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宿研通信 10月号

気になる宿屋レポート 末吉が行く

宿泊予約経営研究所所長の末吉秀典が注目の宿泊施設をご紹介するこのコーナー。
今月は、「有馬山叢 御所別墅」さんの体験レポートをお届けします。

兵庫県 有馬温泉 有馬山叢 御所別墅

愛媛の道後温泉や和歌山の白浜温泉と共に、日本三古湯に数えられる兵庫の有馬温泉。
関西圏からも比較的近く、古来より湯治場、奥座敷としての役割を果たしてきました。

有馬温泉といえば、金泉・銀泉の名で呼ばれる温泉が有名ですが、豊臣秀吉がその湯を好み、
たびたび茶会を繰り広げてこの地の発展に大きく寄与したことも知られています。
近隣エリアには、避暑地としての六甲山エリアやハイカラな西洋文化を醸しだす神戸などもあり、
多くの観光客で賑わう温泉地でもあります。

今回は有馬温泉で宿泊施設やレストラン等を展開する
御所坊グループの一つ「有馬山叢 御所別墅」の宿泊レポートをしていきたいと思います。
現在、宿泊施設としては「陶泉 御所坊」を基点に、
「有馬山叢 御所別墅」「ホテル花小宿」「旅湯 アブリーゴ」「オーベルジュ花郷里(香美町)」の
5施設を経営しています。

2008年に開業した「有馬山叢 御所別墅」は、
かつて有馬で最も古い外国人ホテルがあった1,400坪の敷地に建てられました。
小鳥のさえずりが響く木々が豊かな敷地内には、
フロント、開放的なラウンジや、
有馬の山越を眺めるカウンター形式のレストランが入った本棟と、テーブル席の個室レストラン棟。
そして、温泉入浴施設やアロマルームを備えた「有馬山叢陶泉」などがあります。

山里の田舎を感じさせる
民芸調の土間が広がるフロント
山里の田舎を感じさせる民芸調の土間が広がるフロント
フロントとは対照的な
洒落た雰囲気を醸しだすラウンジ
フロントとは対照的な洒落た雰囲気を醸しだすラウンジ

宿屋がセレクトした
洋書・雑誌やDVDが並ぶコーナー
宿屋がセレクトした洋書・雑誌やDVDが並ぶコーナー
有馬の木々の彩りと料理を愉しむ
カウンターレストラン
有馬の木々の彩りと料理を愉しむ
カウンターレストラン

有馬の涼風と
小鳥のさえずりを聞きながら寛ぐテラス
有馬の涼風と小鳥のさえずりを聞きながら寛ぐテラス
平屋の建物と木々の緑が調和している
有馬山叢御所別墅
平屋の建物と木々の緑が調和している有馬山叢御所別墅

統一されたデザイントーンが作り出す
落ち着きある大人の空間

客室は、ヴィラ形式とメゾネット形式の離れが各5部屋の10室。
どのお部屋も100平方メートルの間取りを有するスイートルームとなっています。
今回案内されたのは、ヴィラ形式の客室。
大型液晶TVやオーディオ設備が設えられたリビングスペースに、
プリンターまでセットされPCが備えられたデスクセット。
上質なベッドメイキングが施された寝室。
そして、人間の体温と同等の温度でじっくりと体を温め免疫力を高める、サーマルルームなど、
その充実ぶりに驚かされます。

100平米のゆったりな空間が広がる
ヴィラタイプの客室
100平米のゆったりな空間が広がるヴィラタイプの客室
横たわるとふわぁーと沈みこむ
上質なベッドが備えられた寝室
横たわるとふわぁーと沈みこむ上質なベッドが備えられた寝室

PCやプリンター、
高速ネット環境も整備されたデスク
PCやプリンター、高速ネット環境も整備されたデスク
人の体温に近い温度で
じっくりと温まるサーマルルーム
人の体温に近い温度でじっくりと温まるサーマルルーム

中に入ると天井が高く、広々としたウッド調の心地良い空間が広がります。
しかし、和でもなく洋でもないこの独特の質感がなんとも不思議な感覚。
聞けば館内の書画、椅子・テーブル、カーテン、絨毯に至るまで
綿貫宏介氏のプロデュースによるとのこと。
独特の書体デザインでロゴ、パッケージなど数多くのヒット商品を生み出している方です。
その世界観のお陰か、誰をも魅了する素敵な大人の空間に仕上がっていました。

滞在中、思い思いの場所に移動して
別荘間隔で寛ぐ客室
滞在中、思い思いの場所に移動して別荘間隔で寛ぐ客室
客室内の機器は
お洒落なデザイン「amadana」製
客室内の機器はお洒落なデザイン「amadana」製

