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宿泊業の人手不足対策に!先を見据え外国人労働者を受け入れるという選択肢
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宿泊業の人手不足対策に!先を見据え外国人労働者を受け入れるという選択肢

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2023. 03. 28

最終更新 2024. 08. 26

宿泊業の人手不足対策に!先を見据え外国人労働者を受け入れるという選択肢のキービジュアル

目次

    国内の人手不足が深刻化するなか、政府は2019年4月に外国人労働者の受け入れ拡大を打ち出し、新たな在留資格を創設しました。それにより、一気に加速した外国人労働者雇用。特に製造業や都市近郊のサービス業、なかでもコンビニやチェーンの飲食店においては外国人の店員さんを見かけない日がないほどになっています。

    人手不足が深刻な宿泊業も例外ではありません。今後はさらに、外国人労働者に頼らざるをえない状況となることでしょう。

    そこで今回は、人手不足に悩む宿泊施設様の解決策のひとつとして「外国人労働者の受け入れ」に注目し、気になる雇用実態についてご紹介していきたいと思います。

    外国人労働者雇用の気になる実態 

    国内の外国人労働者数

    現在、日本国内ではどれくらいの外国人労働者の方が就労されているのでしょうか。
    厚生労働省が発表した外国人雇用状況の最新データ(令和4年10月末時点)では、全国で約182万人が就労しており、この数は過去最高のようです。在留資格別でみると、日本人の配偶者、永住者、定住者の割合が最も多く、全体の約32.7%でした。次いで特定技能資格のような専門的・技術的分野の資格が多い割合です。

    出典元:厚生労働省2023年1月報道発表資料「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)

    また、国籍別でみると最も多い国がベトナムです。ベトナムからの労働者が多い理由は技能実習生での就労が多いためです。その背景には、ベトナム政府が経済社会開発政策の一環として1980年代より積極的に労働者輸出を行ってきたことが関係しているようです。

    出典元:厚生労働省2023年1月報道発表資料「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)

     

    外国人労働者を受け入れるメリット、デメリットとは

    外国人労働者を受け入れるメリット、デメリット(考慮しないといけないこと)はいくつかありますが、ここでは実際に雇用した企業の体験として特に意見の多かった内容をピックアップしご紹介します。

    メリット

    ① モチベーションが高い人材を雇用できる
    日本で働きたい外国人労働者の多くは、日本での就労を自身のキャリアにおいて良い影響を与えたいと考えています。自身の目的を達成するために仕事に取り組んでいるため、高いモチベーションと行動力をもっており、積極的に働いてもらうことに苦労しません。また、真面目に働いてくれる人が非常に多いことも特徴です。

    ② 多言語対応が可能になる
    インバウンドの影響を直接受ける宿泊業において、集客数を増大できるインバウンドの受け入れは非常に重要なポイントです。そのため、多言語を話せるスタッフを雇用することで集客が狙えるマーケットが大きくなります。また、館内の案内やPOP等にも多言語対応を気軽にでき、対面以外の場面でも活躍してくれます。

    ③ 日本人スタッフへの良い刺激、教養力の向上が図れる
    これは狙っていたことではなく、副産物として効果があったこととして多くの声がありました。
    モチベーションが高い外国人労働者の存在は刺激となり、周りの日本人スタッフに良い影響を与えたという事例です。また、日本人スタッフへの多言語対応の指導も行えることで、外国人労働者がいない場面に直面しても日本人スタッフで対応できるスキルを身に付けることができた事例もあります。

    デメリット(考慮しないといけないこと)

    ① 多様性を受け入れる必要がある
    悪意がなくとも、文化の違いにより予期せぬトラブルに見舞われてしまう可能性があります。
    日本の文化、習慣や日本独特の「行間を読む」のようなことを100%理解することは困難なことです。
    なので、外国人労働者を雇用する場合、その国の宗教や風習、文化の違いを受け入れ理解する必要があります。日本の事情を教えつつも、出身国の宗教や風習、文化を尊重していくことで職場に定着してもらえ、また、本来の能力を発揮してくれることでしょう。

    ② コミュニケーション、育成が難しい場面がある
    上記デメリット①の内容にも通じますが、そこまで言わなくても大丈夫だろうと具体的な指示をしなかったために、考えていた結果にならないケースがあります。これを防ぐためにはできるだけ具体的に最後までやることを伝え、進捗具合によって何度もコミュニケーションをとることが大切です。そのためにも、いつでも気軽に相談できる空気や体制を整える必要があります。

