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楽天トラベルのインボイス対応って?OTAのインボイス対応の目的・宿泊施設への影響を解説!

 

2023年10月からスタートするインボイス制度。
この制度改正は旅館・ホテルの日常業務にも大きな影響を与えるもので、既に登録が完了し、徐々にシステム関連の改修などを進めている施設も少なくないのではないでしょうか。

さて、OTAの楽天トラベルやじゃらんnetもホテル情報掲載ページやお客様向け領収書についてインボイス制度への対応を進めており、今回に関しては宿泊施設が「適格請求書発行事業者でない」場合もその旨の通知が必須となります。
楽天トラベルやじゃらんnet
の登録施設には既にメール等で案内が行っているかと思われますが、今回は、8月31日までに行う必要があるOTAのインボイス対応を分かりやすくお伝えしていきます。

=目次=
・インボイス制度のおさらい

・楽天トラベル・じゃらんnetインボイス対応の詳細と通知登録方法
・ホテル・旅館が「適格請求書発行事業者」になっていないとどうなる?
・最後に

 

インボイス制度のおさらい

 
インボイス制度とは2023年10月1日から導入される新しい仕入税額控除の方式です。
インボイス制度導入後、消費税を納付する際に、国が指定した「適格請求書=インボイス」を仕入先等が使用していないと仕入税額控除が受けられなくなります。 具体的には、要件を満たした請求書等(=適格請求書)を交付・保存する制度のことを指します。
また、発行者側はその写しを保存する必要があり、受け手側は適格請求書を保存する必要があります。

 

▼適格請求書(インボイス)の要件
  ※赤字の部分が変更点

適格請求書に必要な項目
・登録番号(課税事業者のみ登録可能)

・適用税率
・税率ごとに区分した消費税額
・発行者の氏名、名称
・取引年月日
・取引内容
・取引金額
・受取者の氏名名称

 

▼仕入税額控除とは

ホテル・旅館のインボイス:仕入税額控除とは
仕入れ税額控除とは、仕入れや一部経費で支払った消費税分が納税時に控除される制度のことです。
これは、宿泊代を支払ったユーザー(消費者)と、材料や備品の仕入れを行ったホテル側とで二重に消費税を納めてしまうことを防ぐためのものともいえ、売上時に受け取った消費税から仕入時に支払った消費税を控除することを指します。


その際、もし仕入先が免税事業者(課税売上高が1000万円以下)で、インボイス制度対応事業者(適格請求書発行事業者)ではない場合、仕入時に支払った消費税分2,000円もホテル側が肩代わりしなければならなくなります。つまり、控除が受けられず6,000円のまま納税することになるのです。

 

楽天トラベルが今回のインボイス対応をする目的

 

【1】オンラインカード決済でインボイス制度に対応した領収書(適格領収書)を発行する
楽天トラベルは、オンラインカード決済での領収書を「楽天トラベル名義」で発行する為、インボイス対応の領収書(適格領収書)を発行するには、施設の登録番号が必要になります。
※じゃらんnetも同様の目的です。

 

【2】各施設の情報ページで「適格請求書発行事業者かどうか」を提示する為(※予定)

宿泊施設がインボイス対応(適格請求書発行)事業者に該当しない場合は、「インボイス対応をしていない領収書(登録番号無し)」が発行されることになります。その為、予約時の画面に「適格領収書を発行可能な施設かどうか」が予め掲載される予定になっています。

 

ホテル・旅館自身が「適格請求書発行事業者」になっていないとどうなる?

 
<宿泊施設が免税事業者(課税売上高が1000万円以下)である場合のお話です>

  • ユーザー※が宿泊経費として利用する場合、仕入税控除を受けることができない可能性が出てくる
  • 取引先の事業者(旅行代理店や団体等の法人先)に消費税を肩代わりさせる形になる

    ※ユーザー:課税事業者の企業に勤めていて従業員立替で宿泊経費を払っている社員 / 課税事業者となっている個人事業主等


ホテル・旅館が適格請求書発行事業者の場合ホテル・旅館が適格請求書発行事業者ではない場合

ビジネスユーザー(主に自営業や経営者)が業務目的で宿泊するホテル・旅館の場合、その費用は法人経費として処理されるケースが多いですが、インボイス発行事業者が発行した請求書や領収書等(適格請求書)でないと、消費税分の控除を受けることができずユーザーにとって不利益が起こります。つまり、消費税の控除が受けられない施設は、他の施設に乗り換えられてしまうリスクを抱えることとなります。

楽天トラベルのインボイス対応には、予約の段階で「インボイス制度の要件を満たした領収書を発行する事業者かどうか」が判別できるような情報の追加も含まれるとされています(予定)。
つまり、適格請求書発行事業者かどうかは、「経費」で宿泊するビジネスユーザーにとっては宿を選定する一つの基準になり、対応していない場合は利用を控える動きが広がる可能性があります。
適格請求書発行事業者の登録は、個人利用が売り上げのほとんどを占める小規模施設以外は、行っておくべきでしょう

 

楽天トラベル・じゃらんnetインボイス対応の通知登録方法

 
登録内容

・「適格請求書発行事業者に該当するかしないか」
・「適格請求書発行事業者の登録番号」(適格請求書発行事業者に該当する場合)
・「施設名・施設番号」

<注意点>
✓適格請求書発行事業者ではない宿泊施設も必ず通知が必要
✓今後、適格請求書発行事業者に登録予定の場合も、現情報で回答が必要(何度でも回答可能。最新のものを正とする)
✓回答締め切りは2023年8月31日

 

 

楽天トラベル登録方法

楽天トラベルの『専用のWEBフォーム』から登録します。

楽天トラベル管理画面のTOPページでもご案内されています。


 

 

じゃらんnet登録方法

 

じゃらんnetの『専用のWEBフォーム』から登録します。

管理画面のTOPページでもご案内されています。

 

 

▼自施設の適格請求書発行事業者登録番号が正しいかを確認する場合

国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト (nta.go.jp)

 

 

 

さいごに

 

現時点で楽天トラベルより提供されている情報によると、インボイス制度スタート後は、絞込検索の条件の一つとして「インボイス対応宿泊施設」の欄が設置される見込みとしています。10月以降、一部のビジネスユーザーの宿泊先選びには重要な条件にもなってくると考えられます。
楽天トラベルもじゃらんnetも
対応は8月末までとなっています。もちろんOTA発行の領収書だけでなく、宿泊施設が現地で発行する領収書も同様にインボイス対応が必要となってきます。
夏の繁忙期前に駆け込み登録をする必要がないように、早めに回答を済ませておきましょう。


※インボイス制度や適格請求書発行事業者登録等については、国税庁HP国税庁のインボイス制度特設サイト等をご確認ください。

 

 

この記事を書いた人

はしもとかな

 

2015年入社後、コンサルティング営業室のコンサルタントとして全国のホテル・旅館のWEB集客支援を行う。現在は、宿泊業界のWEBマーケティングを支援するため、宿研通信の運営を担う。施設様のお悩みに寄り添った有益な情報発信を行うべく、日々業界のトレンドや情報の収集・分析を行っている。

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