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宿研通信 6月号

末吉が行く!

今月の宿屋

和歌山県 高野山 別格本山 總持院

西暦816年、弘法大師空海によって開かれた真言密教の一大聖地「高野山」。「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界文化遺産に登録され、国内外から数多くの観光客で賑わっています。今回は、高野山にある52の宿坊の一つ「別格本山 總持院」をご紹介させていただきます。

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門の先にあるもてなしの空間

難波駅からは高野山の入り口極楽寺駅まで特急こうやで約1時間30分。さらにケーブルカーに乗り換え、連絡バスに揺られ総本山金剛峯寺の手前で下車し、境内をゆっくりと散策しながら今夜の宿屋へ歩を進めます。現れてきたのは威厳を感じさせるお寺の門構え。門をくぐり右手に立派な藤棚を抱える石畳を通って本館に向かいます。靴を脱ぎ、木段を上がってすぐそばの談話室に招かれ、椅子に腰掛けながらおもてなしの抹茶と和菓子をいただきます。

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庭園を眺めながら優雅なひとときを

總持院の全容は、2階建ての本館を中心に客室棟と本堂・位牌堂そして大庭園で構成されています。客室は13室、それに男女別の沐浴場(風呂場)があります。本日宿泊する客室は「方丈の間」。總持院自慢のそれは見事な大庭園を閑かに望むことができる二間続きの和室と檜の内湯がしつらえられた落ち着きのある客室です。その優雅さは、訪れた誰をも魅了してやまない素敵な客室でした。

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精進料理に込められた心遣い

夕食は表席の大広間でテーブルに座っていただきます。本日の精進懐石料理は13品。朱色のお膳に色とりどりの料理が並べられていきます。精進料理は、元々は一汁一菜を是として簡素なお坊さんの食事でした。やがて、高貴な位の貴族や武家の方が高野山詣でをするにあたり、もてなしの料理として進化を遂げていったといいます。料理の素材は旬の野菜や豆類・穀類を基本として、魚や肉などは使用してはいけません。和食の基本であるだし汁も鰹だしは使用しないとか。お客様に美味しく召し上がっていただくために、料理の見た目以上に仕込みの工夫と手間をかけているとのことでした。

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手間をかけ丁寧に仕上げた季節の味

まずは季節を先取りした紫陽花の豆腐に旬の柏餅が添えられた八寸のお料理をいただきます。清々しい新緑を思わせるちまきや一寸豆、初夏を感じさせる紫陽花の豆腐が絶妙に調和しています。向附は精進料理の代表格である湯葉の刺身。大豆の旨みが凝縮されており口の中で香りが広がります。スイートコーンと甘芋のかき揚げが続いた後は、モチモチとした食感が楽しめる粟の生麩に白味噌独特のまろやかな甘みが癖になる鍋が楽しめます。最後は鶏肉に似せて作った精進唐揚げの料理で締めます。どの料理もゆっくりと味わいながらいただくことができます。翌朝の朝食は方丈の間で大庭園を望みながらいただきました。

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朝の空気に心を研ぎ澄ませる

宿坊らしさを体験できるのは、本堂での早朝勤行です。朝6時に本堂に向かうと、住職の宮田永明さんをはじめ5名のお坊さんたちが約1時間お経を唱えています。宿泊者も自由に参加することができ、朝の凜とした空気に包まれる宿坊の心地よさも格別です。お経が終わると住職が仏の心などの、ためになるお話をしていただけます。特に「過去でもなく未来でもなく、今の一瞬一瞬を一生懸命生きることが大事である。」という言葉が、つい今を疎かにしがちな私の心に残りました。

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ゆっくりと時が流れる宿を目指して

宮田住職曰く、高野山は四季の移ろいがはっきりとしていて寺社仏閣など観光名所は徒歩で移動できるのが魅力なので、ぜひ時間をかけてゆっくりと滞在していただきたい。そのために、自分自身でも泊まりたいと思える快適な設備とおもてなしのサービス、そして何より精進料理が美味しかったと言っていただく宿坊をこれからも目指したいとのことです。高野山を後にし、電車の窓枠に流れゆく高野の深い山並みから次第に人里の家並みのシーンが多くなってきたとき、ふと下界に戻ってきた感覚にとらわれ不思議な気持ちになりました。皆様も一度お出かけになってみてください。

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宿屋 和歌山県 高野山 別格本山 總持院
所在地・連絡先 〒648-0296 和歌山県伊都郡高野山
TEL:0736-56-2111  →高野山 別格本山 總持院HP
宿泊予約サイト →じゃらんnet  →楽天トラベル →一休.com
アクセス
鉄 道:
南海電鉄難波駅から特急で極楽寺駅へ、ケーブルカー・連絡バスを乗り継ぎ約1時間40分。
 車 :
阪和自動車道から南阪奈道路羽曳野I.C.経由で橋本市へ。
国道370号線・480号線を経由して高野山へ。