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顧客満足度1位の企業から学ぶ シリーズ2~ 大手コンビニがどうしても勝てない、セイコーマート ~

前回の(スターバックス編)に引き続き、顧客満足度1位に選ばれた企業は
「なぜ選ばれ、満足度が高いのか」をご紹介します。

第2回となる今回は「コンビニエンスストア部門1位」
北海道のローカルストア『セイコーマート』です。
大手コンビニが北海道でどうしても勝てない『セイコーマート』
道民から愛され、満足度の高い理由はどこにあるのでしょうか。
大手チェーンとは一線を画した企業戦略をご紹介したいと思います。

※サービス産業生産性協議会が7月27日、2万5167人を対象に実施した「2022年 日本版顧客満足度指数」の調査結果。
 この調査は毎年30以上の各業種、約400社の企業を対象に行われています。
 (出典:https://www.jpc-net.jp/research/detail/005937.html

 

北海道のコンビニエンスストア市場

JFRコンビニエンスストア統計調査月報によると、
2022年7月末時点で全国のコンビニエンスストア(以下コンビニ)の店舗数は55,914店舗。
これを日本の人口比に置き換えると、人口10万人あたり 44.8 店舗存在しています。

次いでセイコーマートが展開している北海道に焦点を当てると、
道内のコンビニの数は
2022年3月末のデータで人口10万人あたり 58.2 店舗となり、
これは全国で1番多い数字です。

東京が3位で54.8店舗ですので、北海道は日本一のコンビニ激戦区といえるでしょう。
※2位は山梨県で57.4店舗でした。

北海道内での企業別コンビニ店舗数は以下の通りです。
セイコーマートが僅かにセブンイレブンを抑え最も多いコンビニとなっています。

前回のスターバックス同様、
店舗数1位 1番選ばれる 顧客満足度1位  とは限りません。
ここにもセイコーマートが必然的に選ばれ、満足度が高くなる理由があります。

 

 

セイコーマートが選ばれる理由

みなさんご存じの通り、北海道はとても広大な土地です。
人口は全国の都道府県のなかで8番目ですが、人口密度は最も低く、
居住地もまばらで、都市間距離は全国平均の2~3倍あります。
つまり、北海道は広大な地域に人口や町機能が分散している特徴があります。

大手コンビニが全国各地で同質の商品やサービスを展開している中、
セイコーマートは北海道内に特化し、
この「人と町機能の分散」から生じる
さまざまな不便さを解消するポジションに身を置いたことで
地域になくてはならない店として消費者から選ばれています。

セイコーマートは人口やお店が少なく、日用品や飲食品等の購入が容易でない地域にも
積極的に出店することで、
地域にとってコンビニとしての
存在以上に暮らしを支える存在
(生活レベルで必要な存在)として重要な役割を担っているのです。

 

地域になくてはならない存在」になる為に

セイコーマートは人口が少ない地域へも出店が可能となるように、
創業当時から北海道全域への配送体制や自社製造体制(店内調理含め)の
構築に資金と時間を費やし、
今では2020年時点で道内179市町村のうち
173市町村に店舗を構えています。

※(株)セコマが日本サービス大賞 経済産業大臣賞を受賞した際の公開資料では
道内での人口カバー率99.8%という数字が公表されていました。

一見、人口の少ない地域では赤字になるかと思われますが、
過疎地域では土地代が安く(年間3万など)、先述の通り、周辺に何もないことから
セイコーマートで日用品や飲食品を全て購入することとなります。
結果、一人あたりの購入単価が高く、黒字となっている店舗が多いようです。

 

 

顧客満足度が高い理由

セイコーマートは人と町機能の分散によって顧客が何を不便と感じていて、何が必要なのか」を考え、
自らそれに応えるサービス設計をしていることが顧客満足度に繋がっています。
いわゆる、マーケットインの手法。

 

何が不便で、何が必要なのか

例えば、食品スーパーの代わりになる食材が多い店舗、
お弁当や総菜が多い店舗、日用品が多い店舗など
セイコーマートはその地域の需要に応じた各商品ボリュームを調整しています。
そうすることで真に
「不便を解消してくれる存在」
「必要なものを満たしてくれる存在」
となり、満足度が上がり売上も伸ばしています。


地域に必要な商品を必要な分取り揃えている

また、セイコーマートは顧客から「価格の安さ」も評価されています。
これは「必要なものは、自分たちの足で見つけ、自分たちの目で確かめ、自分たちの手で作る」
という考えのもと
原料生産から製造、販売までを自社で行う仕組みにより実現しています。

この仕組みによって、地域性を考慮した日配食品や酒類など
幅広いカテゴリーに渡り
価格の安いオリジナル商品を生み出しています。
自分たちにしかできない自社製造商品の多さこそ、
コンビニ業界では珍しい
「価格の安さ」が評価されている所以です。

 

 

さいごに

大手と同じフィールドで戦うのではなく
“地場に精通した自分たちだからできるコト”に全力を注ぐ
ここにセイコーマートが考える戦略の根幹が見えます。

 

モノやサービスで溢れている現代。
ひとつの商品やサービスを買うだけでも、たくさんの選択筋があります。
これからの時代は つながりの経済が重要視されるという考えがあるように
人がものを買うとき、よりこだわりや専門性の高いほうを買います。
同じものを買うなら、より関係性がある人から買います。


宿泊業においても
大手施設と同じフィールドで戦うのではなく、
大手よりも優位になれることを探し発信し続けることが大切です。
例えば、「こだわり、専門性、信念」や「お客様との関係性構築のしやすさ」が
大手施設との優位性をつくるヒントになるのではないでしょうか。

時代はつながりの経済が重要視される


 

最終回の第3回は「百貨店部門1位」顧客満足度6年連続1位『阪急百貨店』
をご紹介します。尚、第3回の配信は11月予定です。お楽しみに!

 

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