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宿泊予約経営研究所所長の末吉秀典が注目の宿泊施設をご紹介するこのコーナー。
今月は、山口県 川棚温泉「小天狗 さんろじ」さんの体験レポートをお届けします。
下関の奥座敷と称され800年の歴史を数える川棚温泉。
詩人・種田山頭火もこの地の豊かな自然をこよなく愛し、数多くの句を残しています。
さらに、世界的なフランス人ピアニスト、アルフレッド・コルトーが気に入ったとされる
響灘と厚島の風景もJR山陰本線を挟んで目と鼻の先に広がっています。
オススメの鑑賞スポットは、観光トレイン「みすゞ潮彩号」。
ビューポイントに臨時停車し、美しい響灘を車窓から楽しむことができます。
そんな美しい自然に囲まれた川棚温泉から、
路地宿の趣がある「小天狗 さんろじ」の宿泊をレポートします。
由布院や黒川温泉の山の路地宿をイメージして開業した「小天狗 さんろじ」の客室は全8室。
露地に箱を並べたような箱庭風のデザインで、
全室にプライベートな空間を重視した源泉かけ流しの露天風呂が付いています。
客室のデザインはそれぞれ異なりますが、基本は和モダンのテイストで作られています。
今回はメゾネットタイプの「壱之庄」に宿泊。
客室の広さは約76平米と十分な空間が確保されていて、2階はツインベッドの寝室、
1階のリビングルームにはソファと液晶TV・DVDプレーヤーが備えられていました。
ゆったりとした花柄タイルのバスルームは、ベージュブラウン・ブラックの色合いを基調とし、
間接照明で上品な雰囲気を醸しだしています。
バスルームに備えられているアメニティも少し凝っていて、
タイのハンドメイドソープや入浴剤、ハーブのシャンプー・トリートメント、
ボディウオッシュボールやブラック綿棒など充実しています。
石材で組まれた重厚な湯処の露天風呂は、24時間源泉かけ流しという贅沢なもの。
無色透明のラジウム泉が加熱・加水することなく注がれています。
浸かるのにほど良い高さの湯船と寝湯があり、
天空から吹く川棚のそよ風が火照った体に当たると、とても心地良いです。
夕食は、個室レストラン「十草木」でいただきます。
まずは食前酒から始まり、春の先取り料理として、菜の花・白魚のわさび和えの先附、
そして鰆・蕗の薹・姫筍など春を感じさせる前菜が彩りを添えます。
地元の新鮮な魚の刺身、蛤の潮汁と続き、牛ロースの鉄板焼き、
そしてご当地物として、真ふくのタタキに鯨のオバイケを酢味噌でいただきます。
オバイケ(尾羽毛)は、鯨の尾っぽの部分で、
プリプリとした食感にコラーゲンたっぷりの珍味でした。
その後、川棚名物の瓦そばも登場。
熱く熱した瓦の上に茶そばと錦糸玉子そして牛肉の甘露煮、
もみじおろしと薬味を添えてめんつゆでさらっといただきます。
締めは桜エビとシラスの釜飯と郷土味噌で仕立てたコクのある赤だしです。
全部で13品の会席料理は地産地消を心がけ、醤油も地場物を使うこだわりぶり。
山口県内の幸を約2時間の時間をかけて、美味しくいただきました。
もともと「さんろじ」が建っている場所には、
80年前から営業をしている旅館小天狗の別館とプールが建っていました。
その敷地に二人連れ専用の宿として、2008年8月に開業したとのこと。
今回は取締役の大島 育恵さんにこれからの「さんろじ」の方向性をお話ししていただきました。
「川棚温泉にはない新しい宿を創りたかった。
プライベートな空間を山の路地という舞台で演出しました。
これからの宿は個人客に原点回帰していきます。
特に一人旅を受け入れる企画をこれからも創っていきたい。
女性もそうだけど男性も結構いらしています。
そのためにも客室・お風呂での寛ぎの充実を考えたいですね」
「さんろじ」を一言で表せば“心地が良い宿”と言えます。
山の懐に開けた川棚温泉は、温泉街としての派手な賑やかさはありませんが、
何処となく清々しい静けさを醸しだしています。
のんびりと川棚温泉に来て篭もる湯宿。とてもいい旅をさせていただきました。
(文・写真:末吉 秀典)
川棚温泉 小天狗 さんろじ |
〒759-6301 山口県下関市豊浦町川棚5153
083-772-0227 →川棚温泉 小天狗 さんろじ 公式HP |
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お車で中国自動車道下関ICから県道34号線、県道40号線を経由して約30分
電車でJR山陰本線川棚温泉駅からタクシーで約5分 |