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宿研が行く:和歌山県 あきば 何求庵

気になる宿屋レポート 宿研が行く

宿泊予約経営研究所所長の末吉秀典が注目の宿泊施設をご紹介するこのコーナー。
今月は、「あきば 何求庵」さんの体験レポートをお届けします。



「和歌山県 南紀州 あきば 何求庵」

関西国際空港からレンタカーで阪和自動車道を経由しての約2時間30分の車旅。
車窓から有田のみかん畑や、日本一の梅の生産を誇る南部の梅林など、
和歌山の実りを眺めながらのドライブです。

田辺インターチェンジを降り、日本三古湯にも数えられた関西を代表する名湯、
白浜温泉街を横目に車はさらに国道42号線を先へ進みます。
しばらくすると風光明媚なリアス式海岸の枯木灘が広がる、周参見(すさみ)の町に到着します。

まん丸の形をした稲積島の入り江には弁天様。そして山側の秋葉山には
人々を火災から守る火除けの神様が祀られているなど、信仰の厚い閑静な漁師町です。
今回は、南紀州の小さな漁師町、秋葉山の懐に佇む
1日2組のプライベートな庵「あきば 何求庵」の宿泊レポートをしたいと思います。

木のぬくもりに包まれた
2組だけの隠れ宿

あきば何求庵は、2010年に旧あきば山荘からリニューアルしたモダンな別荘感覚の一軒宿です。
秋葉山の懐の高台に位置し、外周を炭板でまとった外観はまるで隠れ宿の様相。
玉砂利が敷き詰められた通路を進み、エントランスの木戸を開ければ、
足心地の良いなぐりの紀州杉のフローリングと、
本和紙の絹色で包まれた壁面に炭色の梁や壁板のコントラストが
清楚に調和している空間が広がります。
ジャズの調べが流れるラウンジや、ダイニングの家具や小物一つ一つにも
主人のセンスの高さをうかがい知ることができます。

ジャズの調べに足心地も良い、
なぐり加工の施されたラウンジ

ジャズの調べに足心地も良い、なぐり加工の施されたラウンジ
スタイリッシュな和空間に
アジアンフレーバーが漂う

スタイリッシュな和空間にアジアンフレーバーが漂う

 

二人だけのスペシャルな時を待つ
ダイニングルーム「鳳笙」

二人だけのスペシャルな時を待つダイニングルーム「鳳笙」
美しい庭越しに
春の夕日が射し込む「ぬばたまの庭」

美しい庭越しに春の夕日が射し込む「ぬばたまの庭」

 

客室は60平米の意匠の異なる「繭」と「弦」の2部屋。
「繭」は稲積島と周参見の海岸線を望む、
採光豊かなベッドルームと、大型液晶TVが設えられた琉球畳の和室の構成です。

和紙に包まれた落ち着きのある
和モダンの特別室

和紙に包まれた落ち着きのある和モダンの特別室
稲積島と海岸線の
シルエットが美しいベッドルーム

稲積島と海岸線のシルエットが美しいベッドルーム

 

本和紙と琉球畳の空間が
落ち着きを演出する和室

本和紙と琉球畳の空間が落ち着きを演出する和室
簡素にセンス良くまとめられた
アメニティルーム

簡素にセンス良くまとめられたアメニティルーム

 

一方「弦」は梁の和空間の広がりと、
白竹の連なる壁と床面が日本美を意識させる閑静な造りとなっています。

梁の空間が
特別な広がりを感じさせる特別室

梁の空間が特別な広がりを感じさせる特別室
梁の空間と和モダンの和室とベッドルームが
調和する「弦」

梁の空間と和モダンの和室とベッドルームが調和する「弦」

 

寛ぎを約束する黒を使った
シャープな印象のベッドルーム

寛ぎを約束する黒を使ったシャープな印象のベッドルーム
大きな鏡と白竹が特徴の
アメニティルーム

大きな鏡と白竹が特徴のアメニティルーム

 

客人が浸かる浴室は炭のような黒を基調とした「聖音呂」と、
白を基調にした「妙音呂」というスタイリッシュな半露天風呂風が2つ。
「妙音呂」の浴槽は研ぎ出しと手の込んだ仕上がりになっており、
スカイブルーに輝くお湯が美しく身も心も洗われるようです。

