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宿研通信 2月号

気になる宿屋レポート 末吉が行く

宿泊予約経営研究所所長の末吉秀典が注目の宿泊施設をご紹介するこのコーナー。
今月は、 「埼玉県 柴原温泉 手打ちそばの宿 柳屋」さんの体験レポートをお届けします。

埼玉県 柴原温泉 手打ちそばの宿 柳屋

年の暮れが押し迫った頃、
埼玉県エリアを担当している運営スタッフから
お客さまのクチコミで手打ち蕎麦と里山料理が大変評判の
良い小さな湯宿があるのでぜひ訪問して欲しいとのこと。

「小さな湯宿でお客さまから支持されるポイントは何なのか?」

大変興味深い話だったので、
早速、秩父にある湯宿に宿泊することに。

秩父と言えば首都圏からも比較的近く、
春は芝桜、夏から秋にかけては長瀞の渓谷。
また三峯神社を代表とする神社仏閣も数多く点在し、
日本三大曳山祭りの一つである師走の秩父夜祭りなども
大変有名な観光エリアです。

今回は秩父七湯のひとつとされる
柴原温泉の湯宿「手打ちそばの宿 柳屋」を
ご紹介させていただきます。

自然の中で
歴史を感じる湯宿

予約サイトのお客さまのクチコミを拝見すると
「鄙びた・隠れ宿感・穴場・ホッとする感覚・
自然の音だけが聞こえる」などのキーワードが並び、
山間の閑静な場所に立地していることを感じさせます。

実際に車で訪れてみると、
およそ湯宿がある気配を感じさせない田畑が広がる農道を走り、
次第に狭まる山間の道をさらに奥に進むと
沢の伝いに柳屋の建屋が現れます。

駐車場から玄関に向かいまず見えるのが
いかにも古い木造3階建ての建屋です。
こちらは今は使用していないそうですが
昔の柳屋の旧館で今から140年前の江戸末期の建物だそうです。

柳屋は和室の客室が12部屋に
男女別の露天風呂と内湯のお風呂場、
食事処に囲炉裏が据えられた
エントランスロビーの構成となっており、
小規模な湯宿がその当時から湯宿として
営まれていたことがわかります。

現在は使用していない
築140年は経っている江戸末期の柳屋旧館。
現在は使用していない築140年は経っている江戸末期の柳屋旧館。
囲炉裏が設えられた
エントランスロビー。
囲炉裏が設えられたエントランスロビー。

宿から5分くらいの場所に
柴原温泉の源泉があり散策できます。
宿から5分くらいの場所に柴原温泉の源泉があり散策できます。
秩父の手造り味噌・醤油などを販売している
お土産コーナー。
秩父の手造り味噌・醤油などを販売しているお土産コーナー。

ご挨拶を済ませ、本日宿泊する「やまぼうし」の客室へ案内されます。
客室は鶯色の壁面が落ち着きを感じさせる
14畳のゆったり空間と雪見障子で仕切られた広縁付きの和室。

早速、浴衣に着替え、露天風呂の「白美身の湯」へ向かいます。
木小屋風の露天風呂は男女別に分かれており、
温泉はほのかに硫黄の香りがする鉱泉(冷泉)です。
また、飲泉することで胃腸にも良いとされており、
泉質の良さがお客さまからも大変好評です。

湯気漂う木組みの湯船と山の木々の香りが心身共に癒されます。
湯温も丁度よく内湯のお風呂も含め長湯を愉しむことが出来ました。

鶯色の壁面が落ち着ける
和室14畳の空間「やまぼうし」。
鶯色の壁面が落ち着ける和室14畳の空間「やまぼうし」。
先ずはお茶とお菓子で
一服一休み。
先ずはお茶とお菓子で一服一休み。

源泉の硫黄の香りがする
開放的な女性用露天風呂。
源泉の硫黄の香りがする開放的な女性用露天風呂。
適温が心地よい湯煙漂う
木組みの男性用露天風呂。
適温が心地よい湯煙漂う木組みの男性用露天風呂。

柴原温泉が風呂場の
湯船に注がれる湯口。
柴原温泉が風呂場の湯船に注がれる湯口。
しばらくゆったりと浸かりたい
檜の香りが薫る女性用の内湯。
しばらくゆったりと浸かりたい檜の香りが薫る女性用の内湯。

手間を惜しまない
心づくしの料理

温泉で寛ぎ、客室に戻りウトウト微睡んでいると夕食の時間に。
隣のお部屋で食事をいただきます。
お料理は自家製手打ち蕎麦も含め10品のコース。

先付は紅鱒の押し寿司にわらび煮、虹鱒の甘露煮。
わらび煮は春に芽が出たものを摘み、
樽の中で塩漬けにして長期保存しているそうです。
そのわらびを湯掻いて味付けをして
地道に手間をかけて調理してお出ししているとのこと。