    ③ 採用するための工数や日数が増える
    外国人が日本で働き収入を得ようとすると、在留資格が必要です。出身国によっては就労ビザの資格取得に数カ月要することもあります。例えば、国内の外国人労働者数国籍別割合で3番目に多いフィリピン人の場合、就労資格で働くにはフィリピン海外雇用庁(POEA)の許可が必要です。資格によっては膨大な書類作成が必要な場合もあり、外国人雇用に慣れていない会社だと難航することもあります。

     

    外国人労働者の人件費

    大前提として、同じスキルをもつ外国人と日本人を採用する場合、給料差をつけてはいけません。また、技能実習生であっても各都道府県で定められている最低賃金以上の額を支払う必要があります。それらを踏まえたうえで、厚生労働省が公表した令和3年賃金構造基本統計調査にある、在留資格区分別の平均賃金は以下の通りとなっています。
    宿泊業が該当する特定技能資格取得者の平均は19.49万円となっています。

    出典元:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査の概況」

    外国人労働者の社会保険については、一定の条件を満たすのであれば、日本人と同様に加入が必要です。健康保険・厚生年金保険に加入している会社等の適用事業所に常時就労される場合、国籍や性別、賃金の額等に関係なく、被保険者となり、事業主は「被保険者資格取得届」を日本年金機構へ提出する必要があります。
    詳細は以下の日本年金機構のHPからご確認ください。

    日本年金機構:外国人従業員を雇用したときの手続き

     

    就労する外国人労働者の日本語レベルってどれくらい?

    就労する外国人労働者の日本語レベルは、基本的な日本語を理解できているレベルです。ただし、日本語能力は個人によって能力の差が大きく、また、日本独特の言い回しの理解が必要な会話は難しいかもしれません。
    外国人労働者が宿泊業で働くには、在留資格のうち特定技能資格、技術・人文知識・国際業務資格、身分に基づく在留資格、その他特定活動及び留学以外の資格外活動(アルバイト)の4つがあります。ここでは一般的な在留資格である「特定技能資格」での日本語レベルを具体的にご紹介します。

    この特定技能資格にも種類があり、宿泊業で働くには「特定技能(1号)宿泊」を取得する必要があります。(ただし、今後は宿泊業でもより熟練した技能が必要な「特定技能(2号)」が取得可能となる見込み)
    「特定技能(1号)宿泊」の在留資格を得るには、①国際交流基金日本語基礎テストもしくは、日本語能力試験JLPTの試験で合格基準を満たし、さらに②宿泊業技能測定試験(1号)にも合格する必要があります。

    ① 日本語能力試験JLTPでは

    合格基準を「N4レベル以上」としており、基準の「N4レベル」は以下のように定義されています。
    読む:基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活のなかでも、身近な話題の文章を読んで理解することができる。
    聞く:日常的な場面でややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。
    特定技能資格で働く外国人労働者はこのレベルを最低限有していることになります。

    ② 宿泊業技能測定試験(1号)では

    宿泊業で必要とされる技能や知識である「フロント業務」「広報・企画業務」「接客業務」「レストランサービス業務」「安全衛生その他基礎知識」の5つのカテゴリーから出題され、それぞれの業務で必要な技能レベルを確認します。
    どのような試験を合格しているのか興味のある方は以下からダウンロードしご確認ください。(フリーダウンロード)

    ダウンロードはこちら
    ※ダウンロード資料:一般社団法人 宿泊業技能試験センター 2019年4月14日 第1回(国内)学科試験並びに実技試験過去問題

    外国人労働者の受け入れを検討するにあたってのポイント

    外国人労働者の在留資格とそれぞれの在留期間について

    外国人労働者を受け入れる場合、労働者には在留資格が必要ですが、在留資格によって可能な業務範囲が異なります。また、在留資格ごとに在留期間も決まっているので合わせて理解しておく必要があります。詳細は以下の通りです。
    就労業務制限以外の仕事を任せ続けることは違法になりますのでご注意ください。


    出典元:出入国在留管理庁「在留資格一覧表」

    尚、2023年7月時点で宿泊業でも「特定技能(2号)」が取得可能となるよう政府が調整しています。この「特定技能(2号)」では在留期間の制限がなく、要件を満たせば家族の帯同も認められます。
    現在、法務省令の改正や評価試験の準備が進められているので今後の動きに注目です。

    ※在留資格の「身分に基づく在留資格」の在留期間は身分により異なります。詳細は以下の出入国在留管理庁のHPからご確認ください。

    出入国在留管理庁:在留資格一覧表

     

