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色彩心理に関する成功事例&失敗事例
色の使い方を間違えると集客効果が半減!?

匠が、とっておきの集客術を教えます 集客の匠に訊く

4ヵ月連続して「宿屋に求められる色彩テクニック」についてお話しいたします。
今回のテーマは『色彩心理に関する事例』についてです。

 

色彩心理に関する事例

 

最終回は、『色彩心理に関する事例』についてご紹介させていただきます。

前号まで、色にまつわるさまざまな知識やその効果をお伝えしてきました。
今回は、実際に色彩心理を使った事例をいくつかご紹介します。

 

アメリカ村(大阪)の街頭

2006年、川崎市や大阪のアメリカ村では、色がもたらす心身への影響を活かし、心理的な落ち着きをもたらす効果があるとされる青色の照明(街灯)を設置したところ、犯罪率が低下したそうです。また、2009年にJR東日本でも、自殺を防止するため山手線のすべての駅のホームに青色の照明を設置しました。それ以来、犯罪低下、事故防止を目的とした街づくりのために、色が用いられることが増えるようになりました。

しかし、ここで注意したいのが、色と深い関係にある光です。同じ町並みでも、朝見る風景と夕方見る景色では印象が変わるように、私たちが目にしている「景色」というのは、光によって見え方が異なるのです。

これは国や地域によっても同様の変化があり、例えば、日本で映える外壁の色とハワイで映える外壁の色は異なります。
海外で見受けるようなあまりにも鮮やか過ぎる色は、日本の光には映えないだけでなく、逆に町並みの調和を乱してしまうのです。

 

レストランの個室の壁

次は、失敗例についてご紹介いたします。みなさんも一緒に考えてみてください。

あるイタリアンレストランでは、オーナーの希望で個室は赤い壁です。
ここのオーナーは、テレビなどで「赤は食欲がすすむ色」という情報を取り入れ、個室を赤い壁に決めたそうです。

では、ここでクイズです。
このお店が実際に稼働した際、赤い壁の個室はAとBどちらの状態になったでしょう。

 

ずばり答えは「B」です。
その理由は何だと思いますか?

答えは、「A・B両方」です。
Aの赤い壁に囲まれたなかで落ち着いて食事ができないという状況は、色彩を学んでいない方でも想像できると思います。
では、なぜB「料理がまずく見える」のでしょうか?

先述した通り、「赤」は食欲増進の色と、よくメディアなどでも紹介されています。しかし、実際に赤い壁で囲まれた部屋にいると、「補色残像」の影響を受けます。残像効果とは、いままで見ていた光や色の影響を受け、その色の補色が見えてしまうことです。例えば病院の手術室では、手術着の他、内装も薄い緑色にしています。これは、血液や内臓などの赤い色を集中して見続けたあとに視点を外すと補色(青や緑)が視界にチラついてしまうため、医師の目を撹乱させない工夫をしているのです。

 

レストランの話に戻りますが、赤い壁を無意識に見ることで、赤の補色の「青みの緑」を目の網膜がつくりだしてしまいます。その結果、料理の色が、実際の料理に「青みの緑」が混色されたように見えてしまうのです。
つまり、生ハムなどは、実際の色よりも青っぽく見えるわけです。おいしそうに見えるでしょうか?

このように、メディアからの情報は、多くの視聴者に向けてのあくまでも一般論です。
どの色でもそうですが、色に対する効果や作用、見え方などは、状況によって異なります。
これは、色が悪いわけではなく、「使い方」が間違っているのです。

 

気持ちに寄り添う「色彩心理」

最近は「カラーヒーリング」「カラーセラピー」などという言葉を目にする機会も増えました。
もしかしたら「カラーヒーリング」「カラーセラピー」というと、占い的なイメージのある方もいらっしゃるかもしれません。しかし、色は人間の心身へ多大な影響を及ぼしています。壁や床、天井、インテリアといった空間の色合いは、そこにいる方たちのメンタルだけでなく作業効率などにも変化を及ぼします。

美しい配色のコーディネートも大切ですが、その部屋ごとの目的やお客さま、そこで働く従業員の気持ちに寄り添う「色彩心理」という視点をつけ加えていただけると嬉しく思います。
ありがとうございました。

 

 

 


 

▼関連する記事を読む

<宿屋に求められる色彩テクニック>
シリーズ1:人の心を動かす色彩
シリーズ2:居心地のよい空間のための環境色彩と配色バランス
シリーズ3:カラーユニバーサルデザイン
シリーズ4:色彩心理に関する事例

 

 

 

プロフィール

せきぐち ともえ

株式会社キュア・カラー 代表取締役。一般社団法人 日本カラーヒーリング協会理事長。ILA(世界の光と色の協会 日本支部)代表。広告代理店時代、500人以上のアーティストの広告宣伝・プロモーションを担当。1999年に「キュア・カラー」設立。色彩はもとより、前職経験を活かした企業のブランドづくりのコンサルティング、商品開発、監修などを多数行い、幅広く活動している。現在は「色の気(エネルギー)で女性性満開ワークショップ」を、鎌倉・アメリカ・パリにて開催中。主な著書『心の三原色—もっとキラキラ輝くあなたへ』。

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