素足で歩くと心地よい
ピカピカの板張り廊下。

平成11年に国の登録有形文化財に指定されている建屋は、
元は古くからこの地を治める豪農だった小山田家の屋敷だったそうで、
建築にあたりお抱えの宮大工をわざわざ京都に1年間派遣し、大正6年(1917年)に新築されたそうです。
その後、昭和41年(1966年)に宿屋として改装されいまに至っているそうです。
館内は贅を尽くした木造空間となっており、16.3メートルの一枚板の天然秋田杉が使われた縁側廊下や
珍しい着脱可能な中央柱、大正浪漫を感じさせる階段と照明、客室の欄間など
その細部にわたり匠の技が織り込まれていて見る者を愉しませてくれます。
客室は全部で7室。その他40畳の広間の食事処と囲炉裏の茶の間、
男女別の檜の大浴場と2ヵ所の貸切露天風呂の構成となっています。

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客室の障子を開ければ、
そこは外庭、開放感満喫。

ロビーからピカピカに磨きあげられた板張りの廊下を伝い2階の客室へ。
廊下はまるでお寺の縁側のように窓扉のない廊下を庭園を眺めながら歩いて行きます。
本日宿泊する客室は「すいせん」の間。広さは10畳で障子を開けると窓のない屋敷の外庭が目の前に広がります。
夜間はガラス窓の雨戸で仕切りますが、天気のよい日などは開放され、
縁側のイスに腰かけ樹齢380年の樅の木を含めた森を眺めながらのんびりと過ごすことができます。

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保温効果の高い茶褐色のにごり湯は
掛け流しで愉しむ。

毎分240リットル湧出する自家源泉を保有し大浴場と露天風呂では掛け流しで湯を愉しむことができます。
無色透明の源泉が空気にふれることで茶褐色に変化していきます。
臭気は若干鉄さびっぽく感じます。強塩泉のためとても塩辛いです。
外庭にあるお風呂は総檜で造られた貸切露天風呂。
なかに入ると檜の香りがとても心地よく、温泉に浸かり長湯をすることでじっくりと癒やされます。

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雄物川の川がに、土産土法でおもてなし。

お食事は一階の大広間の食事処でいただきます。
昔は座敷に座っていただいたそうですが、いまは海外からのお客さまも増えテーブル席が主流だそうです。
夕食は強首の郷土食を活かした内容でなかでも人気は雄物川の川がにを使った会席料理。
季節ごとに近くで採れた山菜や野菜など地元の食材を料理に添えておもてなしするそうです。
先付は涼感を誘うじゅんさいと鮭糀漬。造りは生湯葉で大豆の香りとともにいただきます。
地元の冬のお祭り刈和野の大綱引きの大綱をゼンマイで模した鍋は自家製の味噌出汁が味わいを深めます。
焼きたての若鮎は香ばしく頭から丸ごと全部いただけます。
ここからはお楽しみの川がにのお料理。まずは川がにのかにみその甲羅焼。
かにみそに自家製のみそとお酒を合わせたみその濃厚な風味がお酒の肴としては絶品でした。
揚げ物は色鮮やかな川がにの唐揚げ。
甲羅を除き、すべてを丸ごといただけ、若鮎とはまたちがった香ばしい食感が楽しめます。
茶碗蒸しは川がにの身を崩し餡かけに、最後は熱々の川がにのつみれ汁に
鯉の甘露煮を特別栽培のあきたこまちのご飯に添えていただき満腹の大満足でした。
翌朝の朝食もプリンのような自家製豆腐にアカモクの海藻を叩いたギバサ、
いぶりがっこも添えられた郷土食豊かなお食事です。

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ご先祖さまが大切に守ってきた建屋を
これからも守り続ける。

屋号の由来はモミの木。樅の木があるところに庄屋があるから樅峰苑と決めたそうです。
昔は樅の木は格式が高く神聖な場所にしか植えることができなかったそうで、
豪農だった小山田家はそれを許されていました。
いまから380年前に京都からわざわざ運んで植えたその樅の木々がいまの大樹に成長しています。
そう話をしていただいたのは16代当主の小山田明さん。
奥さんの女将さんと息子さんの3人で宿屋を切り盛りしています。
今後は古きよきを守りながら、いまの時代に合わせた宿屋をつくっていきたいと語っていただきました。
木々の温もりと匠の技に包まれ、郷土の味覚をじっくりと味わうことができる貴重な湯宿だと思います。
皆さまもぜひ一度お泊まりになってみてはいかがでしょうか。