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宿研通信 12月号

気になる宿屋レポート 末吉が行く

宿泊予約経営研究所所長の末吉秀典が注目の宿泊施設をご紹介するこのコーナー。
今月は、 「熊本県 阿蘇 はなれの宿 千の森」さんの体験レポートをお届けします。

熊本県 阿蘇 はなれの宿 千の森

レンタカーを利用して熊本インターチェンジから一路、
世界有数のカルデラを有し外輪山で形成された
火の国熊本を代表する雄大な活火山「阿蘇山」を目指します。

私たちが知る阿蘇山とは、
活発な火口から白い噴煙を青い空にたなびかせる中岳を始め、
高岳、根子岳、烏帽子岳、杵島岳の山々を阿蘇五岳と呼び、
阿蘇山はそれら阿蘇五岳の山並みを総称した呼び名だそうです。

四季彩豊かな阿蘇は天然の湧水や温泉にも恵まれた場所で、
周辺には至る所に上質な天然水の湧水場と湯量豊富で
多様な泉質を有する温泉場が数々存在しています。

また、最近の話題としてJR九州が企画した
クルーズトレイン「ななつ星」が停車する阿蘇駅も
連日たくさんの観光客で賑わっています。

ななつ星の乗客が朝食を楽しむために
阿蘇駅のプラットホームに造られた
平屋風のお洒落なレストラン「火星」がその注目スポットです。
ななつ星の乗客以外の観光客も、
160円の入場券を購入することで利用可能になります。

料理は地野菜を中心としたビュッフェ料理に、
地鶏や赤牛のグリル料理との組み合わせコースがオススメ。
野菜スープも大変美味でした。

本当の豊かさに
触れる旅

さて、今回ご紹介させていただく宿屋は、
阿蘇の天然湧水が流れ、
豊かな自然の森が広がる敷地にわずか離れが2棟だけ佇む
その名も「はなれの宿 千の森」。

場所は、JR豊肥本線市ノ川駅から徒歩5分の豊肥街道沿い。
国道57号線で比較的交通量も多い場所ですが、
案内の看板に沿って駐車場まで車を進めると、
そこは鳥のさえずりしか聞こえてこない豊かな森の中に誘われます。

程なくするとスタッフの方がお出迎え。
チェックインのため敷地内の「川の上のラウンジ」まで案内してくれます。
驚かされるのは、その名の通り湧水が流れる上に古民家風の小さな建物があり、
中に入ると床板が一部透明になっています。

上から覗くとそこには清らかな水の流れ、ゆらめきが安らぎを与え
旅先の疲れを癒してくれます。

8,000坪の森の中にひっそり佇む
「川の上のラウンジ」。
8,000坪の森の中にひっそり佇む「川の上のラウンジ」。
阿蘇の湧水が流れる
川の上で寛ぎの一時を。
阿蘇の湧水が流れる川の上で寛ぎの一時を。

ラウンジ内の透明な床板を通して覗く
天然水の流れ。
ラウンジ内の透明な床板を通して覗く天然水の流れ。
清浄な空気と
マイナスイオンが溢れるウッドテラス。
清浄な空気とマイナスイオンが溢れるウッドテラス。

本日宿泊する客室は、離れの「かわせみ」。
8,000坪の敷地に施設内には、
もう一つの離れ「ふくろう」の客室と食事処の「いちの川」だけという
日常から解放される贅沢な自然の空間を保証してくれます。

案内された離れの「かわせみ」は、
森の中に佇んでおりモダンな炭板を纏った平屋建て。
土間風の入口から離れの中に入ると
81平米もあるゆったりとした空間が旅人を迎えてくれます。

広いウッドテラスに通じる採光豊かな大きな窓に畳敷きの和室と
心地の良い空間のリビング、そしてツインベットが備わる寝室。
窓を開け放てば半露天を楽しめる阿蘇の湧水の湯が贅沢な浴室、
阿蘇の地力を温感できる岩盤浴が備わっています。

