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ホテル・旅館の経営にワーケーション投資は必要か?需要や普及率、利用実態から考察してみた
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ホテル・旅館の経営にワーケーション投資は必要か?需要や普及率、利用実態から考察してみた

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2023. 10. 18

最終更新 2024. 08. 28

ホテル・旅館の経営にワーケーション投資は必要か?需要や普及率、利用実態から考察してみたのキービジュアル

目次

    国内でワーケーションの認知が広がってから約3年経った現在、ワーケーションの実態を調査をしてみると、これまでの利用実態とは異なる新たな流れがでてきていることが分かりました。

    本稿は『ホテル・旅館のワーケーション投資は必要か?』をテーマとしながら、ワーケーションの利用実態と今後の新たな流れを合わせてご紹介したいと思います。
    宿泊業界のひとつの流れを把握しておくうえでも、ワーケーションというトレンドに、どう反応すれば良いのかの判断材料としても、是非最後まで一読ください。

    ワーケーションとは

    ワーケーションとは、Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語で、テレワーク等を活用することで、旅先に滞在しながら仕事と休暇を両立し、ストレスの軽減や仕事の質の向上を狙った旅行スタイルです。2010年頃から欧米を中心に広まってきました。

    ホテル・旅館、宿泊業のワーケーション投資は必要か?

    先に結論を申し上げると、

    『ワーケーションの投資は一部の地域では長期投資として検討しても良い。その他の地域では今すぐの設備投資は必要ない。ワーケーションの導入は、まずは地域で誘致活動に取り組むべき』


    一見、それはそうだろうと思われますが、実態を調査してみるとこれが最も妥当な答えと結論づけました。その理由は以下の3つです。それぞれの詳細ついて、以降の章で詳しくご紹介します。

    【理由】
    ① 利用目的が多様化しており、市場としては成長の見込みがある
    ② 国やJTBを主とした民間企業が国内外に働きかけをしている
    ③ とはいえ、国内のワーケーション利用は限定的

    利用目的の多様化で市場成長が見込まれる

    これまで、ワーケーションの利用目的は主に働き方改革の一環として利用されていました。しかし、現在の利用目的は多様化しており、ワーケーションの利用機会が増えることで市場が成長していくと考えられます。新たな利用目的の一例として以下の3つを取り上げご紹介します。

     

    目的:従業員の成長を目的としたもの

    従業員の自発性を促し自身の成長を目的として、ワーケーションで滞在している地域の課題解決に取り組み、地域住民とのコミュニケーションや考える力を養う取り組みがされています。

    実際に、(株) 野村総合研究所は徳島県の三好市で年3回、1カ月の長期ワーケーションでこの取り組みを行っており、従業員にとって、人とのつながりや新たな価値観を見つけるための貴重な経験となり、自身の成長につながっています。

     

    目的:企業理念に準ずる社会/地域への貢献

    近年、企業の戦略として自社の社会的意義の向上を狙った活動が増えています。例えば、SDGs、サステナビリティへの取り組みを掲げ、社会や地域への貢献を目的として、ワーケーションに取り組む事例もあります。
     (株) 内田洋行では、台風被害のあった宮城県丸森町の復興再生に重点を置いて、現地でワーケーションを実施していました。先述の地域の課題解決にも共通しますが、このような地域への貢献を目的としたワーケーションのことを「地域課題解決型ワーケーション」と呼び、実施する企業が徐々に増えています。

     

    目的:人材確保(帰属意識を高める)

    人材不足が深刻な国内において、優秀な人材を確保する目的としてワーケーションの導入をしている企業もあります。

    住宅・不動産ポータルサイトを運営している(株) LIFULLでは、場所に縛られない自由な働き方の実現を目指すためにワーケーションを実施。就活生からの注目を集めることで人材確保に一役買っています。また、日本航空(株)は有給休暇の取得率向上を目的としてワーケーションを実施した結果、有給取得率と従業員のモチベーション向上につながり、人材確保に成果がありました。

    これまでのワーケーションの一般的なイメージ「休暇主体(旅先で仕事)」ではなく、今後は「企業活動を主体」としたワーケーションの利用目的が多様化することで利用機会が増し、市場規模は少しずつ拡大していくとみられています。