塩分で体が芯から温まる
有馬温泉特有の「金泉」

有馬山叢陶泉の湯は有馬の金泉。金泉色の暖簾をくぐると、右手側に男女別の入口があります。
脱衣所を抜け、扉を開けた先に見えてくるのが、御影石で縁取りされた湯船と赤茶色の温泉。

明治以前のサイズを復元したと言われる湯船に静かに浸かっていると、
体の中が、芯からポカポカとしてきます。
冷えたミネラルウォーターが置いてあり、これは火照った体に嬉しいサービス。
テラス席で風を感じながら、ひとときを過ごすのもいいかもしれません。

暖簾のような赤褐色が特長の
金泉の湯「有馬山叢陶泉」
暖簾のような赤褐色が特長の金泉の湯「有馬山叢陶泉」
簡素な空間の中にも
畳敷きの心地よさを感じさせる脱衣所
簡素な空間の中にも畳敷きの心地よさを感じさせる脱衣所

明治以前の有馬の湯殿サイズを復元した
金泉の大浴場
明治以前の有馬の湯殿サイズを復元した
金泉の大浴場
温まった湯上がりに嬉しい
無料のミネラルウォーター
温まった湯上がりに嬉しい無料のミネラルウォーター

心もお腹も満たしてくれる
地域の味を詰め込んだ山家南蛮料理

今回いただくお料理は、山家南蛮料理と称した5品のフレンチコース。
個室のテーブル席もありますが、少人数の時はカウンター席にご案内するそうです。

まず運ばれてきたのが、剣先イカと淡路島の由良ウニを用いた冷製パスタ。
今が旬の淡路島の濃厚なウニの旨みと、イカの甘みを細身のパスタに絡ませて味わいます。
2品目は初夏の魚介と夏野菜のコンソメジュレでさっぱりと。
近隣の契約農家から取り寄せた野菜を、
甘みの豊かなスイートコーンムースと共に混ぜ合わせていただきます。

旬の剣先イカと
淡路島由良産のウニを使用した冷製パスタ
旬の剣先イカと淡路島由良産のウニを使用した冷製パスタ
夏野菜と魚介のコンソメジュレ。
手作りパンとオリーブを添えて
夏野菜と魚介のコンソメジュレ。手作りパンとオリーブを添えて

3品目はフォアグラを鱧で巻き、カダイフという小麦粉でできた棒状な物で包み揚げ、
トリフソースとトリフを添えた贅沢な一品です。
4品目のメインは、但馬牛のフィレステーキと、由良産のコチのポワレの2つから選択します。
迷いながらも、今回は肉料理を選択。
さすがの但馬牛、口当たりの柔らかなフィレ肉とコクと甘みのある赤ワインのソースは、
最上の相性を見せる一品でした。

鱧とフォアグラのサクッ、
ジュワーの食感に添える香り豊かなソース
鱧とフォアグラのサクッ、ジュワーの食感に添える香り豊かなソース
口あたりが柔らかな但馬牛のフィレは
塩とマスタードでも絶品
口あたりが柔らかな但馬牛のフィレは
塩とマスタードでも絶品

最後に清涼感溢れるスイカジュースのスープと、
ココナッツブランマンジュのデザートと焼き菓子、カプチーノをいただいて終了です。
お料理の内容は素材の状況に合わせて拵えるため、事前にメニューは決めていないとのこと。

朝食は洋食コース。メインプレートは洋風の温泉玉子に数種のハーブを練り込んだソーセージ、
虹鱒のスモークサーモンと生ハムに地野菜。
フレンチトーストなどの手作りパンに、
スープとフルーツと100%手搾りオレンジジュースという構成。
一見料理が簡素とも思えますが、パンの種類も多く楽しめるため、朝から満腹になります。
夕食も朝食もスタッフの方からお料理の説明を受け、
シェフの創造性と思いを十分に味わうことができました。

スイカジュースをベースにした
ブランマンジェとマンゴのソルベ添え
スイカジュースをベースにしたブランマンジェとマンゴのソルベ添え
メインプレートと手作りパンが
程良くお腹を満たしてくれる洋食
メインプレートと手作りパンが程良くお腹を満たしてくれる洋食

国際貿易港としての神戸。
そして、かつて外国人居留地としてハイカラ文化が栄え、多くの外国人が宿泊した有馬温泉。
日本の温泉文化と西洋文化という2つの歴史的な背景を、切り離すことはできません。
国際的な温泉リゾートエリアにふさわしい施設をめざしているという御所坊グループ。
日本の良き伝統・情緒を守りながら、西洋文化の上質な仕掛けと歴史的な背景とが相まって、
旅人の心を和ませる日本の宿屋となっています。

宿を訪れる前に有馬温泉の歴史に触れてみると、
五感が違った形で感じることができることでしょう。

(文・写真:末吉 秀典)

今月の宿屋データ
宿屋 兵庫県 有馬温泉 有馬山叢 御所別墅
所在地・連絡先
宿泊予約サイト
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