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宿研通信 9月号

気になる宿屋レポート 末吉が行く

宿泊予約経営研究所所長の末吉秀典が注目の宿泊施設をご紹介するこのコーナー。
今月は、 「長崎県 壱岐 奥壱岐の千年湯 平山旅館」さんの体験レポートをお届けします。

長崎県 壱岐 奥壱岐の千年湯 平山旅館

夏の猛暑がまだまだ続く8月下旬。
対馬・壱岐島を結ぶ高速ジェットフォイルの発着場所でもある
博多港のターミナルでスタッフと待ち合わせ。

夏休みの終盤ということで観光客も少ないと想像していましたが
全く逆で家族連れ・カップル・グループやシニア、ビジネス風と
様々な人達で混雑していました。

今回ご紹介する湯宿は、壱岐島の「奥壱岐の千年湯 平山旅館」です。

歴史を感じる空間で
心やすらぐひとときを。

壱岐島は、比較的近く福岡から高速ジェットフォイルを利用すれば
約1時間で行くことができる豊かな自然の幸を体感できる観光地でもあります。

事前に予約して於いたチケットを受け取り、
九州郵船の高速ジェットフォイル「ヴィーナス号」に乗り込みます。
263人乗りの高速船は博多港を定時に離岸して徐々に加速、
時速約70kmのスピードで一路壱岐へ。
途中揺れも殆どなく快適な船旅でした。

壱岐島に少し触れておくと、
壱岐島は対馬と福岡の真ん中の玄界灘に位置する南北17km東西14kmの島です。
歴史も古く、縄文・弥生時代の遺跡が点在し、
魏志倭人伝では邪馬台国の支配下に壱岐が記させれているという説もあります。

また、今回お世話になった平山旅館の女将である平山宏美さんの話によれば、
日本最古の書である古事記では壱岐は唯一神々と行き来ができる島として、
5番目に神によって創設された神聖な島と位置づけられているそうです。
島内の産業としては漁業と農業が盛んであり、
豊かな海産物加えにお米・壱岐牛・麦焼酎などが有名です。

壱岐まで約65分で結ぶ
高速ジェットフォイル「ヴィーナス号」。
壱岐まで約65分で結ぶ高速ジェットフォイル「ヴィーナス号」。
由緒ある日本神道発祥地と伝わる
月読神社。
由緒ある日本神道発祥地と伝わる月読神社。

白い砂浜と透き通ったコバルトブルーの
海水浴場「錦浜」。
白い砂浜と透き通ったコバルトブルーの海水浴場「錦浜」。
満潮には水没する
6体の地蔵が祀られている「はらほげ地蔵」。
満潮には水没する6体の地蔵が祀られている「はらほげ地蔵」。

芦辺港から車で20分ほどで湯ノ本温泉の平山旅館へ。
車を止め陽光に照らされた草木に囲まれた通路を少し下ると、
湯宿の玄関の前に着きます。

創業は60年と古いですが、
外観の建物は里山の小旅館のようで和モダンの佇まい。
聞けばお庭と建物の設計は大分県由布院の
「玉の湯」を設計されたデザイナーの方にお願いしたとのこと。

建物もそうですが、アプローチの庭木の雰囲気が似ている感じがします。
館内は客室が8室、内1室が露天風呂付きの客室。
源泉掛け流し男女別の大浴場と露天風呂に露天の家族風呂が2ヶ所、
お食事処となっています。

石畳と草木が心地よく調和する
エントランスアプローチ。
石畳と草木が心地よく調和するエントランスアプローチ。
木の温もりに
間接照明の演出に包まれるフロントロビー。
木の温もりに間接照明の演出に包まれるフロントロビー。

湯ノ本温泉の泉質は空気に触れると赤褐色に変化するにごり湯。
海水のように塩水っぽく体の芯から温まる特徴を持っています。
露天風呂は大きく育ったゴムの木の葉が覆い繁り南国のムード。
露天の岩肌には温泉の赤褐色の結晶が張り付き、
源泉の成分の強さを視覚で感じさせられます。

温泉も大変素晴らしいのですが、
お客さまから大変評価をいただいているのが料理の内容です。
壱岐の周辺で獲れる新鮮な魚介に女将が育てた
新鮮な野菜と壱岐牛のステーキなど
食べきれないくらい美味しい料理が出てくると、
じゃらん.netのクチコミでは夕食・朝食ともに5.0満点。
全体の評価でも4.8点と高評価の旅館です。
夕食に時間が楽しみです。

我が国屈指の古泉、
1,500年以上の歴史を持つ湯ノ本の温泉。
我が国屈指の古泉、1,500年以上の歴史を持つ湯ノ本の温泉。
源泉は無色透明ですが
空気に触れると赤褐色に変化します。
源泉は無色透明ですが空気に触れると赤褐色に変化します。

さて、今日泊まるお部屋は「月の間」。
6畳・8畳の二間の和室に庭付きの露天風呂。

お部屋の空間はゆったりとしていて静寂、
庭から雪見障子を通して射し込む日の明かりと
間接照明が織りなす温かな灯りで癒されます。

備え付けのハーブティを入れ、窓を開け、縁側に腰掛け、
岩組の露天風呂と庭を眺める一時は寛ぎの時間です。

TVなど簡素にまとめられた
二間続きの和室「月の間」。
TVなど簡素にまとめられた二間続きの和室「月の間」。
静寂な和室から望む
源泉掛け流しの露天風呂。
静寂な和室から望む源泉掛け流しの露天風呂。