    外国人労働者を採用するまでの手順について

    外国人労働者の採用計画から受け入れまでをスムーズに進めるためには大まかな流れを把握し、それぞれの工程を計画的にこなしていく必要があります。受け入れる外国人の状況によっては進め方が異なる可能性があるものの、大まかな流れは以下の通りです。

    外国人採用は日本人の採用方法と異なる部分もありますが、普段実施している日本人の採用方法で応用できる部分も多いようです。むしろ、入社後の対応のほうが難しさを感じるかもしれません。在留資格の申請などに不安を抱いている方は、行政書士や登録支援機関に依頼するか、自治体やハローワークのサービスを利用して進めるのも1つの手段です。
    尚、行政書士に在留資格の変更申請や更新手続きを依頼する場合の費用は、5~10万円が相場のようです。

     

    地方での採用はどうすればよいか。相談先は?

    外国人労働者の傾向として都市圏で働くことを希望する人が多いのは事実です。かといって地方に来る人がいないわけではありません。地方で働く魅力として家賃・生活費の安さ、自然環境の良さ、趣味に関する利便性などに魅せられ、就職先として地方が選ばれることがあります。また、自治体が海外の国と連携していて斡旋してくれることもあります。
    では、採用活動は具体的にどのように行えば良いのでしょうか。

    日本人の募集と同じように外国人雇用専門の求人サイトがあります。また、観光庁主催の交流会や、日本旅館協会の求人サイト、ハローワーク、行政機関の支援サイト(https://www.ssw.go.jp/)等を活用する方法もありますが、地方の宿泊施設にとって最も現実的な募集方法は、この3つがあります。それぞれの具体例をみていきましょう。

    01. 各都道府県の外国人推進課などに相談する 

    各都道府県には外国人就労の活躍支援やマッチング・交流事業、相談窓口が設置されていることが多いです。そういった自治体のサービスを利用することはアフターフォローも含め、非常に安心感がありますので一番おすすめの方法です。インターネットで「各自治体名+外国人雇用」で検索すると関連する行政の案内ページがヒットしますのでご確認ください。

     

    02. 登録支援機関から紹介してもらう  

    登録支援機関とは、特定所属機関(受入れ企業)からの委託を受け、特定技能1号外国人が、就労を安定的かつ円滑に行うための、在留期間における支援計画の作成や実施を行う機関であり、紹介だけでなく相談先にもなります。

    登録支援機関を利用するデメリットとして、外国人雇用に関する事務処理の委託費用が高いことがあげられます。しかし、外国人雇用は書類手続きが煩雑で自社で行うことが時間的に難しいこともあるため、登録機関に任せることには確かなメリットもあります。

     ※登録支援機関の一覧は以下のページから確認できますので、所在の都道府県にある登録機関にお問い合わせください。

     

    ■出入国在留管理庁:登録支援機関登録簿(記載のエクセルからダウンロード可能)
    ■総合情報ポータルサイト:Amazing Human

    03. 留学生のいる大学や専門学生から紹介してもらう 

    学校からのアルバイト紹介では、学校内や学校のHPに求人情報を掲載してもらったり、学校側から個人に案内してもらうことができます。この方法は学生間での紹介も多いため安定的に人材を確保しやすいメリットがあります。先輩留学生を指導役として立てることで、指導時間が軽減されるメリットもあります。

    ただし、学校に紹介してもらえるようになるまでには、学校との関係構築が必要となりますのですぐに紹介してもらえるわけではありません。
    注意点として、アルバイトをしたい留学生は資格外活動の許可を法務省に申請し、働く許可を得る必要があります。また、源泉徴収の義務や「外国人雇用状況の届出」をハローワークに提出し社会保険の手続きが必要です。(昼間部留学生のアルバイトの場合、加入義務があるのは労災保険)さらに、留学生のアルバイト採用の場合は1週間の労働時間が28時間までと決められていることも忘れてはいけません。

     

    外国人雇用についての相談先は、登録支援機関のほかに、外国人労働サポートセンター、地方自治体、ハローワークなどの行政機関のサポートやサービスを活用すると安心です。相談先に困ったときは身近な自治体、ハローワークに相談してみるのが1番よい手段です。事務的な困りごとの場合は行政書士が相談先として適切です。
    尚、宿泊施設で特定技能(1号)宿泊の外国人を雇用する場合、直接雇用のみとなります。委託や派遣は禁止となっていますので予めご注意ください。

    外国人労働者受け入れ後のマネジメント

    外国人労働者をどうやってマネジメントしている?