柳屋のお料理は、既製品は一切使用せず手造りであること、
飾らないこと、その分細かく手間暇を惜しまないこと。
それこそが『秩父の山の恵みを届ける宿屋』。
柳屋の専務でもあり調理人でもある
黒澤政史さんが大事にしている思いです。

鯉の造りの仕込みにかかる
調理人黒澤専務。
鯉の造りの仕込みにかかる調理人黒澤専務。
鯉とは思えない
脂の乗った身を下ろす調理風景。
鯉とは思えない脂の乗った身を下ろす調理風景。

事前に仕込み終わった
地鶏をベースにしたスープ。
事前に仕込み終わった地鶏をベースにしたスープ。
調理人としての気迫が感じられる
味見の一コマ。
調理人としての気迫が感じられる味見の一コマ。

次に岩女の塩焼きに茶碗蒸しが続き、お造りは地物の鯉の洗い。
鯉特有の臭みがないのはもちろん、
トロッと脂が乗っていて辛子酢の味噌と合います。

他でも淡泊な鯉の洗いをよくいただきますが、
今回は鯉の脂を残して身がトロッとしていたのは驚きで、
とても鯉の刺身とは思えませんでした。この鯉の洗いは絶品です。

鍋物はこの季節に合う天然の猪鍋。
秩父の郷土鍋料理でもある猪の脂身はコラーゲンがたっぷり含まれており、
女性の方にも大変喜ばれているとのことです。
天然のコクと少し歯ごたえのある猪肉が体を温めてくれます。

まずは紅鱒押し寿司・わらび煮・
虹鱒の甘露煮の先付。
まずは紅鱒押し寿司・わらび煮・虹鱒の甘露煮の先付。
熱々香ばしい
岩女の塩焼きに茶碗蒸し。
熱々香ばしい岩女の塩焼きに茶碗蒸し。

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鮭と野菜の
レモン酢を添えた酢の物。
鮭と野菜のレモン酢を添えた酢の物。
絶品!
脂の乗った鯉の造り。
絶品!脂の乗った鯉の造り。

そして、いよいよ自家製手打ちの蕎麦の登場です。
午前中にその日の必要な分量だけ手打ちして拵えているそうです。
蕎麦好きには堪らない打ち立ての蕎麦は
香りものど越しも良く1人前の盛りもさらりといただけました。

最後に揚げ物と椎茸・舞茸の釜飯にデザートです。
さすがに此処まで来ると食べきれないお客さまも多いらしく、
残った釜飯をおにぎりにして夜食として出していただけるそうです。

この辺のちょっとした心配りがお客さまのハートを掴んでいる様子。
朝食も夕食と同様に手造りの蒟蒻、だし巻き玉子、
女将の漬ける漬け物などお料理が並びます。

特段に飾るところはありませんが、
それ故に調理人の秩父の山の恵みの
こだわりを提供する心意気に気づかされます。

秩父名物料理、天然の猪鍋。
コラーゲンがたっぷりの脂身もポイント。
秩父名物料理、天然の猪鍋。コラーゲンがたっぷりの脂身もポイント。
そばの香りとのど越しが良い
自慢の手打ちそば。
そばの香りとのど越しが良い自慢の手打ちそば。

長いもと蒟蒻、
舞茸の天ぷら。
長いもと蒟蒻、舞茸の天ぷら。
椎茸・舞茸の釜飯。
残った分は、おにぎりにして夜食にできる。
椎茸・舞茸の釜飯。残った分は、おにぎりにして夜食にできる。

デザートは柚子のゼリーに
豆乳のチーズケーキ。
デザートは柚子のゼリーに豆乳のチーズケーキ。
手造りの刺身蒟蒻に
自然薯・豆乳豆腐にだし巻き玉子も魅力的。
手造りの刺身蒟蒻に自然薯・豆乳豆腐にだし巻き玉子も魅力的。

お客さまのクチコミで、蕎麦を含めたお料理や温泉の泉質だけでなく、
ご主人を初めスタッフの対応も高く評価されています。
専務の黒澤さんの思いである『秩父の山の恵みを届ける宿屋』。
地の調理にこだわり、素朴な温かい人柄、
鄙びた温泉宿と称される閑静な山間の風情を大切に守り続けています。

柳屋はご家族で経営されている小規模な湯宿ですが
何度でも訪れたくなる希少な宿屋と感じました。
皆様も一度お出かけになってみてはいかがでしょうか?

(文・写真:末吉 秀典)

今月の宿屋データ
宿屋埼玉県 柴原温泉 手打ちそばの宿 柳屋
所在地・連絡先
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  →楽天トラベル →じゃらんnet  
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