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宿研通信 4月号

気になる宿屋レポート 末吉が行く

宿泊予約経営研究所所長の末吉秀典が注目の宿泊施設をご紹介するこのコーナー。
今月は、「星のや 京都」の体験レポートをお届けします。

「星のや 京都」

桜のつぼみがまだ堅く、凛とした空気が漂う嵐山と対照的に、
陽春の光にキラキラと輝きを見せる大堰川。
堰堤によって蓄えられた大堰川の川水は渡月橋を渡り、桂川と名を変えていきます。
今回は「もう一つの日本」というコンセプトのもと、
京の文化や価値観、そして自然との調和を具現化し、
2009年12月に開業した「星のや 京都」を取り上げてみたいと思います。

嵐山に佇む
もう一つの日本

最近、一人旅用プランを発売する旅行会社が増えてきています。
今回訪れる「星のや 京都」でも一人用プランが用意されていたため、
評判のお料理を愉しむべく、さっそく申し込むことに。

宿泊当日はお昼過ぎに嵐山に到着。チェックインまでは時間があったので、
嵐山・嵯峨野、界隈を散策することにしました。
天竜寺、野宮神社からたどり、落柿舎・二尊院、
さらに平清盛ゆかりの祇王寺、沢山の仏様が祀られている念仏寺まで
約2時間30分ほどのお寺巡りを楽しみます。

その後は、チェックインのために渡月橋横の舟の待合処へ。
用意されていた舟に乗り込み、嵐山の遊覧を楽しみながら宿の桟橋へと出発します。
距離にして約1kmほどですが、嵐山の風景が遡るにつれ、川幅が狭くなり、
山肌が迫る渓谷へと変化していきます。

迎えの舟に
乗り込むまでの待合室
迎えの舟に乗り込むまでの待合室
大堰川の緩やかな流れを
ゆっくりと遡っていきます
大堰川の緩やかな流れをゆっくりと遡っていきます
自然に溶け込んだ歴史を
感じさせる星のや 京都
自然に溶け込んだ歴史を感じさせる星のや 京都

やがて右手側に歴史を感じさせる建物が近づいてきました。
なんでも、約100年に渡る老舗旅館「嵐峡館」の建物をそのまま活かし、
内装・外装のみを現代風に再生させたとのこと。

桟橋から石畳の小道をあがり、ステンドグラスの屏風が見えてきたころスタッフから一言。
「こちらの屏風の先から星のや 京都となります」
そんな言葉に、この先に広がる世界への期待感が自然と高まります。

苔むした石畳の小道を
あがっていきます
苔むした石畳の小道をあがっていきます
ステンドグラスの屏風が
旅人の到着をお出迎え
ステンドグラスの屏風が旅人の到着をお出迎え

くつろぎの時間を創造する
大堰川のせせらぎ

水の庭・ライブラリーなどの説明を受けながら直接お部屋にてチェックイン。
「星のや 京都」には、大堰川に面した意匠の異なる25の客室が用意されています。

現代的な石畳のテラスと
池が心を和ませる水の庭
現代的な石畳のテラスと池が心を和ませる水の庭
京都の職人で
組み込まれた竹細工のサイン
京都の職人で組み込まれた竹細工のサイン

今回の客室は、一人用の客室「水の音」。
床暖房の黒い床板の上に、寝心地が良さそうなダブルベッドと窓辺のソファベッド。
壁紙には京の唐紙が使用され、上質な和モダンの空間を作り出していました。
内湯は温泉では無いものの、檜の浴槽の香りに合わせた漢方の入浴剤が添えられています。
十分な間取りと、静寂に包まれた客室、そして何より渓谷の眺望が素晴らしい。
窓辺のソファベッドで川のせせらぎと鳥の声を聴きながら、
夕食の時間まで時の移ろいを愉しみます。

床暖房で快適な
漆黒の床板
床暖房で快適な漆黒の床板
ダブルベッドと窓辺の
ソファベッドが特徴の水の音
ダブルベッドと窓辺のソファベッドが特徴の水の音
客室は無線LANも完備。
対岸にはトロッコ列車も走ります
客室は無線LANも完備。対岸にはトロッコ列車も走ります

