明治・大正建築の息吹を纏う里山の宿
「環翠楼(かんすいろう)」
弘法大師が開湯したと伝わる新潟県最古の温泉「五頭温泉郷(ごずおんせんごう)」。
三つの温泉地で構成され、そのひとつである村杉温泉は、開湯から700年の歴史があります。
地名の由来は薬師堂へ続く参道に杉を植えたことから名づけられたとのこと。
泉質は全国でも珍しいラジウム温泉(放射能泉)。閑静な湯の里山に杉の香りが漂います。
6,000坪の森に抱かれた館で四季の趣を嗜む贅沢
環翠楼の前身は、江戸末期に遡るそうです。
大正時代に歌人・千葉胤明(ちばたねあき)によって、
「緑に囲まれた館」として「環翠楼」と命名されいまに至ります。
本館を起点とし、6,000坪の森のなかに
わずか10室の、明治・大正時代に建築された木造の客室が美しい池の庭園を取り囲み、
モダンなロビーラウンジ、男女別大浴場という構成です。
築130年の風格を活かす見事な空間設計
宿のフロントやラウンジを兼ねる母屋の本館は築130年。
しかし古きよき空間を活かしつつ改装され、
モダンな空間にリノベーションされています。
面白いのはその構造。暖簾をくぐり大きなガラス扉を開けると、
母屋を分断するように土間風の通路が裏口まで抜けて通っています。
これにより、左右のラウンジやフロントに行く場合は、
土間風の通路の木敷きをわざわざ渡らないと行けないような構造になっています。
これは昔、玄関から車でそのまま裏口まで通じていたという名残をそのまま
活かしたためなのだとか。
環翠楼の魅力を味わい尽くす贅沢な離れ
本日の宿泊する客室は、露天風呂付離れの「寛ぎの明治の間」。
玄関を開けてまず目に入るのは、
奥まで続く畳敷きの広縁に敷かれた赤絨毯と、
窓ガラス越しのお庭の緑の鮮やかさという印象深い組み合わせ。
客室は下地窓が上質な空間を醸し出す本間と次の間の二間、着替えの間、
そして絶えず掛け流されている露天風呂という構成。
お庭を眺めつつゆったりと寛げる空間となっています。
新陳代謝を促すラドンを愉しむ
てらいのないお風呂
柔らかな泉質が特徴的な村杉のラジウム温泉は、大浴場でも存分に愉しめます。
温泉中に含まれるラドンは、気化され体内に取り込まれることで新陳代謝を促進するそうです。
2種類の大浴場は日ごとに男女別に入れ替えているそう。
美しい庭越しに季節の贅を味わう幽玄な時間
薄暮の刻、刻々と彩りの変わりゆく美しいお庭を眺めながら、
お部屋にて月替わりの会席料理をいただきます。
先付として「かきあえなます」と前菜が並びます。
かきあえなますは新潟の郷土料理で、
食用の菊と旬の野菜をクルミのタレで和えた逸品です。
次に吸物は松茸の薫りと鱧の食感を味わいながら楽しむ土瓶蒸し。
日本海の新鮮な魚介のお造りのあと、運ばれてきた一品が子持ち鮎の焼浸し。
脂が乗り卵を抱えた鮎を、頭から丸ごと口のなかで頬張ります。
なんとも贅沢なお料理です。
強肴として洋風のきのこを牛肉で巻いた揚げ物、
酢の物として蟹を食用菊と大根で巻いて黄味酢でいただく蟹絹田を味わいます。
最後に帆立の甘みと舞茸の香りを新潟産コシヒカリで炊きあげる釜飯と、
添えられた村杉名物の鯉汁をいただきました。
朝一番に味わう食事は
卵焼きと鮭の塩焼き
晴天となったこの日は庭の窓を開け、お部屋にて朝食をいただきました。
肉厚で薄塩の鮭の塩焼きに少し甘みのある卵焼き、
手作りの豆腐、そして大変人気のある
地元のヤスダドリンクヨーグルトが添えられていました。
濃厚な生乳の風味が朝の食欲をかき立てます。
小鳥のさえずりが響き渡る幸せの時
広大な森に囲まれた、静寂な庭園のなかを散策して楽しむことができます。
そっと耳を澄ませばさまざまな小鳥のさえずりが
風で揺れる木立の音とともに聞こえてきます。
客間から、広縁の椅子から、露天風呂に浸かりながら静けさを聴き、満喫する。
そんな至福のひと時を楽しめる湯宿です。
※掲載されているお料理はプランや季節、仕入れ状況によって異なる場合があります。