前面が硝子張りの重厚な炭色を基調とした
落ち着きのあるお風呂

前面が硝子張りの重厚な炭色を基調とした 落ち着きのあるお風呂
白色にスカイブルーに輝く
湯船が特徴のお洒落なお風呂

白色にスカイブルーに輝く湯船が特徴のお洒落なお風呂

 

主人の心を感じる
自然豊かなもてなしの味

お料理は主人である城本千代子さん自らが近隣の漁港で吟味して仕入れてきた
紀州の魚介類を中心に、山の幸を加えた独創的なフルコース仕立て。
大切な2組の客人に一品一品丁寧に。従って、食事の時間もゆったりと過ぎていきます。

本日は、自家製のいちご酒から始まり、
初夏を感じさせる桜鯛の酒蒸し・帆立貝柱のマリネなどの先附・前菜が続きます。
お造りは、今朝周参見港で水揚げされたケンケン鰹と黒鮑、そして身が輝いている太刀魚の刺身。
天然の本クエの焼き物や荒汁も饗され、紀州の食材の豊かさに驚かされます。

この豪勢なお料理もそうですが、大皿をはじめとした器も料理を盛り上げてくれます。
そして締めは城本さんご自慢の、見た目も薫りも華やかな和風パエリア。
地の伊勢海老と魚貝のエキスが炊き込まれた土鍋炊きの御飯です。
料理人でもある城本さんのもてなしの心意気を感じさせます。
朝食もこの時期にしか取れないわかめの一種、希少なひとはめのしゃぶしゃぶと、
地のきびなごやかますなどの焼き魚。
そして、土鍋で炊いた炊きたての美味しいご飯に地野菜の煮物を添えていただきます。

初夏盛りの前菜。手前からトコブシの甘煮、
うずらの味噌漬けなど

初夏盛りの前菜。手前からトコブシの甘煮、うずらの味噌漬けなど
鮮度抜群の活け締めされた
ケンケン鰹のプリプリとした厚みのある刺身

鮮度抜群の活け締めされたケンケン鰹のプリプリとした厚みのある刺身

 

土鍋で贅沢な和風パエリアに。
地の伊勢海老と魚貝がたっぷり

土鍋で贅沢な和風パエリアに。地の伊勢海老と魚貝がたっぷり
熱々のだし巻き玉子に地の焼き魚と
炊きたての炭火土鍋御飯

熱々のだし巻き玉子に地の焼き魚と炊きたての炭火土鍋御飯

 

宿名に込められた
究極のくつろぎへの思い

宿名である“何求庵”の由来を城本さんに伺ったところ、
中国の詩人 杜甫の漢詩より導き出したフレーズとのこと。

「清らかな川縁の静かな村。梁の上ではツバメが飛び交い、水面では水鳥が佇んでいる。
妻は紙で碁盤をこしらえ、子供は縫い針で釣り針を造っている。
そんなほのぼのとした情景の中にいる私に、他に何を求めることがあろうか」

杜甫が詠ったこの漢詩から、「これ以上何を求めるものか」という
理想の状況を客人に提供していきたいという思いを抱いたそうです。

そして、これからの何求庵について
「貸切の別荘感覚で客人にゆったりと滞在していただく宿屋にしていきたい。
2組で貸切なので、親子同士、家族3世代でご利用いただくのも楽しいですね。
お料理も食材の旬を活かして多国籍料理にも挑戦して愉しんでいただきたいです」と
にこやかに語っていただきました。

ダイニングテーブルから眺める水庭の水面は、朝の陽光で煌めいています。
その光に初夏の訪れを感じる、爽やかな朝食の時間を楽しみました。

自然体でさりげなく過ごす
大人の愉しめる隠れ宿

自然体でさりげなく過ごす大人の愉しめる隠れ宿
思わず笑みがこぼれる
二人だけの特別なリゾートタイム

思わず笑みがこぼれる二人だけの特別なリゾートタイム

 

 

 

(文・写真:末吉 秀典)

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