窓辺のソファベッドから
望む大堰川
窓辺のソファベッドから望む大堰川
京の伝統が活かされている
京唐紙の壁紙
京の伝統が活かされている京唐紙の壁紙
毎日、夕方に日本の間で行う
無料の抹茶体験
毎日、夕方に日本の間で行う無料の抹茶体験

贅沢すぎるほど
京の味を楽しめるコースメニュー

待ちに待った夕食は、全12品の弥生Bコース。
開業当初のアラカルトメニューは無くなりコースのみの提供となったとのこと。
和食と洋食それぞれの料理長が毎月献立を考え、和洋折衷の料理コースが楽しめます。

先附はジャガイモのクレープ生地に甘海老のすり身をのせ、
春の新芽をイメージしたキャビアを添えています。
美彩を放つ八寸は春をイメージさせる旬材で構成。
博多帯の文様を形取った向附は、初夏を告げる初鰹とホワイトアスパラの土佐酢のジュレ仕立て。
名残は昆布だしと木の芽が薫る、鮎魚女のすまし汁と琵琶湖産の子持ちモロコの炭火焼き。
さらに炊合の小芋饅頭、強肴は魴鰹(まなかつお)のポワレと続き、締めは筍ご飯と赤だし。
一品一品がどれも手が込んでおり、料理の説明も実に丁寧です。

最後のデザートまで美味しくいただくことができ、心もお腹も大満足の料理でした。

甘海老のクネルと
クレープパルマンティエ
甘海老のクネルとクレープパルマンティエ
春を感じさせる飯蛸の桜煮と
蛍烏賊の酢味噌など
春を感じさせる飯蛸の桜煮と蛍烏賊の酢味噌など

博多帯の文様を模した
初鰹と新芽の土佐酢ジュレ
博多帯の文様を模した初鰹と新芽の土佐酢ジュレ
何とも贅沢!
琵琶湖産子持茂呂子の炭火焼き
何とも贅沢!琵琶湖産子持茂呂子の炭火焼き

朝の空気の中で味わう
自慢の朝鍋定食

そして朝になれば、客室にて朝鍋朝食をいただきます。
無農薬の京野菜とキノコ、そして嵯峨豆腐の名店「森嘉」の豆腐とお揚げを、
利尻昆布と鰹の合わせダシでいただきます。
野菜のシャキシャキ感と共に、豆腐のうまみとダシの甘さが広がります。
次にプルプルに固まった鶏ダシを加えて、さらに甘みが増した鍋をいただき、
最後にはご飯と溶き卵を加えて贅沢な雑炊に。
客室の窓を開け放ち、爽快な空気と共にいただく朝食を十二分に満足しました。

お部屋にセッティングされた
星のや朝鍋朝食
お部屋にセッティングされた星のや朝鍋朝食
京野菜と嵯峨豆腐を
旨みのだしでいただきます
京野菜と嵯峨豆腐を旨みのだしでいただきます

ボリュームのある朝食を終えて、窓辺のソファで寛いでいると時間が経つのも早いもので、
気づけばチェックアウトの12時。
最後に枯山水の庭を眺め、帰りの舟に乗り込みます。
春風にあたり、「星のや 京都」の余韻を愉しみながら、舟は待合処へ。

「星のや 京都」は、そのロケーションと演出、特にお料理に関しては最高の宿といえるかもしれません。
少し欲を言うならば、お風呂とチェックインの時間。
あの贅沢なロケーションをもっと独り占めしていたい。
そんな一人旅ならではのわがままを叶えていただきたいと願うばかりです。

瓦で大堰川の流れを
イメージした枯山水の奥の庭
瓦で大堰川の流れをイメージした枯山水の奥の庭
チェックアウト時に
立ち寄るフロント
チェックアウト時に立ち寄るフロント

ゲストが寛ぐラウンジ。
DVDやCDも貸出できます
ゲストが寛ぐラウンジ。DVDやCDも貸出できます
静寂な京都らしさを
感じさせる空間でした
静寂な京都らしさを感じさせる空間でした



(文・写真:末吉 秀典)

今月の宿屋データ
宿屋 京都府 嵐山 星のや 京都
所在地・連絡先
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