一枚板のテーブルと琉球畳みが織りなす
モダンな和の空間。
一枚板のテーブルと琉球畳みが織りなすモダンな和の空間。
シンプルながら洗練された
上質な色調が寛げるツインベッドルーム。
シンプルながら洗練された上質な色調が寛げるツインベッドルーム。

窓を開け放てば、天然の湧水の湯が
身も心もリラックスに誘います。
窓を開け放てば、天然の湧水の湯が身も心もリラックスに誘います。
ラグジュアリーな
ミキモトパールのアメニティセット。
ラグジュアリーなミキモトパールのアメニティセット。

客室内の床は全て床暖房となっており、
夏場を除くシーズンでは快適に過ごせるシステムです。
この離れの魅力は十分な広さがあるウッドデッキと
見渡しても人工物が一切ない自然林の景色です。

ご主人の甲斐 豊弘さん曰く、阿蘇の景色をなるべく自然のままの状態で保ち、
その魅力を体感していただける宿屋を目指しているとのこと。
建物のそばには小川が流れ、
木々はなるべく伐採はせずに建物に合わせるほどのこだわり。

お客さまのクチコミにも「外のラウンジ」と評されるほど
別荘感覚で愉しめる空間となっています。
客室の名の通りかわせみも姿を見せるそうです。

鳥のさえずりと小川のせせらぎ、
感じるは連れの眼差し。
鳥のさえずりと小川のせせらぎ、感じるは連れの眼差し。
陽光にきらめく
ウッドデッキそば近くの杉の木。
陽光にきらめくウッドデッキそば近くの杉の木。

暖かな寛ぎの和空間の先には
自然の森林が広がる離れの客室。
暖かな寛ぎの和空間の先には自然の森林が広がる離れの客室。
離れの脇を流れる
阿蘇の天然水。
離れの脇を流れる阿蘇の天然水。

さて、ご主人の甲斐さんの計らいで、
宿泊プランのオプションで大変人気のある
阿蘇山上空をヘリコプターで遊覧体験することに。

車で5分位のところにあるヘリコプターの発着場へ到着。
オプションプランでは、阿蘇山上空を7分間程度の体験フライトですが、
わずか7分と言えども、エキサイティングに楽しめます。
テイクオフしたヘリコプターはあっという間に上昇して阿蘇山上空へ、
眼下には金色に輝く草原と阿蘇の外輪山と街並みが広がっています。
機長が操縦しながら、火口上空を回り阿蘇五岳をガイドしてくれます。
こんな体験は滅多に出来ません。

なんと平日であれば通常の宿泊料金に含まれているということですから
さらに驚きです。

快適爽快な阿蘇山を遊覧する
4人乗りのヘリコプター。
快適爽快な阿蘇山を遊覧する4人乗りのヘリコプター。
あっという間にコックピットの先には
阿蘇の街並が広がります。
あっという間にコックピットの先には阿蘇の街並が広がります。

上空から遠望する森林の先には
阿蘇の田園と遠くに外輪山。
上空から遠望する森林の先には阿蘇の田園と遠くに外輪山。
迫力満点の阿蘇の火口。
上空まで硫黄臭が漂ってきます。
迫力満点の阿蘇の火口。上空まで硫黄臭が漂ってきます。

帰り際に宿屋を経営するきっかけを伺ったところ、
食事処でもあるいちの川でもともと料理屋を経営されていたとのこと。
その後、縁があって料理屋周辺の土地を譲っていただく機会があり、
自然豊かな環境を多くの方に体験していただく施設として宿屋を始めたそうです。

