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  • 集客の匠に訊く

歳時記・行事のリピート力で集客力を高める

集客の匠に、お客さまを呼ぶポイントを訊くこのコーナー。4ヶ月連続して“和文化の匠”が宿屋と歳時記の関係についてお話いたします。

今回のテーマは「歳時記・行事のリピート力」についてです。

 

繰り返し思い出してもらえる歳時記・行事の強みを活かす

 

これまでにお話した、歳時記・行事や季節の食べものには、ほかの物事にはないリピート力があることにお気づきでしょうか?

これらは、季節の巡りとともに繰り返されるのが大きな特徴であり、文化ですから廃れることがありません。すると、毎年その時期がくるたびに行事に関わる物事にふれて過ごします。

たとえ自分では行事をしなくても、メディアが取り上げ、店にディスプレイされ、みんなの話題になるなど、見聞きする機会が必ずあり、それにまつわる思い出が蘇ってきます。私はこれを「思い出ボタン」と呼んでいます。

宿に関する思い出が、歳時記・行事にまつわることなら、毎年その時期が来るたびに「思い出ボタン」が押され、宿の記憶が蘇ります。
人間というのはおもしろいもので、良い経験はまたしたいと思いますし、誰かに話をしたいもの。リピーターになるだけではなく、口コミまでしてくれます。

また、歳時記・行事は年間にたくさんありますから、Aのことで感動したら、BもCもと思っていただけます。ライフスタイルの変化で、何でも手軽にできるわけではありませんので、季節の風情を感じるために、お金を払い、足を運ぶ方が年々増えています。
このような方々は、宿にとっても、上質なお客様といえますので、文化や風情を大事にする宿は、上質なファンを獲得しやすいといえるでしょう。

 

文化的おもてなしのなせる業

 

文化の力というのは、皆さんが思っている以上に大きいものです。
そもそも、私たちのアイデンティティ、自分が何ものであるのかということは、文化によって形成されていきますから、和文化で形成されてきた私たちが、和文化に癒されるのは当然ですね。
また、異なる文化で育った人たちは、和みの文化に感動することでしょう。

子どもからお年寄りまで、日本ばかりでなく外国の方まで、幅広い皆さまに喜んでいただけるのも、歳時記・行事の大きな特徴といえます。

そのために、歳時記・行事を前面に打ち出して企画してもいいですし、料理やしつらいなどのさりげないおもてなしに、盛り込んでみても良いでしょう。行事の心を勉強することは、従業員の教育にも大きく貢献し、その気になれば、小さなことから実施できます。

歳時記・行事を活かすことで、季節の風情、お客様の幸せを願う気持ち、文化を大事にする姿勢など様々なことをアピールすることができます。
そして、文化が伴うことで、胸に残る思い出となり、コアなファンがじわじわと増え、リピーターや口コミが期待できます。質の向上にもつながりますので、和文化の力をおおいに役立ててくださいませ。

 

 

 

プロフィール

三浦 康子 みうら やすこ

和文化研究家、ライフコーディネーター。暮らしを彩る日本文化の情報発信に幅広くたずさわり、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウェブ、セミナーなどの登場回数は2500を超える。All A bout「暮らしの歳時記」、キッズgoo「こども歳時記」、NHKラジオ第1「ラジオあさいちばん」、「私の根っこプロジェクト」などレギュラー多数。「行事育」を提唱し、来春『行事育えほん・親子で楽しむ日本の幸せ行事』(仮称)を出版予定。著書『粋なおとなの花鳥風月』(中経出版)ほか多数。

 

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