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宿泊予約経営研究所所長の末吉秀典が注目の宿泊施設をご紹介するこのコーナー。
今月は、 「岐阜県 料理旅館 奥飛騨山草庵 饗家」さんの
体験レポートをお届けします。
ゴールデンウイークが終わった朝の新横浜駅、
下りの新幹線ホームでは観光客から
修学旅行の学生たちへと主役が変わっていました。
わずか10分ほどの間に修学旅行専用の団体臨時列車が
2本立て続けに到着し、学生グループを乗せて慌ただしく出発していきます。
私も後を追うように、のぞみ号でまずは名古屋に向かいます。
名古屋からは在来線のディーゼル特急ワイドビューひだ号に乗り換え、一路高山へ。
独特のディーゼル音を響かせながら快調に東海道本線、
そして途中岐阜駅で進行方向を逆に変え、
山間を縫うように高山本線を疾走していきます。
小京都として名高い飛騨高山は
既に新緑に覆われ心地の良い季節を迎えていました。
駅前でレンタカーを借りて本日の宿泊する湯宿へ向かいます。
今回は、1日5組限定のおもてなしを謳い、お客様からの評価も高い料理旅館、
『奥飛騨山草庵 饗家』をご紹介させていただきます。
饗家は2007年に当時ペンションだった施設を改装して開業したそうです。
客室を中心とした母屋と食事処・貸切露天風呂を中心とした
山草庵とに分かれており、客室はわずか5室。
その他に癒やしの休み処として喫茶ギャラリーと足湯コーナーがあります。
木枠のガラス戸を開け中に入るとお香の香りが漂う料亭の趣。
畳敷きの廊下に沿いながらロビーに案内していただきます。
客室と思わせるロビーでお茶とお菓子のおもてなしを受けチェックインします。
本日宿泊する客室は「蛍ぶくろ」。
和室8畳の二間と次の間にロフトが付いた古民家風の客室です。
少々急なはしごを登ると、畳敷きの大人の隠れ家が出現。
子供時分を思い起こさせる、少しわくわくする空間です。
その他の客室も全てタイプが違っており、ロフト付の和室がもう1部屋、
和室のタイプが2部屋、ダブルベッドのタイプが1部屋で計5室となっています。
どの客室も古民家の意匠デザインが異なり心安らぐ空間となっています。
次に、温泉が楽しめる4種類の貸切露天風呂へ。
貸切風呂は母屋に「宝の湯」「檜の湯」と山草庵に「陶の湯」「岩の湯」とあり、
それぞれ内湯と露天風呂に分かれています。
山草庵にあるお風呂の方が広くゆったりとした造りとなっています。
温泉は無色透明の多少硫化水素臭がする単純泉。
癖もなく奥飛騨の山風が温泉で温まった体を冷ましながら
いつまでも愉しめる貸切風呂でした。
風呂上がりにさらに嬉しいことが、
山草庵の入口に山水で冷やされた飛騨の牛乳が無料で味わえるサービス。
コクと甘みのある牛乳を一気に飲み干します。
夕刻、再び山草庵の食事処へ移動します。
お客様からも大変評判の高い饗家自慢の新・奥飛騨懐石料理。
ご主人の江間敦さん曰く「饗家は奥飛騨らしい
旬材を使った創作コース料理を饗する宿。
素朴な地材と伝統的な郷土の料理を
新しい発想と演出でどうお客様に伝えていくか、
最後の料理までストーリーが大切だと考えている」とのこと。
食でお客様をもてなすことを大事とされている
ご主人の気持ちが伝わってきます。
コース料理は全部で12品。
山里の春と謳われたもてなしの料理が始まります。
まずは食前酒として山ぶどう酒。
前菜は春の幸、蕨の煮こごりの上に湯葉をあしらったクリーム掛けと
砂肝と菜の花和えに蜂蜜レモンのマスタード添え。
椀物は百合根の真丈と山蕗のすまし汁。
続けて造りとして、鮮やかな川鱒と岩魚の刺身に山菜。
ガラスのコップには不思議な透明の泡が添えられています。
これはスダチの果汁を泡にしたもの。
刺身に添えて塩田麩と共に薫りを味わいます。
次にお品書きに示されたお料理は、
春キャベツのお寿司に新タマネギの春巻き。
料理が出てくる前からどのような料理かと、
いろいろと想像を掻き立てられ楽しめます。
焼物は分厚い飛騨牛の炭火焼と岩魚の塩焼きに
山菜の天麩羅と豪華三昧。
肉汁を含む柔らかな飛騨牛の炭火焼は
奥飛騨に来たお客の期待を裏切りません。
いただくどの料理も感動する内容でしたが
私が一番感動したのは次の料理です。
冷やした茶碗蒸しですが器を取ると
香ばしいスモークの薫りと共に煙が漂います。
燻製の煙を器に閉じ込め饗されます。
煙だけでなくスープにもしっかりと燻製の薫りが入っており
手の込んだ演出がコース料理終盤に花を添えていました。
新じゃがの餡掛け饅頭とセリの桜葉ご飯に
デザートをいただいて終了です。
料理の量も程良く、最後まで美味しくいただくことができました。
翌日の朝食も夕食と同様にコース料理仕立てとなっておりますが、
手作りの豆腐や朴葉味噌、鮎の一夜干し、
五平餅などこちらは飛騨の郷土を満喫させる内容となっていました。
宿名でもある饗家。まさに食でお客様をもてなし、郷を食する家。
ご主人の宿屋に対する思いが料理を通してお客様にそのまま伝わる宿屋でした。
皆様も一度お出かけになってみてください。
(文・写真:末吉 秀典)
岐阜県 料理旅館 奥飛騨山草庵 饗家 |
〒506-1432 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷一重ケ根212-84 0578-89-2517 →料理旅館 奥飛騨山草庵 饗家HP |
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