    矢野経済研究所が実施した国内におけるワーケーションの市場規模の調査では、2020年度と2021年度が約700億円だったのに対して、2023年度は1,084億円となる見込みとされ、2023年度以降も市場規模が成長することを予想しています。


      ※出典元:矢野経済研究所 ワーケーションの市場規模 リリース

    余談ですが、ワーケーションを新しい働き方、旅行スタイルという欧米式の意味のまま輸入し普及させるよりも、ワーケーションを、企業の抱える課題の解決策としてや、地域社会への貢献としての意味などで捉え普及させるほうが、日本の企業文化には受け入れられやすいのかもしれません。

    観光庁や民間企業の積極的な働きかけ

    現在、国内観光の課題である、週末に人や消費が集中していることについて、観光庁は、休暇分散を進めるための新しい旅行・働き方スタイルを浸透させるために、ワーケーションや、企業の本社・支社から離れた場所に設置されたオフィス(以下、サテライトオフィス)の利用を促進しています。
    そのために企業へは、テレワーク導入による税制上の優遇処置や福利厚生の充実に力を入れており、宿泊施設へは、導入のためのアドバイザーの派遣や、補助金による環境およびコンテンツの整備を支援しています。

    ここでは、ワーケーションを導入した施設の事例を2つご紹介します。

     

    嬉野温泉 和多屋 別荘(佐賀県嬉野市)

    ワーケーション at 和多屋別荘

    こちらの施設は国の支援を受け、ワーケーション環境を整備。ワーケーションでの利用を商品化することで、東京のウェブ企画制作会社からのサテライトオフィス誘致に成功しました。

    引用:https://onsen-workation.jp/ureshino_watayabesso/

     

    海の幸とやすらぎの宿 海月(三重県鳥羽市)

    こちらの施設も国の支援を受け、ワーケーションの設備環境とコンテンツを整えました。施設は、「地域と旅行者をつなぐ」をコンセプトとし、ワーケーション滞在者と地域をつなぐために地元のガイド付き観光ツアー「海島遊民くらぶ」と連携、無人島ツアーなど非日常体験の提供も含めた、地域でのライフスタイルをワーケーションの中にコーディネートしています。

     


     

    一方、民間企業の働きかけとして、JTBがワーケーションの導入を考えている個人や企業と、ワーケーション誘致を進めたい自治体とをつなぐ役割を担うために、ワーケーションの総合情報サイトを運営し国内外に発信しています。


    JTB-ワーケーション総合情報サイト「WOW! orkation STORY 」

    引用:https://www.jtbbwt.com/woworkation/

     

    提供サービスとしては、個人・企業と地域・施設とのマッチング、ワーケーション導入支援、地域のワーケーション戦略策定などがあります。そのほか、サイト上でワーケーション環境の整備をしている地域や施設を取り上げ、魅力を紹介。認知拡大として、全国各地でワーケーションの講演、モニターツアーの開催も主催しています。

    このような国と民間企業の取り組みにより、現在、ワーケーション誘致に活発な自治体が続々とでてきています。その中で特に力を入れている自治体をご紹介します。


    1.長野県

    長野県では、コロナ禍以前の平成30年度から「信州リゾートテレワーク」というワーケーション誘致の取り組みを進めており、企業の利用促進を図るために宿泊費用の一部を負担しています。

     

    信州リゾートテレワーク

    引用:https://shinshu-resorttelework.com/

    2.三重県

    三重県は、首都圏の企業を対象にワーケーション誘致を積極的に進めている県です。ワーケーションのポータルサイトを立ち上げ、企業と施設のマッチングを進めています。ワーケーション環境をPRしたい宿泊施設を常に募っており、応募すると特設サイトで発信してくれます。

     


    「とこワク」三重県ワーケーションポータルサイト

    引用:https://workation.pref.mie.lg.jp/

     

    3.長崎県

    長崎県と県内市町では、海や山などの自然環境や、世界遺産などの観光資源、地域の方との様々な交流を楽しめるリモートワーク・ワーケーション受入を進めています。特設サイトでは、長崎県内のリモートワークスペースや県内市町の取組紹介、お役立ち情報などを掲載しています。

     


    リモートワーク支援特設サイト

     