色浴衣に着替え移ろう空を眺め
夕涼みを愉しむ。
色浴衣に着替え移ろう空を眺め夕涼みを愉しむ。
備え付けの雑誌と
ミントの香りのハーブティを嗜む。
備え付けの雑誌とミントの香りのハーブティを嗜む。

旬の食材に彩られた
伝統の味わい

夕闇がせまる頃、お部屋にて夕食の宴が始まります。

まずは、先付けとして、自家製の梅酒に
チーズ豆腐・蛸刺し・もずく酢と殻付きの雲丹。
雲丹は実際に仲居さんがその場で割ってお客さまに取り分けてくれます。
獲れたて新鮮な壱岐の雲丹は濃厚な旨みのため、
思わず無言で専用スプーンで殻から雲丹を掻き出し
次々に口の中に放り込みます。

カボチャの冷製スープの後、
運ばれてきたのが堂々とした造りの盛り合わせ。
30cmは超えている石鯛に貴重なアラ、ヒラメにマグロ、
カツオ・アワビ・サザエの7種の豪華盛り合わせです。

驚くことさらに、別皿にそれぞれ、伊勢海老とイカのお刺身が運ばれ、
壱岐の魚介の豊かさに大満足。
イカの煮物の後手打ちの蕎麦、これだけで既にお腹がいっぱいです。

豪勢なイシダイ・アラ・アワビを初めとした
新鮮な造りと先付。
豪勢なイシダイ・アラ・アワビを初めとした新鮮な造りと先付。
今年はこれで食べ治め!?
濃厚な身がたっぷり壱岐の殻付き雲丹。
今年はこれで食べ治め!?濃厚な身がたっぷり壱岐の殻付き雲丹。

プリプリとした歯ごたえと
甘みが強い伊勢海老の造り。
プリプリとした歯ごたえと甘みが強い伊勢海老の造り。
コリコリと透き通って活きている
アオリイカの造り。
コリコリと透き通って活きているアオリイカの造り。

仲居さんのお話ですとお料理はまだ半ば、
これから壱岐牛のステーキに鮑のステーキ、
イカの天ぷら、松茸の土瓶蒸しに鯛の頭焼きが饗され、
最後に雲丹丼と赤だし、デザートがでるので頑張ってくださいね。とのこと。

品数も多いと思うが一品一品の量がとにかく凄い。
どの料理も美味しいので箸は進むがさすがにギブアップ…。

「最後まで全部食べきれるお客さまは少ないかな」と笑いながら語る仲居さん。
パンパンに膨れたお腹を摩りながら合掌、本当にご馳走様でした。

壱岐牛のステーキに
ガーリックチップの香りが食欲を刺激します。
壱岐牛のステーキにガーリックチップの香りが食欲を刺激します。
柔らかな身をかみしめるほどに
鮑の香りと味がでるステーキ。
柔らかな身をかみしめるほどに鮑の香りと味がでるステーキ。

身がたっぷりとある鯛のお頭の焼き物を
まるごといただきます。
身がたっぷりとある鯛のお頭の焼き物をまるごといただきます。
お腹いっぱいでも食べてしまう
贅沢ウニ丼と伊勢海老の赤だし。
お腹いっぱいでも食べてしまう贅沢ウニ丼と伊勢海老の赤だし。

翌朝の朝食は、女将さんの手造りの畑で獲れた
朝摘み野菜のサラダと半丁もある壱岐の木綿豆腐が目を引きます。

サラダは16種類もの野菜が添えられており、
中には花オクラ・ステビア・サマーレッドリーフなど変わった野菜もあります。
オリジナルの味噌と胡麻ソースをつけていただきます。

夕食と同じでボリュームはありますが、
野菜を中心とした料理のため女性でも全ていただくことができました。

大きな壱岐豆腐や焼き魚に
朝から健康的なお料理が並ぶ朝食。
大きな壱岐豆腐や焼き魚に朝から健康的なお料理が並ぶ朝食。
16種類も女将が育て上げた
朝摘みの新鮮な野菜をサラダにしてどうぞ。
16種類も女将が育て上げた朝摘みの新鮮な野菜をサラダにしてどうぞ。

女将さん曰く、壱岐は豊穣の島で歴史も古く、
自然も豊かなので第二の故郷としてお客さまに感じていただけるよう
今後も旅館を経営していきたいとのこと。

そのために、新鮮な野菜も造るし、魚介の燻製など食品加工なども手がけ、
壱岐の魅力を宿屋だけでなく体感するPRをしていきたいと語ります。

これまでの女将の取組によって、
鯛の島茶漬けがテレビの旅番組で全国に紹介され大反響を呼び、
日本航空の機内食として採用され、
多くの人達に壱岐島を知っていただく機会ができたのではないでしょうか。

地域観光の活性化はまず第一歩は宿自身が元気になること。
と私は考えています。
まさに平山旅館の取組は地域観光の活性化に繋がる事例だと思います。
皆様も一度行かれてみてはいかがでしょうか。

女将さんこだわりの
アワビ・サザエ・カマスなど海産の燻製。
女将さんこだわりのアワビ・サザエ・カマスなど海産の燻製。
壱岐近海で上がった新鮮な魚介を
燻製にしてお届けしています。
壱岐近海で上がった新鮮な魚介を燻製にしてお届けしています。

(文・写真:末吉 秀典)

今月の宿屋データ
宿屋長崎県 壱岐 奥壱岐の千年湯 平山旅館
所在地・連絡先
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