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ホテル旅館のインフルエンサーマーケティングのススメ!失敗しない選び方とは?ステマ規制の注意点もまとめて解説

多くの世代でテレビや雑誌離れが進み、ソーシャルメディアが情報収集ツールとして欠かせない存在になってから久しくなりました。
ソーシャルメディアの普及と共に、増加した「インフルエンサー」は新しい消費の立役者として宿泊施設のプロモーション活動でも重要な存在になってきています。そんな中、インフルエンサーを起用しようにも、誰に依頼するのが正解なのか、どのように活用するのが効果的なのか、案じている宿泊施設も多いのではないでしょうか。
本記事では、宿泊施設におけるインフルエンサー起用のメリット、効果を最大に引き出す為のポイント、「ステマ規制」等の注意点をまとめて解説していきます。

 

 

 


 

インフルエンサーマーケティング とは


ソーシャルメディア上で多くのフォロワーと影響力を持つインフルエンサーと呼ばれる人たちに、自社の商品やサービスを紹介・訴求してもらうことで、消費者への認知拡大や購買意欲を促すマーケティング手法のことです。
企業のマーケティング活動によるインフルエンサーの活用は、その業種や企業規模の大小を問わず、一般的な施策としてとして定着しつつあります。サイバー・バズ/デジタルインファクト調べ によると、国内のインフルエンサーマーケティングの市場規模は2020年に332億円、2021年に465億円、2022年に615億円と順調に拡大しており、今後もさらに需要が高まることが予想されています。

 

インフルエンサーがもたらす集客効果やメリット

 

多様なプロモーション施策を実施できる

インフルエンサーを活用したプロモーション施策として、宿泊施設では以下のようなことが可能です。

現地訪問
インフルエンサーを宿や観光地などに来てもらい、現地での滞在の様子やおすすめスポットをレポートしてもらうプロモーション施策。

ギフティング
インフルエンサーに宿泊を無償で提供し、滞在してもらったあとに、施設紹介をしてもらうプロモーション施策。

コラボレーション

「インフルエンサー監修」で、商品やサービスを共創(共同開発)して、話題性を集めるPR施策。

アンバサダー
宿泊施設のPR大使(広告塔)になってもらい、ブランドイメージ向上などを図るプロモーション施策。

 

自然なクチコミだから購買行動への影響力が高い

利用した人・詳しい人の「クチコミ」は購買行動を促進する上で非常に重要な要素です。
特に、自分に近いライフスタイルや親しみを感じる人からのクチコミはより効果を発揮します。
一般的に、インフルエンサーは芸能人と比較してファンとの距離感が近く、日常的なコミュニケーションを通じて信頼関係を築いています。
消費者にとって身近なインフルエンサーが発信する情報(クチコミ投稿)は、自然で効果的なクチコミとなります。
つまり、インフルエンサーに投稿してもらうことで、同じ興味を持つフォロワーや同じ属性のファンたちからの共感を多く獲得し、さらに興味を持って行動に移してもらいやすい環境づくりに繋がります。

 

通常の広告よりも消費者に受け入れられやすい

いわゆる「広告っぽさ」を消費者にあまり感じさせずに商品の宣伝ができることから、消費者に受け入れられやすいという点もあげられます。
宿泊施設が自社のアカウントで広告を出すこともSNSマーケティング手段のひとつですが、ユーザーの中には「アドロック」と呼ばれるインターネット上の広告ブロッキングツールを使用している人や、スクロールで広告を飛ばしてしまう消費者も多くいます。
その点、インフルエンサーによるPRは通常のソーシャルメディアへの投稿として扱われるため、広告ブロックに影響されずに情報が届けられるのです。

 

 

インフルエンサーの力を最大限引き出す方法と選定のポイント


インフルエンサーの活用は、起用する人の選定ポイントを押さえておかなければ、期待した通りの効果は出なかったという結果になることも多くあります。インフルエンサー選びで失敗しない為にも、次のポイントを押さえておきましょう。

 

専門ジャンルに特化したインフルエンサーを選ぶ

 

インフルエンサーの中には、トラベルインスタグラマーや旅行系YouTuber と呼ばれる人たちが存在します。旅行や宿泊施設の情報発信に特化した専門性の高いアカウントを開設しており、旅情報を探しているフォロワーに対して有益な情報を届けることを目的に運営していることが多いです。その為、旅行への関心が高いファン(フォロワー)が多く、フォロワー自体の質が高いと言えます。また、普段から旅情報や宿泊施設情報を発信していることもあり、演出や編集の能力も優れている傾向があります。

旅全体を紹介するものもあれば、温泉宿情報に特化したもの、ホテルに特化したもの、おひとりさまに特化したもの、グランピングやキャンプに特化したものなど、様々なインフルエンサーが存在します。

もちろん、きれいなモデルやカップルアカウント、人気のグループYouTuberの中にもフォロワー数が多く、影響力がある方は多いですが、その人達をフォローしているファンは、発信されるコンテンツよりもインフルエンサー自身に帰属しているという事が多いです。その為、インフルエンサー自身のブランディングやコンテンツの一つとしては有益に働いても、宿側のプロモーション自体は失敗に終わってしまう可能性もあります。