    引用:https://nagasaki-iju.jp/remote/


    そのほか、北海道(富良野)、福島県、栃木県日光市、東京都新島村、山梨県、島根県、沖縄県なども積極的に誘致に動いています。

    上記の地域にある宿泊施設は、自治体がワーケーション誘致のために企業や個人支援の補助金を用意しているので、ワーケーションが利用されやすい環境にあります。該当の宿泊施設は、長期視点の投資としてワーケーション環境の整備、情報発信に努めても良いと考えられます。

    (補足)ワーケーション整備のための補助金について

    国はワーケーションの環境整備のための補助金も用意しています。ワーケーション補助金という事業は存在しませんが、かねてより実施されている事業再構築補助金で申請が可能です。実際に、事業再構築補助金の過去の採択結果をみてみると、ワーケーション整備に関する採択が毎回数十件されています。

    【事業再構築補助金公式サイト】

     

    ・森を活用した暮らし型ワーケーション
    ・愛犬と一緒!ワーケーション滞在者向け宿泊施設の開設
    ・使用していない母屋をワーケーション支援に向けたサテライトオフィスとして提供
    ・温泉街での『新しい暮らし』をテーマにしたワーケーション
    など

    また、ワーケーションのための補助金は各自治体で用意されていることがありますので、一度ご自身の都道府県や市の状況を調べてみることをおすすめします。

    国内のワーケーション利用は限定的

    ここまでは、ワーケーションに取り組まれている範囲内での動きをご紹介しました。現在、さまざまな企業や個人、地域でワーケーションの利用や誘致が進められていますが、全体でみるとワーケーションの利用率は限定的です。

    ワーケーションの利用率について、2022年に観光庁が一定規模以上の企業600社と従業員2,000人に調査をしたところ、以下のような調査結果となりました。

    企業としては、ワーケーションの環境整備が進んでいますが、従業員レベルでの経験率は伸びていないという実態が明らかになっています。2023年時点で、ワーケーションの利用率を大まかに捉えるとすれば、テレワーク利用率の 1/8 程度と認識してよいでしょう。

    では、なぜ国内ではワーケーションの浸透が遅いのでしょうか。
    観光庁の別の調査によると、企業がワーケーションを導入していない理由として「業務としてワーケーションが向いていない」が最も多く、全体の約6割に上りました。また、個人(フリーランス含め)に目を向けると、「ワーケーションをしたいがお金の余裕がない」が最も多い結果となりました。
    このように、ワーケーションを導入する側としても、国内企業の99.7%を中小企業が占め、尚且つ、サービス業や製造業が多い日本では、そもそもワーケーションの導入が難しく、一部の企業にとどまっており、加えて、ワーケーションを受け入れる側も積極的なのは一部の地域という実態が見えてきます。

    以上のことから先に述べた、
    『ワーケーションの投資は一部の地域では長期投資として検討しても良い。その他の地域では今すぐの設備投資は必要ない。ワーケーションの導入は、まずは地域で誘致活動に取り組むべき』という結論に至りました。

    参考として、ワーケーションについて、世の中の人はどのような関心をもっているのかを知るために、Google検索で「ワーケーション」に関する検索キーワードを調べてみました。その一覧を添付していますので、お時間がある時に是非ご覧ください。ワーケーションを利用するときのニーズや、どの地域に興味関心が高いのかが分かります。
    1つ興味深いのが、ワーケーションの検索回数は10月に増えるということです。

    ▼ワーケーションに関するGoogleでの検索ボリューム

    フリーダウンロード

    さいごに

    ワーケーションを利用するのは日本人だけではありません。現在、インバウンドが回復してきている状況下で、外国人旅行者のなかには仕事をしながら日本観光を楽しんでいる人も多くいます。日本人向けのワーケーションだけではなく、訪日外国人にも向けた情報発信が必要です。

    少しずつですが成長しているワーケーション市場に宿泊施設単独で集客をしたい場合、予約サイトやHP上だけでPRをしても効果は薄いでしょう。ワーケーション集客を進めるためには、先ほどご紹介したJTBのポータルサイトや自治体のワーケーションサイトを活用し、企業や個人への情報発信とマッチングが必須と考えます。

    もしも、事業再構築補助金や自治体の補助金もうまく活用し、できるだけ少ない費用で環境を整えることができれば、あなたの施設を利用する用途/意味が増え、長期的にみて良い設備投資となるかもしれません。

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