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老舗くず餅の「船橋屋」に学ぶ
安定した老舗の味を守る近代的な仕組みづくりとは

他業種に学ぶ ビジネスコラム


コンサルタント中島セイジの、これからが見えるビジネスコラム。
今回は、208年の歴史を誇る老舗くず餅の「船橋屋」をご紹介します。

 

船橋屋の「仕組みづくり」に学ぶ

 

くず餅ひとすじ208年


208年の歴史を誇る老舗くず餅の「船橋屋」。
208年といえば、私たちが生まれるよりはるか前のことですが、ここでつくられるくず餅は、昔も今も変わらずの人気を誇っています。

今回、ここ船橋屋の8代目当主である渡辺雅司(まさし)氏のお話を聞かせていただきました。船橋屋はもともと千葉県船橋市で豆腐屋を営んでいました。

当時、そこで農家のおやつとされていたくず餅を亀戸天神参道で売ってみたところ、瞬く間に参拝者から支持を獲得。今でも多くのお客さまから愛される名物となりました。208年も船橋屋がお客さまに選ばれ続けるポイントを、私なりに3つに絞ってみました。

 

1. 創業当時の製法を守り続ける

船橋屋のくず餅は、創業以来ずっと、厳選した小麦粉のでんぷん質を天然水で、450日間発酵させる製法でつくられています。実はこのくず餅、これほど長い時間をかけてつくりあげるにもかかわらず、賞味期限まではなんと2日間。

これは決して腐ってしまうというわけではなく、くず餅特有の食感や香りを楽しめる「本当に美味しい状態で食べてほしい」という気持ちの現われなのです。

 

2. 「くず餅ひとすじまっすぐに」という理念

人の体に良いのは、自然につくられたもの。その考えがあるからこそ、添加剤や保存剤といった人工物を入れたり、真空パックにしたりしません。その真摯な想いが支持され、短い賞味期限でも買い求めるお客さまは後を絶たないのです。

 

3. 20年かけて「ものづくりの近代的な仕組み化」を実現

船橋屋のくず餅の味を職人に頼らずに維持して行くために8代目当主、渡辺氏が出した答えは「仕組みづくりと組織化」。

今まで職人頼りだったものづくりを、誰がつくっても船橋屋の味になる仕組みをつくることで、お客さまに安定した老舗の味を提供できるようにしたのです。

また、この改革はお客さまの満足度の向上のみならず、社員の成長にもつながり、結果、組織としても大きく成長することが出来たといいます。全国的にも有名な老舗和菓子屋「とらや」17代当主目黒川光博氏がこんなことをよく口にします。

「伝統は革新の連続である」と。

その言葉どおり、とらやは全国的に和菓子を販売し、創業時から「手づくり」という基本姿勢を徹底して守り続ける一方で、TORAYA CAFE´など、それまでにない革新的な展開も行っています。同じように船橋屋も、老舗としての伝統的な製法を遵守しながらも新たな組織改革など、革新的な展開も行っています。

 

このように伝統への「徹底」と「革新」をしてきたからこそ、何年たっても多くの人に選ばれ続けるのです。

 

コンサルタント プロフィール

中島 セイジ なかじま せいじ

株式会社クオーターバック代表取締役社長。見・投資(みとうし)コンサルタント。マーケティング及び広告 戦略を中心にプランニング活動を行い、コンサルタントとして数多くの企業を支援している。『非効率な会 社がうまくいく理由』(フォレスト出版)、『儲けないがいい』(アチーブメント出版)が好評発売中。

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