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宿泊予約経営研究所所長の末吉秀典が注目の宿泊施設をご紹介するこのコーナー。
今月は、
「栃木県 日光 日光金谷ホテル」さんの体験レポートをお届けします。
明治6年創業、今年で140年の歴史を持つ
日本最古の西洋式リゾートホテル「日光金谷ホテル」。
創業するきっかけは2年前の明治4年、
当時日光東照宮の楽師をしていた金谷善一郎氏が、
明治維新の開国により日光を訪れ滞在先を探していた
アメリカ人宣教師ヘボン博士(ローマ字のヘボン式でお馴染み)を
自宅に招き入れたことが始まりだそうです。
そのヘボン博士のすすめもあり、自宅の一部を外国人向け宿泊施設として改装して
「金谷カッテージ・イン」として開業。
明治11年にはヘボン博士の紹介で訪れていた
イギリス人紀行作家イザベラ・バードの著書「日本奥地紀行」によって
諸外国に広く紹介され、数多くの外国人が訪れ、
日本を代表するリゾートホテルとして発展していきます。
その後、神戸・箱根・軽井沢などでも滞在の避暑地先として、
外国人向けのリゾートホテルが次々に開業していきます。
重厚な回転扉が設えられた白亜色の本館は、
元は明治26年に2階建てとして建築されたそうですが、
昭和10年に昭和天皇もお泊まりになった別館を新築した際に
地下部を掘り下げ、翌年には現在の3階建ての本館になったそうです。
今のメインダイニングの場所が昔はエントランスロビーやフロントがあったとのこと。
1階よりも2・3階の方が歴史がある不思議な建物です。
今では国の登録有形文化財として登録されています。
さて、扉を開きにこやかに微笑むドアマンに出迎えられ、
赤い絨毯が敷き詰められた建物の中に誘われると、
そこは明治の古き良き社交界の面影が薫る空間が広がっています。
少し早めのチェックインを済ませロビーへ。
カエデが色づき始めた初秋の気配を映し出す庭園と、
どことなくしっとりとした山の空気を体に纏いながら
重厚な革張りのソファーで寛いでいると
静寂な中に聞こえてくるのは壁掛け時計の時を刻むリズムだけ。
上質な大人たちが愉しめるクラシックの感覚でしょうか。
今回宿泊するお部屋は別館にあるデラックスツインの洋室。
天井も高く広い窓が特徴的なゆったりとした客室。
ベージュを基調とした落ち着きのある空間が広がっています。
特にホテルの庭園と日光の山々を望める窓際には、
スチーム暖房が設えられクラシカルなホテルを演出。
アメニティには、世界中のセレブも魅了している自然素材を使用した
「サンナホル」が用意されていました。
別館の客室には、昭和天皇やヘレン・ケラーがご宿泊された客室もあるそうです。
どちらの客室も淡い水色を基調とした清潔感が溢れる客室でした。
その他、本館、新館、第二新館それぞれ合わせて71のそれぞれ個性的な客室があり、
中には小山薫堂氏がプロデュースしたコンセプトルームも人気を博しています。
夕暮れの頃、本館2階のメインダイニングで
日光金谷ホテルの伝統のコースディナーを時間をかけて一品一品いただきます。
コースは全部で6品。スープとメインである肉料理は2種類の料理を選択します。
まずは本日のオードブルとして、スモークサーモンと湯葉を添えた一品。
続いてスープはブロッコリーのなめらかなスープを選択。
ブロッコリーのほのかな香りと淡い色合いに
クリームスープのなめらかな舌触りが食欲をかき立ててくれます。
魚料理はイサキのポワレとオリーブとアンチョビのソース。
皮がパリッと身はほっくりと焼き上がったイサキに、
芳しいオリーブオイルのアクセントが効いたソースを添えていただきます。
メインの肉料理は季節の野菜を添えた
日光霧降高原牛フェレステーキ赤ワインとフォアグラソースを選択。
ミディアムレアで焼かれたフィレステーキは厚みもあり、
肉質もしっかりとしているので赤ワインとフォアグラの酸味と
コクのあるソースとの相性は抜群で納得。
最後にプリンに旬のシャーベットとフルーツを添えたデザートに
コーヒーをいただいて終了です。
満足できる料理のラインアップに思わず二人の時間が楽しくなるディナーでした。
夕食の後、十五夜の月を暫し鑑賞し、
クラシカルな時の流れを醸しだしているこぢんまりとしたバーで
ジャズのリズムに揺られながら好きな洋酒と共に更けゆく夜の至福を過ごします。
翌朝も陽光が射し込むメインダイニングで朝食をいただきます。
朝食は洋食と和食の選択。
人気は卵料理のオムレツと焼きたてのパンを楽しめる洋食ですが、
和食も小鉢に取り分けられた6種の料理が味わえとても魅力的です。
できれば、連泊して両方を体験することをオススメいたします。
朝食後、チェックアウトまで時間があるので館内を散策。
カメラのファインダーを通して見る館内は、
至るところ歴史と文化を感じさせるスポットが点在しています。
客室に備えてあるガイド案内には、
「時間旅行へのご案内」として無料の冊子が用意されており、
金谷ホテルの歴史や館内のおすすめスポット30ヶ所などが紹介されています。
また、スタッフオススメの場所が、ホテル館内の遊歩道。
ホテル脇に流れる大谷川に架かる朱色の神橋を
河畔から望むことが出来る唯一のスポットです。
裏山の散策道もオススメ。
歩いて片道15分程度の道のりですが、
頂上には明治期に建立された大黒様をお祀りしている小さなお社があります。
木々に囲まれた森林浴を十分に楽しむことができました。
金谷善一郎氏が行動を起こした西洋文化への「好奇心」と、
困っている人への善意の「おもてなしの心」。
この2つの精神は今なおスタッフ全員に伝えられていると支配人は語ります。
スタッフの感性を活かすため、接客のマニュアルもほとんどなく、
お客さまに対し当たり前のことを当たり前にやることの重要性を大事にしているそうです。
宿泊されたお客さまからのコメントの中に
スタッフの対応の良さを讃える内容が多いのも頷けます。
今後は150周年にむけて、大浴場などハードの付加価値と伝統を活かし
実習を通じて人を育てる学校のような取組にもチャレンジしてみたいとのこと。
2020年東京オリンピックに向けて、再び「おもてなしの心」が注目されています。
おもてなしを感じる日本最古のリゾートホテルへ
皆様も一度お出かけになってみてはいかがでしょうか?
(文・写真:末吉 秀典)
栃木県 日光 日光金谷ホテル |
〒321-1401 栃木県日光市上鉢石町1300
0288-54-0001 →日光金谷ホテル公式HP |
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