 

フォロワー数だけでなくフォロワーとのエンゲージメントを見る


マーケティング手段の一つとしてインフルエンサーを「宿泊施設の認知拡大」を目的に活用するケースがあります。
その場合は、フォロワー数が10万~100万以上のトップやミドルと呼ばれる有名なインフルエンサー(※下図参照)に発信してもらうに越したことはありません。しかし、コスメやアパレルなどと異なり衝動買いがされにくい宿泊予約において、「認知拡大」から予約に直結するかというとそうではありません。

つまり認知させるだけでなく、行動に移させる(集客に繋げる)ことを目的にして活用することが的確な作戦だと言えます。その場合1万人~10万人単位のフォロワーを抱えている「マイクロインフルエンサー」の方が、効果が高くなります。なぜなら、彼らはフォロワーとの距離感が近く、インフルエンサーの影響を受けて行動に移すフォロワーを多く抱えているからです。
かといって、フォロワー数が1千人~1万人以内のナノインフルエンサーと違い、「案件としてのタイアップ投稿」の経験値もある程度積んでいるため、投稿の質も担保されやすくなります。

しかしながら、中にはフォロワーをお金で買い、数を増やしているインフルエンサーもいるため、フォロワーの数だけで判断するのは危険です。
必ず、ファン(フォロワー)との関係性を見るようにしましょう。
宿泊施設のターゲット層に合っているか、投稿に対するリアクション等を見て信頼関係が築けているかなど、アカウントそれ自体の「質」を見極める必要があります。
これらはSNSにおいて、「エンゲージメント」という指標で捉えることがあります。エンゲージメント率が高いインフルエンサーとは、フォロワーとの繋がりが深く、フォロワーからの興味関心が強い人ということを表しています。
採用判断に迷う際はフォロワーとのエンゲージメント率※を一つの判断基準にしてもいいでしょう。

※Instagram全体でのエンゲージメント率は平均で約1.22%、インフルエンサーのアカウントでは約1.67%が平均的となっていて。ジャンルによっては、3%を超える場合もあります。
エンゲージメント率1%以上となれば、インフルエンサーマーケティングとして考えると、それなりに効果が期待できる数値といえるそうです。

 

細かい演出やデザインはインフルエンサーの裁量に任せる

 

企業側の意図が反映されていなければマーケティング効果は薄れてしまうため、事前の認識合わせは非常に重要になります。事前に「どういった目的で」行うプロモーションなのか、「どんな効果が得られたら成功なのか」等をすり合わせることは重要です。目的やコンバーションポイントを明確にしておくことで、インフルエンサーもそれに沿った投稿を心掛ける事が出来ます。

✔プロモーションの目的
✔KGIやKPI、CVポイントのすり合わせ
✔どういった価値を認知して欲しいのか
✔ステマ規制法に関わる掲載ルールの共有

代表的な失敗例として、自社の良いところを伝えてもらおうと、演出の細かい要求、投稿文字や構成を宿泊施設側が一語一句指定してしまうことが挙げられます。

インフルエンサー活用の最大のメリットは冒頭でもお伝えした通り、「顧客目線の自然なクチコミ」です。その為、広告色がなく、見る人にとって楽しいコンテンツとして成立している必要があります。
インフルエンサーの多くは創造性が高く、SNSでの魅せ方や投稿を伸ばすためのテクニックを熟知しています。宿泊施設側の目的や意図は明確に伝え、制作自体はインフルエンサーの感性や独自性を尊重し、ある程度おまかせしてしまうほうが賢明です。

宿泊業界のインフルエンサーマーケティングで手ごたえを感じない理由

 

― 効果はどこでみるのが正解?

実際にインフルエンサーを活用してみたが、「思っていたより効果がみられない」「あまり宿泊予約に繋がっているとは感じない」という声をよく聞きます。
効果が薄いと感じる理由のひとつとして、ほとんどの宿泊施設がインフルエンサーマーケティングのCVポイントを「予約」に置いていることが挙げられます。

そもそも、インフルエンサーマーケティングは“ECサイトのような衝動買い”には強いですが、宿泊予約のような“計画が必要な購買”に対する即効性は弱い傾向があります。理由は簡単で、宿泊予約に至るまでのプロセスが長いからです。

 

上図のように、洋服を買う場合と宿泊予約をする場合とでは、「消費者が目的を適えるまでに必要となる時間と情報数」が圧倒的に違います。お金があれば、気に入った服を買って着ることはすぐに叶いますが、宿泊は交通手段や一緒に行く人との予算感すり合わせ、スケジュール調整などの多くの工程が必要なため、すぐに叶えることはできません。

では、どう活用するのが一番いいのでしょうか。
ひとつの方法として、予約へのCVとして活用するのではなく、リード獲得(見込み客リスト化)をCVとして活用することが挙げられます。
例えば、登録者への定期的な顧客育成をしやすい「LINE登録」や「メルマガ登録」などへの誘導です。
インフルエンサーの効果を予約数で見るのではなく、見込み客の獲得数にしてみてください。