    外国人労働者雇用は特に製造業や小売・卸売業、建設業で積極的に進められており、マネジメントの成功事例がたくさんあります。この章ではその中でも「社内業務に関するマネジメント例」と「私生活のマネジメント例」について事例を2つご紹介します。

    社内業務に関するマネジメント事例 

    常に経験豊富な外国人人材にマネジメントしてもらう
    これは建設業での事例ですが、日本語にも業務にも慣れた経験豊富な外国人人材をリーダーに据え、そのリーダーに後輩の外国人人材を教育してもらう方法です。下記の図のように就労期間と帰国のタイミングを見える化し、サイクルを計画しています。就労したての人からしてみても安心感があり定着率が上がります。
    また、キャリアプランの観点からみても「あなたを●●年●●月からリーダーにしたいので、それまでに仕事を覚えてほしい」など、求める能力と必要スキルを伝達することで早期離職やモチベーション低下の防止が期待できます。


    引用元:住友建機株式会社 外国人人材の「いい活用」 「悪い活用」記事

    私生活のマネジメント事例 

    地域との交流で「会社の一員」ではなく、「地域の一員」となってもらう
    外国人労働者を受け入れる際の必要なマネジメントとは、社内業務のマネジメントだけではありません。私生活のマネジメントもある程度必要となります。その一例として、地域のイベントや祭りなどの準備に参加(紹介者として日本人スタッフも帯同)してもらい、地域住民との交流を促している企業がいくつかあります。中には地元のバトミントンサークルに所属し日頃の練習や大会に出場されている方もいらっしゃいました。

    また、仕事以外で周辺地域の観光地を回ってもらう機会を定期的につくり、地域への愛着と、リフレッシュ環境を整えている企業もあります。いずれも大企業ではなく、地方の中小企業で取り組まれています。
    大切なのは地域への愛着を促進し地域に溶け込んでもらうこと。地域との交流を促し、会社の従業員で支えるのではなく、「地域で支える」というやり方が最も良い方法だと考えます。この取り組みにより離職率が下がるだけでなく、在留期間終了後も期間延長や帰国後また戻ってきてくれることが多いようです。
    地域に馴染むことが私生活の充実には高い効果があるといえます。

     

    外国人労働者に逃げられない方法とは

    外国人労働者が就労期間制限により離職してしまうことは仕方のないことですが、途中で離職してしまったり、最悪なケースは失踪することもあります。この失踪数は令和3年度で7,000人以上確認されており、決して他人事ではありません。

    もしも、失踪が発生し原因や行方も全く分からない場合は速やかに警察に届け出る必要があります。また、詳細は省きますがリスクヘッジのために入国管理局へ報告することも非常に大切です。
    このような途中離職や失踪のようなことにならないためにも、会社側はどのような意識を持てば良いのでしょうか。外国人労働者に逃げられない会社側の良い意識、悪い意識をご紹介します。


    ※出典元:住友建機株式会社 外国人材の「いい活用」 「悪い活用」記事

    このように基本的な対応は日本人と大きくは変わりませんが、特有の事柄に気を遣う必要があります。
    先述の「私生活のマネジメント事例」でご紹介しました、地域に溶け込んでもらうことは離職や失踪の抑止効果もあります。

     

    外国人雇用に関する国の助成金について

    外国人労働者を雇用する際に研修や教育、翻訳機導入や通訳、労務士費用などの経費がかかることがあります。その場合、厚生労働省が用意する人材確保等支援助成金を活用できるので是非ご検討ください。

    ■人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

    外国人労働者は、日本の労働法制や雇用慣行などに関する知識の不足や言語の違いなどから、労働条件・解雇などに関するトラブルが生じやすい傾向にあります。この助成金は、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して、その経費の一部を助成するものです。

    【支給対象経費】

    通訳費(外部機関等に委託をするものに限る)、翻訳機器導入費、翻訳料、弁護士、社会保険労務士等への委託料、社内標識類の設置・改修費など

    もう少し詳細をご覧になりたい方は、厚生労働省が作成している事業者向けリーフレットがありますので以下のPDFをご確認ください。

    厚生労働省作成:事業者向けリーフレット

    さいごに

    今後、多種多様な発想を取り入れ新たなサービスや商品開発、流通先開拓を創出する手段として、外国人雇用を進める企業が今以上に増え、一般化する可能性が大いにあります。そして、外国人労働者を日本人の代替手段である「人材」として雇用するのではなく、「人財」として雇用することが今後より重要視されると考えます。

    宿泊業もこういった前向きな発想で外国人労働者を受け入れ、大きな市場であるインバウンドマーケットの開拓や、新しい価値観・発想を取り入れた付加価値の創造に取り組んでほしいと思います。

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