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宿研通信 11月号

気になる宿屋レポート 末吉が行く

宿泊予約経営研究所所長の末吉秀典が注目の宿泊施設をご紹介するこのコーナー。
今月は、 「栃木県 日光 日光金谷ホテル」さんの体験レポートをお届けします。

栃木県 日光日光金谷ホテル

明治6年創業、今年で140年の歴史を持つ
日本最古の西洋式リゾートホテル「日光金谷ホテル」。

創業するきっかけは2年前の明治4年、
当時日光東照宮の楽師をしていた金谷善一郎氏が、
明治維新の開国により日光を訪れ滞在先を探していた
アメリカ人宣教師ヘボン博士(ローマ字のヘボン式でお馴染み)を
自宅に招き入れたことが始まりだそうです。
そのヘボン博士のすすめもあり、自宅の一部を外国人向け宿泊施設として改装して
「金谷カッテージ・イン」として開業。

明治11年にはヘボン博士の紹介で訪れていた
イギリス人紀行作家イザベラ・バードの著書「日本奥地紀行」によって
諸外国に広く紹介され、数多くの外国人が訪れ、
日本を代表するリゾートホテルとして発展していきます。

その後、神戸・箱根・軽井沢などでも滞在の避暑地先として、
外国人向けのリゾートホテルが次々に開業していきます。

白亜色の本館と
スカイブルーのコントラストが美しい。
白亜色の本館とスカイブルーのコントラストが美しい
  館内の消火栓。 館内の消火栓。

おもてなしの“原点”がある
日本最古のリゾートホテル

重厚な回転扉が設えられた白亜色の本館は、
元は明治26年に2階建てとして建築されたそうですが、
昭和10年に昭和天皇もお泊まりになった別館を新築した際に
地下部を掘り下げ、翌年には現在の3階建ての本館になったそうです。

今のメインダイニングの場所が昔はエントランスロビーやフロントがあったとのこと。
1階よりも2・3階の方が歴史がある不思議な建物です。
今では国の登録有形文化財として登録されています。

曲線と照明が絵になる
階段の一コマ。
曲線と照明が絵になる階段の一コマ。
館内に設えられた
湿度計の風合い。
館内に設えられた湿度計の風合い。

さて、扉を開きにこやかに微笑むドアマンに出迎えられ、
赤い絨毯が敷き詰められた建物の中に誘われると、
そこは明治の古き良き社交界の面影が薫る空間が広がっています。

少し早めのチェックインを済ませロビーへ。
カエデが色づき始めた初秋の気配を映し出す庭園と、
どことなくしっとりとした山の空気を体に纏いながら
重厚な革張りのソファーで寛いでいると
静寂な中に聞こえてくるのは壁掛け時計の時を刻むリズムだけ。

上質な大人たちが愉しめるクラシックの感覚でしょうか。

赤い絨毯・照明・調度品が
歴史を感じさせる重厚なフロント。
赤い絨毯・照明・調度品が歴史を感じさせる重厚なフロント。
特徴的な回転扉が
上質な大人の時間を約束してくれます。
特徴的な回転扉が上質な大人の時間を約束してくれます。

創業当初から使用し続けている
銀製のフロント呼び出しベル。
創業当初から使用し続けている銀製のフロント呼び出しベル。
静かに時を刻む
壁掛け時計のリズムだけが響くロビー。
静かに時を刻む壁掛け時計のリズムだけが響くロビー。

今回宿泊するお部屋は別館にあるデラックスツインの洋室。
天井も高く広い窓が特徴的なゆったりとした客室。
ベージュを基調とした落ち着きのある空間が広がっています。

特にホテルの庭園と日光の山々を望める窓際には、
スチーム暖房が設えられクラシカルなホテルを演出。
アメニティには、世界中のセレブも魅了している自然素材を使用した
「サンナホル」が用意されていました。

別館の客室には、昭和天皇やヘレン・ケラーがご宿泊された客室もあるそうです。
どちらの客室も淡い水色を基調とした清潔感が溢れる客室でした。

その他、本館、新館、第二新館それぞれ合わせて71のそれぞれ個性的な客室があり、
中には小山薫堂氏がプロデュースしたコンセプトルームも人気を博しています。

ベージュの基調が心に優しい
別館デラックスツインの洋室。
ベージュの基調が心に優しい別館デラックスツインの洋室。
大きな窓からは庭園と
日光の山並みが一望できます。
大きな窓からは庭園と日光の山並みが一望できます。

水色のベースが心安らげる
昭和天皇も宿泊された洋室。
水色のベースが心安らげる昭和天皇も宿泊された洋室。
木々の緑が心地よい
ヘレン・ケラーも宿泊された洋室。
木々の緑が心地よいヘレン・ケラーも宿泊された洋室。

贅を尽くした
食の空間

夕暮れの頃、本館2階のメインダイニングで
日光金谷ホテルの伝統のコースディナーを時間をかけて一品一品いただきます。
コースは全部で6品。スープとメインである肉料理は2種類の料理を選択します。

まずは本日のオードブルとして、スモークサーモンと湯葉を添えた一品。
続いてスープはブロッコリーのなめらかなスープを選択。
ブロッコリーのほのかな香りと淡い色合いに
クリームスープのなめらかな舌触りが食欲をかき立ててくれます。

魚料理はイサキのポワレとオリーブとアンチョビのソース。
皮がパリッと身はほっくりと焼き上がったイサキに、
芳しいオリーブオイルのアクセントが効いたソースを添えていただきます。