 

CVポイントの一例
インフルエンサーのタイアップ投稿⇒キャンペーン併用でLINE登録者数アップ(CV)⇒LINEの定期配信で顧客育成⇒予約行動

 

「投稿への反応数(保存数など)」「自社HPへの遷移数」を指標にすることも分かりやすいですが、販促アプローチを行いやすいように、こちらの土俵に引っ張り込むという意味でも、リード獲得数を指標にすることは有益です。
少し遠回りのようにも感じますが、予約行動プロセスの長さを考えると、最終的な予約数UPのための最短ルートとも言えます。

 

インフルエンサーマーケティングの料金相場

 

 インフルエンサーマーケティングの依頼にかかる費用・料金は、1回のSNS投稿でそのインフルエンサーが抱える「フォロワー数 × 2~4円」が相場と言われています。

宿泊施設の場合、日帰りと宿泊の場合で費用も変わってくるため、あらかじめ施策イメージをある程度固めた上で予算編成する必要があります。
また、代表的なInstagramフィード投稿のほかに、ストーリーズ投稿(ECサイトへのURLつき)
ライブ配信による商品セールス、新商品の監修・コラボ、ブログ記事執筆、動画作成など、インフルエンサーマーケティング施策の内容によって費用は変動します。

中には、宿泊費を無償提供することで体験レビューを自由意思で書いていただくという手法を取っている宿泊施設もあります。

知らないでは済まされない「ステマ規制」インフルエンサー起用時の注意点

 

2023年10月から、景品表示法において、ステルスマーケティング(いわゆるステマ)*は違法とされるようになりました。

*ステルスマーケティングとは消費者に特定の商品やサービスについて、宣伝と気づかれないように商品を宣伝、又は商品に関するクチコミを発信する行為のこと

 

規制の対象となるのは広告主である宿泊施設側になり、実際に投稿するインフルエンサー側は、この法律の対象外とされています。
従って、企業はステルスマーケティングの法的制約に十分な知識を有し、依頼した第三者の投稿について慎重に確認する必要があります。

企業が影響力の大きいインフルエンサーに対して、あたかも自分が見つけて自分が選んで宿泊しているかのように商品やサービスを紹介してほしいと依頼するケースがあります。このようなケースにおいて、インフルエンサーが広告であることを表示せずに宿泊施設での滞在レポートやサービスを紹介する投稿を行った場合は、ステマに該当します。不明瞭な表示や短時間のみの表示を行ったに過ぎない場合などでも、一般消費者には判別困難だとして、ステマ規制に抵触するおそれがあるので十分ご注意ください。

 

不明瞭な表示の該当例
・動画の中で非常に短時間のみ宿泊施設のPR案件である旨を表示する
・一般消費者がPR投稿だと認識できない文言を使用している(外国語や暗号)
・一般消費者がPR投稿だと認識しにくい形で表示する(長文・非常に小さい文字、薄い色、大量のハッシュタグ#に紛れ込ませる)
・宿泊施設PR投稿である旨を部分的にしか表示していない

 

 

受発注の関係性であることを投稿内で明示

 

第三者があくまでも自主的にクチコミやレビューなどの情報を発信することは広告とはなりません。
商品が無償提供されるなどしても、投稿自体が必須ではなく、内容が投稿者の自主的な意思に基づけば規制の対象外となります。とはいえ、
インフルエンサーを活用するケースにおいては必ず以下のような情報を明瞭に表示してもらうように心がけましょう。

広告である旨を明瞭に表示する
Instagramの場合はタイアップ投稿機能を使って投稿
「#PR」「#広告」「#宣伝」「#企業名」「#プロモーション」といったハッシュタグをわかりやすくつける
画像内や動画内のテキストなどでもわかりやすく記載する。

 

 

さいごに

 

インフルエンサーの起用は、CVポイントをしっかりと押さえて規則を守って取り組めば、まだまだSNSマーケティングでの効果的な手法だといえます。宿泊施設側は、責任を持って投稿内容を確認し、戦略的にアプローチする事が成功の鍵です。限りなく消費者に近い存在だからこそ、彼らの意見は今後のサービス向上や設備投資のヒントになることもあります。

プロモーション施策のひとつとして、是非ご検討ください。

 

 


 

宿研では、宿泊施設様のInstagram運用のお手伝いもしております。
日々の運用や、インフルエンサーマーケティングに
ご興味がある方は、お気軽にご相談ください。

 

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この記事を書いた人

はしもとかな

 

2015年入社後、コンサルティング営業室のコンサルタントとして全国のホテル・旅館のWEB集客支援を行う。現在は、宿泊業界のWEBマーケティングを支援するため、宿研通信の運営を担う。施設様のお悩みに寄り添った有益な情報発信を行うべく、日々業界のトレンドや情報の収集・分析を行っている。

 

 

 

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