宿研通信NEWS LETTER

  • 集客の匠に訊く

集客の匠に訊く:多くの人を魅了するコンテンツづくり

 

集客の匠に、お客さまを呼ぶポイントを訊くこのコーナー。
4ヵ月連続して“コンテンツの匠”が
「宿屋に求められるコンテンツ力」についてお話しいたします。
今回のテーマは『多くの人を魅了するコンテンツづくり』についてです。

多くの人を魅了するコンテンツづくり

みなさま、こんにちは。“コンテンツの匠”田中翼です。
4回にわたり「宿屋に求められるコンテンツ力」についてお話ししています。
どうぞよろしくお願いいたします。

第3回は、『多くの人を魅了するコンテンツづくり』についてです。

宿屋のコミュニティ化

これまで人との繋がりをコンテンツにする
お話をさせていただきました。
今回は、個人だけでなく多くの人を引き込むための
コンテンツづくりについてご紹介させていただきます。

突然ですが、
「一人で行く旅行」と「誰かと一緒に行く旅行」では
それぞれが旅行や宿に求めることに
どのようなちがいがあると思いますか?

私の場合、一人で行く旅行では
その土地に対しての興味が強いため、
その土地ならではのモノ・コトに出会いたいと思いますね。
そのため、宿泊には旅館よりも気軽に行ける手頃な値段の
ビジネスホテルのほうが安心します。

一方、誰かと一緒に行く旅行では
(私の場合は家族が多いですが…)、
同行する相手が喜びそうな
その土地ならではのモノ・コトを探します。
宿泊する宿も、気軽なホテルというよりは
その土地の歴史や料理などを楽しめる
旅館を選ぶことが多いかもしれません。

この2つに共通することは、
両方とも「その土地に繋がりを求めている」ということ。
それが宿屋以外のコンテンツで求めているのか、
宿屋を含めたコンテンツで求めているのか、
というちがいだけなのです。

弊社(株式会社仕事旅行社)が展開する
「仕事旅行」でも、共通の目的を持った人や
場所との繋がりを重要視する人は少なくありません。
つまり、どこかに足を運んだりする時には目的のモノ・コトにまつわる
「コミュニティ(共同体)」を楽しみたい人が多いのです。

これは宿屋にも通ずる部分があるのではないでしょうか。
そこで私が提案するのが、「宿屋のコミュニティ化」です。
宿屋がその土地のコミュニティとして機能すれば、
それを目的に訪れる、新たな集客が期待できるはずです。

目的を明確にしてコミュニティ化する

「宿屋のコミュニティ化」といっても
あまりピンとこない、なんて方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、例を2つほどあげて
宿屋のコミュニティ化についてご紹介します。

まず、「仕事旅行」で例をあげてみましょう。
「神主体験」という体験があるのですが、
この仕事体験を選ぶ人は
神社に興味があることは一目瞭然です。
参加することで神社について深く学べたり、
神主の仕事体験を楽しめたりするのが
魅力的なのはもちろんですが、
それだけではなく、
同じ趣味・嗜好を持った人と一緒に仕事体験し、時間を共有できます。
これがコミュニティ化だと考えています。
神主体験自体がコミュニティとして機能すること、
そして、そのコミュニティでの体験に満足できれば、
リピーターにも繋がるでしょう。

宿屋も同じように、明確なターゲットが分かるからこそ、
コミュニティはつくりやすく、
お客さまもそれを旅行の目的にしやすいのです。

こんな例もあります。
東京に「未来食堂」という食堂があります。
一見すると普通の食堂ですが、ここでは
お店とお客さまの距離が近く、
ただ食事をする場である以上に、
人と人が繋がることのできる
コミュニティの場としても機能しています。

その理由のひとつが、お店独特の制度「まかない」。
これは、後片づけや提供の手伝いをしながら50分間働くことで、
1食分を無料にできるというもの。
お店側にとっては忙しい時間帯での人手確保になるため、
お客さま側も制度を理解したうえで参加することができます。
そして、この制度を通してお店とお客さまだけでなく、
同じ体験をした人同士の距離も近くなることで、
お店全体がコミュニティへと変化するのです。

お客さまとの距離を近くする施策を設けることで、
他の宿屋にはない「特別な時間を体験できる場所」として、
コミュニティの発信源になる可能性があります。
そして、そのコミュニティこそが、
その土地・宿屋ならではのコンテンツにもなっていくでしょう。


プロフィール

田中 翼 たなか つばさ

11979年生まれ。神奈川県出身。米国のミズーリ州立大学を卒業後、国際基督教大学(ICU)へ編入。卒業後、資産運用会社に勤務。在職中に趣味でさまざまな業界への会社訪問を繰り返すうちに、その魅力の虜となる。気づきや刺激を多く得られる職場訪問を他人にも勧めたいと考え、2011年に「見知らぬ仕事、見にいこう」をテーマに株式会社仕事旅行社を設立し、代表取締役に就任する。100ヵ所近くの仕事体験から得た「仕事観」や「仕事の魅力」について、大学や企業などで講演も手がけている。

集客の匠に訊く一覧へ戻る