メインの肉料理は季節の野菜を添えた
日光霧降高原牛フェレステーキ赤ワインとフォアグラソースを選択。
ミディアムレアで焼かれたフィレステーキは厚みもあり、
肉質もしっかりとしているので赤ワインとフォアグラの酸味と
コクのあるソースとの相性は抜群で納得。

最後にプリンに旬のシャーベットとフルーツを添えたデザートに
コーヒーをいただいて終了です。
満足できる料理のラインアップに思わず二人の時間が楽しくなるディナーでした。

夕食の後、十五夜の月を暫し鑑賞し、
クラシカルな時の流れを醸しだしているこぢんまりとしたバーで
ジャズのリズムに揺られながら好きな洋酒と共に更けゆく夜の至福を過ごします。

レモンカラーのテーブルクロスが
上質さを演出するメインダイニング。
レモンカラーのテーブルクロスが上質さを演出するメインダイニング。
スモークサーモンに
日光湯葉を添えたオードブル。
スモークサーモンに日光湯葉を添えたオードブル。

淡いブロッコリーの香りと
スープの舌触りと味わいをどうぞ。
淡いブロッコリーの香りとスープの舌触りと味わいをどうぞ。
香ばしいオリーブとアンチョビの
アクセントが効いたイサキのポワレ。
香ばしいオリーブとアンチョビのアクセントが効いたイサキのポワレ。

日光霧降高原で育った
牛フィレを赤ワインとフォアグラのソースで。
日光霧降高原で育った牛フィレを赤ワインとフォアグラのソースで。
フルーツと手製のプリンに
カラメルソースを添えたデザート。
フルーツと手製のプリンにカラメルソースを添えたデザート。

十五夜の月に照らされる
白亜の本館。
十五夜の月に照らされる白亜の本館。
シングルモルトを多数取り揃えている
大人の隠れ家バーデイサイト。
シングルモルトを多数取り揃えている大人の隠れ家バーデイサイト。

翌朝も陽光が射し込むメインダイニングで朝食をいただきます。
朝食は洋食と和食の選択。
人気は卵料理のオムレツと焼きたてのパンを楽しめる洋食ですが、
和食も小鉢に取り分けられた6種の料理が味わえとても魅力的です。
できれば、連泊して両方を体験することをオススメいたします。

爽やかな陽光に照らされ
人気の洋食料理オムレツをどうぞ。
爽やかな陽光に照らされ人気の洋食料理オムレツをどうぞ。
6品の小鉢料理が箸を迷わせる
日光金谷ホテルの和食の魅力。
6品の小鉢料理が箸を迷わせる日光金谷ホテルの和食の魅力。

朝食後、チェックアウトまで時間があるので館内を散策。
カメラのファインダーを通して見る館内は、
至るところ歴史と文化を感じさせるスポットが点在しています。
客室に備えてあるガイド案内には、
「時間旅行へのご案内」として無料の冊子が用意されており、
金谷ホテルの歴史や館内のおすすめスポット30ヶ所などが紹介されています。

また、スタッフオススメの場所が、ホテル館内の遊歩道。
ホテル脇に流れる大谷川に架かる朱色の神橋を
河畔から望むことが出来る唯一のスポットです。

裏山の散策道もオススメ。
歩いて片道15分程度の道のりですが、
頂上には明治期に建立された大黒様をお祀りしている小さなお社があります。
木々に囲まれた森林浴を十分に楽しむことができました。

客室に備え付けの
館内の案内の冊子。
客室に備え付けの館内の案内の冊子。
風合いがなんとも
クラシカルな客室のキー。
風合いがなんともクラシカルな客室のキー。

森林浴を楽しみながら
大谷川の川畔に向かう散策道。
森林浴を楽しみながら大谷川の川畔に向かう散策道。
大谷川と神橋を川畔から独り占めできるのは
ホテルの利用者だけ。
大谷川と神橋を川畔から独り占めできるのはホテルの利用者だけ。

裏山の散策道の山頂には
大黒様が祀られています。
裏山の散策道の山頂には大黒様が祀られています。
写真資料で知る
日光金谷ホテルの歴史と文化。
写真資料で知る日光金谷ホテルの歴史と文化。

金谷善一郎氏が行動を起こした西洋文化への「好奇心」と、
困っている人への善意の「おもてなしの心」。
この2つの精神は今なおスタッフ全員に伝えられていると支配人は語ります。

スタッフの感性を活かすため、接客のマニュアルもほとんどなく、
お客さまに対し当たり前のことを当たり前にやることの重要性を大事にしているそうです。
宿泊されたお客さまからのコメントの中に
スタッフの対応の良さを讃える内容が多いのも頷けます。

今後は150周年にむけて、大浴場などハードの付加価値と伝統を活かし
実習を通じて人を育てる学校のような取組にもチャレンジしてみたいとのこと。

2020年東京オリンピックに向けて、再び「おもてなしの心」が注目されています。
おもてなしを感じる日本最古のリゾートホテルへ
皆様も一度お出かけになってみてはいかがでしょうか?

柔らかな温かみを届ける
客室内のスチーム暖房。
柔らかな温かみを届ける客室内のスチーム暖房。
美しいつやと
文様に魅了されます。
美しいつやと文様に魅了されます。

(文・写真:末吉 秀典)

今月の宿屋データ
宿屋栃木県 日光 日光金谷ホテル
所在地・連絡先
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  →楽天トラベル →じゃらんnet  →一休.com
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