「平ら」であることに
感銘を受ける別邸の宿
天に架かる橋のように見えることからその名がついた天橋立。日本三景の一つに数えられ、全長3.6kmにわたって美しい松林と砂浜が続いています。
陽光が差したのも束の間、雷鳴とともに小雪が舞う気まぐれな天気のなか、知恵を授ける文殊菩薩を祀った智恩寺にも数多くの参拝客が訪れていました。
にぎわう智恩寺の奥に歩を進めると今回の宿「文珠荘 松露亭」にたどり着きます。
天橋立 文珠荘 松露亭
日本海・宮津湾と阿蘇海を分かつ天橋立をのぞむ文殊堂岬の先に佇む、数寄屋造り総平屋の宿。
昭和29年に「文珠荘」として開業、平成7年には全面リニューアルに伴い「文珠荘 松露亭」と名を改め現在に至っています。
直木賞作家・山口瞳氏は、著書『行きつけの店』で松露亭を「何もかも真ッ平らで穏やかである」と評し、最高の贅沢であると褒め称えました。
松露亭の名付け親でもある同じく直木賞作家・藤本義一氏もこの宿の常連だったそうです。
打ち水された玄関の先に和が薫る
整然とならされた砂利道を歩き、打ち水された玄関の戸をくぐれば、あたたかみのあるしつらいとスタッフが出迎えてくれます。
平屋建ての館内は、各々12の客室が中庭を眺める畳敷きの廊下と結ばれており、
売店や2ヶ所の浴場・露天風呂、休憩処の談話コーナーもあります。
「平ら」であることに魅せられる客室「雲井」
本日のお部屋は、本間10畳の和室に次の間6畳、さらに茶室を備えた贅沢な特別室「雲井」。
この部屋の特徴でもある大きな窓の傍にある広縁の椅子に腰掛けると、
目の前には美しく平らな庭園と天橋立を一望する穏やかな阿蘇海が広がっています。
景勝を存分に活かした空間が心地よく、安らぎの時間に包まれていきます。
栗の木と高野槙の香りに抱かれた静寂の湯処
2ヵ所の浴場とも壁・天井材には贅沢な栗の木、浴槽には香り高い高野槙が使用されており、
素朴な風合いが体も心も癒やしてくれます。
温泉はナトリウム塩化物泉で体の芯まであたためてくれ、美肌の湯とも言われているそうです。
露天風呂の一つには竹床の休み処があり、長湯が愉しめる工夫もされています。
活け地松葉蟹の会席料理に至福の贅
冬の丹後を味わうならやはり松葉蟹の料理は外せません。料理は松葉蟹を中心に10品。
すべて食べ終わるのにたっぷり3時間近くはかかります。
まず最初に私たちがこれから食す生きたままの地物の松葉蟹を見せてくださいます。
気持ちが高揚するなか、美彩を放つ前菜・八寸に始まり、蟹身真丈の椀物、
華咲く松葉蟹の刺身にうっとりと言葉をなくし、続けて浜茹でされた松葉蟹で会話を忘れて口いっぱいに頬張る始末。
松露亭名物のカニ味噌フォンデューがまたいい口直しとなり、一品一品丁寧に蟹料理は続いていきます。
炭火で焼く蟹味噌と焼き蟹、蟹のしゃぶしゃぶ、そして、締めに蟹の雑炊。
いったい、一人で何杯の松葉蟹をいただいたのかわからなくなるくらい蟹料理を堪能した至福の時間でした。
お目覚めに松の香りと地物の朝食を添えて
蟹料理を堪能した翌朝は自家製松葉ジュースと小梅でおもてなし。松葉のエキスとミントの香りを添えたジュースは美味しく気分爽快。
朝食は珍しい赤米のお粥と地物天恵米のご飯に地魚の焼き物、刺身に湯豆腐、卵焼き、煮物とアサリの味噌汁。
食後は黒蜜の葛きりデザートという、至れり尽くせりな内容でした。
お客さまの別荘であるためのおもてなし
「お客さまの別荘であることを心がけている」という代表取締役社長の幾世英麿さん。
心安まる本来の自分に戻れるようストレス無く過ごして欲しいとのこと。スタッフとの会話も含め、
お客さまに何かをしてあげたいと思う気持ちが館内の至るところに形となって表れていました。
※掲載されているお料理はプランや季節、仕入れ状況によって異なる場合があります。