箱根山の麓、
旧東海道筋に佇む湯宿「玉庭」
箱根観光の玄関口の一つ箱根湯本は、四季を通して多くの観光客でにぎわいを見せています。
2015年の春先から火山活動の活発化によって客足が遠のいたことが心配されましたが、
火山活動の終息とともににぎわいを取り戻してきています。
そんな箱根山の麓に佇む湯宿「玉庭」は1969年に開業。
箱根湯本の町並みを見下ろす高台に位置する離れ形式の老舗旅館です。
樹齢百年の百日紅(さるすべり)の木が
そっと旅人を迎える
箱根湯本の駅からは約15分の場所にあります。
大きな桜の木と玉庭の屋号が引き立つ両脇の行灯の間を通り、
砂利道の先をすすむと、そこに現れるのは大きな石灯籠。
樹齢百年を超す百日紅の木とともに、玉庭の館が旅人を迎えてくれます。
館内は2,000坪の池泉庭の敷地にわずか8室の離れがあり、
金殿・銀殿の展望大浴場とお抹茶でおもてなしをする竹泉庵、
ロビー・ラウンジ棟の構成です。
また、藤棚が美しい本格的な茶室「仁庵」も別棟に備えてあります。
古きよき日本の宿の情景を
そのままに保つ
正面玄関から階段を上がると、
中庭をのぞむ大きな窓が特徴的なロビー・ラウンジがあります。
萌黄色の壁に、桃色の華やかな絨毯が和の薫りを演出しています。
続いて茶処の竹泉庵で、女将の吉田さんによるお抹茶のおもてなし。
たてたばかりのお抹茶とお菓子をいただくことができます。
園路の石畳を伝い客室へ向かうと、見事な鯉が回遊する池庭を中心に
それぞれ間取りのちがう離れの客室が、中庭を取り囲むように建てられています。
玉のような美しい庭の趣を愉しむ
大人たち
本日の宿泊する客室は、源泉掛け流しの檜風呂が楽しめる離れの「加茂」の間。
数寄屋造りの客室は、中庭を眺める広縁と寛ぐ本間を基に次の間、化粧の間の構成。
三間続きのゆったりとした贅沢な空間です。
早速窓を開け放ち、籐のソファに腰掛け暫し美しい中庭を眺めていると、
何かが自分に問いかけてくるような不思議な気持ちに。
目に入る木々や苔、石組、光の揺らめきに至るまで何か宿っているような、
そして会話しているような心地にさせてくれ、美しい庭の趣を愉しめます。
箱根山の源泉が蕩々と溢れる
贅沢な展望風呂
箱根の山並みを展望する大浴場は木小屋造りの金殿と、
ハイカラな伊豆石造りの銀殿があります。
いずれも源泉が蕩々と注がれる湯船の前には大きな窓があり、
刻々と色合いが変化する箱根の山並みを映し出しています。
泉質を示すpH8.4の湯は、肌ざわりも柔らかく芯からあたたまります。
園路を伝って丁寧に運ばれた料理を味わう贅沢
夕食の懐石料理は、お部屋にて一品一品いただきます。
酒菜として盆に添えられた料理は、全4品。
これからの季節を先取りした筋子の土佐漬に長芋と菊の花を添えた小鉢、
見た目も楽しめる子持ち鮎と栗の渋皮煮に車海老と雲丹を添えた料理でした。
お吸物は蓋を開けると松茸の香りが広がり、程よいあたたかさで鯛の甘みを味わいます。
新鮮なお造りのあとは、あたたかい赤ムツの酒蒸し。
ホロホロと脂ののった赤ムツの身を箸で運び、
ほんのりとお酒の香りがする出汁とともに味わう至福の一品です。
さらにサクサクとした鱧の天麩羅に、がんもどきの炊き合わせ。
最後に美味しい御飯と味噌汁、甘味のデザートをいただいて終了です。
華美さよりも質にこだわりをみせる、
しっかりと手がかけられている素晴らしい懐石料理でした。
また、一番美味しくいただけるタイミングで
一品一品を運んでくださった仲居さんの手腕には感謝の限りです。
翌朝の朝食も、中庭を眺めながらすべて完食させていただきました。
旅人の感性を引き出す庭の魅力
「玉のような美しい庭」のある旅館という意味が込められ、
四季折々の花が咲き誇るという玉庭のお庭は、
時間が穏やかに流れている感覚にさせてくれます。
けっして自分には特別な感性があるとは思っていませんが、
玉庭のお庭には旅人それぞれが持つ心のうちを想像させ
和ませてくれるような心地よさがあるように思います。
古きよき日本の旅館が大事にしてきた上質な空間を、
どのように過ごすかはその旅人次第。
国内も含め海外の方にも、ぜひ訪れていただきたい宿でした。
※掲載されているお料理はプランや季節、仕入れ状況によって異なる場合があります。