宿名は息子さんが豊かな森を千の森と発案して決めたとのこと。
今後、古民家を移築してさらなる施設を造成する予定もあるとのことでした。

阿蘇の地に咲き誇った
こだわりの料理

日が暮れる頃、いちの川の食事処を訪れ、料亭の和室に通されます。
本日は12品の会席コース。

まず初めに晩秋を感じさせる柿酢と入り銀杏などの先付が通されます。
程なくして運ばれてきたのが目にも鮮やかで品数豊かな前菜。
厚さが3〜4cmもあろう木板に料理が乗せられています。
どの料理からいただくか思わず迷ってしまう楽しさがありました。

吸い物は山女魚の土瓶蒸し。
川魚の芳香を味わいながら汁と具をいただきます。
造りは2品。地の馬刺しに鱒のお刺身。
馬刺しは舌の上で脂が溶けほのかな香りと柚子胡椒の刺激を愉しみました。

目にも彩り艶やかに楽しめる
盛り寄せ創作料理の数々。
目にも彩り艶やかに楽しめる盛り寄せ創作料理の数々。
ウズラの黄身とオクラを絡めていただく
鱒とこんにゃくの刺身。
ウズラの黄身とオクラを絡めていただく鱒とこんにゃくの刺身。

芳醇な甘みが舌の上で味わえる
熊本地元の馬刺しの一品。
芳醇な甘みが舌の上で味わえる熊本地元の馬刺しの一品。
見た目も珍しい輪っぱのワインクーラーと
極上甘口ワイン「菊鹿」。
見た目も珍しい輪っぱのワインクーラーと極上甘口ワイン「菊鹿」。

焼き物として赤牛の溶岩焼きが饗されます。
厚みはありますが脂身が少ない肉質のため意外とあっさりといただけます。
さつま饅頭の餡掛けの後、
この辺りでいつもの通りお腹は一杯となってきます。

次に山女魚(ヤマメ)の吹き寄せ餡掛けの料理。
山女魚を一尾丸ごと素揚げして彩り鮮やかな野菜餡がかかった料理で
山女魚本来の香りと野菜の出汁餡の甘みが絶品でした。

脂肪の少ない赤身の肉質が
さっぱりといただける赤牛の鉄板焼き。
脂肪の少ない赤身の肉質がさっぱりといただける赤牛の鉄板焼き。
まるごといただける山女魚の香りと
野菜の甘みが芳しい一品。
まるごといただける山女魚の香りと野菜の甘みが芳しい一品。

最後にご飯と赤だしにデザートをいただいて終了。
ご飯も無農薬のこだわりのお米を炊いて出しているそうです。
翌朝の朝食も期待を裏切らないわくわく感がしっかりと演出されています。
少量のお料理を品数多くすることで見た目も鮮やかになります。
創作料理を存分に楽しめました。ご馳走様です。

柿のプリンと梨の果汁を
お豆腐にした珍しいデザート。
柿のプリンと梨の果汁をお豆腐にした珍しいデザート。
大ざるに寄せられた
鮮やかな料理が食欲をそそる朝食。
大ざるに寄せられた鮮やかな料理が食欲をそそる朝食。

夕朝食の会食処「いちの川」。
庭園を眺めるゆったり空間の和室。
夕朝食の会食処「いちの川」。庭園を眺めるゆったり空間の和室。
薪ストーブの揺らめきが心地よい
会食処「いちの川」のラウンジ。
薪ストーブの揺らめきが心地よい会食処「いちの川」のラウンジ。

宿屋のパンフレットを覗くと書かれている文面に
「『はなれの宿 千の森』にあるのは、たった三つのおもてなし。
たっぷりの緑と風、そして透明な水。」とあります。

わずか2組のプライベートな空間の価値に加え、
美彩を放つ和食の愉しみ。
阿蘇の森に素敵な隠れ宿があります。
皆様も一度お出かけになってみてはいかがでしょうか?

(文・写真:末吉 秀典)

今月の宿屋データ
宿屋熊本県 阿蘇 はなれの宿 千の森
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  →楽天トラベル →じゃらんnet  →一休.com
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