客室
真夏の日差しと入道雲が絵になる
赤瓦屋根の客室
真夏の日差しと入道雲が絵になる赤瓦屋根の客室

開放的な大きな窓に
ウッド調のフローリングが快適な客室
開放的な大きな窓にウッド調のフローリングが快適な客室
琉球畳みが心地よい眠りを誘う
ツインルームの寝室
琉球畳みが心地よい眠りを誘うツインルームの寝室

島風の中で味わう
独自のうちなータイム

今回宿泊した客室のガジョーニでまず目に付くのが、開放的なリビングとバスタブ。
特にリビングに設えられた幅広のソファは優れものです。
島唄を聴きながら寝そべり、そして好きな本を読みながら過ごす。
なんとも南国的な至福の時間を楽しむことができます。

そして、なんとも大胆に配置されているのがバスタブ。
前後の窓を全て開け放てば客室全体に島風が抜け渡り、
爽快なリゾート入浴が楽しめるという仕掛けなのです。
強烈な日差しが照りつける昼下がりの入浴、暑さが一段落して暮れゆくひとときの入浴など、
島風を感じながら癒されている自分の姿が想像できる素晴らしい空間です。

グックで周りを囲まれ、直接見られないとは言え、
窓を開け放つのはなかなか勇気のいる行動でもあります。
もちろん、窓のブラインドを調整したり、
障子を閉めて入浴することもできますのでご安心ください。

滞在者の島時間を演出する
幅広なソファ
滞在者の島時間を演出する幅広なソファ
大胆に配置されている
開放的でお洒落なバスタブ
大胆に配置されている開放的でお洒落なバスタブ

暮れゆく空に響く
「夕凪の唄」

「星のや 竹富島」のもう一つの注目すべき点はお料理です。
沖縄・八重山産地の鮮材のみで創作されたフレンチ仕立てのコース料理は、
一品一品が豊かな色彩とともに沖縄の素材を感じさせる、
見るもの味わうもの全てがうなずける料理となっていました。

ゆっくりと暮れゆく竹富島の
大人の時を刻むダイニング
ゆっくりと暮れゆく竹富島の大人の時を刻むダイニング
料理長中洲達郎氏の
創作沖縄フレンチが幕を開けます
料理長中洲達郎氏の創作沖縄フレンチが幕を開けます

聞けばシェフの中洲達郎料理長は、
フランスのボキューズ・ドール国際料理コンクールでアジア代表として活躍された
若手注目シェフだとか。大人が集うダイニングでは時間を掛けて、
暮れゆく竹富島とともに、お腹の満足度も満たされていきます。

竹富島産車海老とアオリイカのセヴィーチェ。
島人参のクリーム添え
竹富島産車海老とアオリイカのセヴィーチェ。島人参のクリーム添え
もろみ豚の
テッドフロマージュ琉球卵の2色のソース
もろみ豚のテッドフロマージュ琉球卵の2色のソース

海の香りに包まれた
塩焼きの石垣美崎牛のオーブン焼き
海の香りに包まれた塩焼きの石垣美崎牛のオーブン焼き
沖縄の炊き込み御飯、
山羊のボロボロジューシー
沖縄の炊き込み御飯、山羊のボロボロジューシー

コース料理が終わる頃、お隣のラウンジでは「夕凪の唄」と称した太鼓と島唄の宴が始まります。
日によって演目も奏者も違い、琉球民謡や方言などを披露してくれます。
島の人々が大切にしてきた琉球の文化を体感できた瞬間でもありました。

毎日夕刻に始まる夕凪の唄。
当日は太鼓と島唄の民謡を演奏
毎日夕刻に始まる夕凪の唄。当日は太鼓と島唄の民謡を演奏
夕闇がせまる中、
集いの館では島唄の調べが響きます
夕闇がせまる中、集いの館では島唄の調べが響きます

朝食は場所をダイニングとインルームダイニングから選択し、
料理も洋食と和食から選ぶことができます。
プライベートなインルームダイニングの客室で、のんびりと朝食をいただくもよし。
散歩がてらダイニングに出かけ、
オリジナルフレッシュ島ジュースをいただきながら朝食を食べるもよし。

洋食・和食ともに、産地の野菜をたっぷり味わえる内容となっていました。

プライベートな洋食の
インルームダイニングサービス
プライベートな洋食のインルームダイニングサービス
朝から元気が出る
沖縄の食材をたっぷりと使った和食
朝から元気が出る沖縄の食材をたっぷりと使った和食

ダイニングだけの特典。
とても美味しいフレッシュ島ジュース
ダイニングだけの特典。とても美味しいフレッシュ島ジュース

天気に恵まれず、ずっと曇り空もしくは土砂降りの雨の中での2泊3日でした。
それでも、竹富島の集落にはどこかほっとさせる癒しを感じることができ、
「星のや 竹富島」では、快適な客室でゆったりのんびりとした島時間を過ごすことができました。

ぜひ、次回は晴れた竹富島で島風を感じながら、リゾートタイムを楽しみたいと思います。

本やCD、ドリンクが用意されている
ゆんたくラウンジ
(ゆんたくとは、沖縄の方言でおしゃべりの意味)
本やCD、ドリンクが用意されているゆんたくラウンジ(ゆんたくとは、沖縄の方言でおしゃべりの意味)
星のやオリジナル商品などが
揃っているショップ
星のやオリジナル商品などが揃っているショップ



(文・写真:末吉 秀典)

今月の宿屋データ
宿屋 沖縄 竹富島 星のや 竹富島
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