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集客の匠に訊く:記憶に残す空間の遊び心

匠が、とっておきの集客術を教えます 集客の匠に訊く

集客の匠に、お客さまを呼ぶポイントを訊くこのコーナー。
4ヶ月連続して“空間の匠”が宿屋の空間デザインについてお話いたします。
2回目のテーマは「空間を変える一工夫」についてです。

記憶に残す空間の遊び心

皆さま、こんにちは。
“演出の匠”の田畑明子です。

先月から、皆さまに“おもてなしの空間デザイン”を
テーマに演出のポイントをご紹介させていただいております。

初回は、空間をデザインするにあたって
一番欠かせない“考え方”のお話をさせていただきました。
今回は、空間を変えるための
“ほんの少しの工夫”を皆さまにご紹介いたします。

空間に変化を与える
ほんの小さな工夫

今の宿屋の印象を変えたい。全ての家具を新しくしたい。
そう考える宿屋の経営者の方々は決して少なくないと思います。

しかし現実問題、設備投資にかけられる資金はそんなに多くありません。
それは、宿屋に限らず多くの方が悩んでいる問題なのです。

そこで今回ご紹介するのは、
自分の施設をゆっくりと違う角度で見ると
実はそんなにお金をかけなくても、
ほんの少しの工夫で宿屋に来てくださるお客さまの過ごし方に
楽しい選択肢を増やすことができるということ。

例えば、食事の演出方法は比較的どの施設の方も簡単に手を加えることができ、
お客さまの印象もすぐに変えることができます。

普段なら和食には和のお皿、洋食には洋のお皿を使うところを
あえて逆にしてみたり、ただ料理を出すのでなく、
その料理に使われている器がどのようにして選ばれたのか、
なぜこの料理にこの器なのかをお話しするだけでも
お客さまが抱く印象は大きく変わってきます。

また、もともと掛けてあった写真や絵の場所を変えてみたり、
照明の当て方や角度を変えるだけでも
全く印象が違うものになります。

宿屋は昔ながらの考えに固執してしまう傾向にあります。
宿屋に限らず、昔の伝統を大切にされる施設の方は
そうなのかもしれません。

しかし、何を表現するにも
そこにはお客さまに楽しんでいただくための行動変革である
“遊び心”が必要。

それこそがお客さまの“感動”に繋がるのです。

宿屋の魅力を活かすこと
宿屋の記憶を残すこと

現代は旅行のスタイルが多様化している時代。
それに対して、今ある宿泊施設は、
そのほとんどが画一的な空間づくりとなっていて、
どちらかというと宿屋の方がお客さまの過ごし方を決めている部分が大きいといえます。

それだと今の時代の人々にとって宿屋とは
心を安らげる居場所ではなく
ただ窮屈に感じるところになってしまいますよね。

そのような問題に対して、これから宿屋の方々は
お客さまの過ごし方を解放してあげられるような
小さな工夫、心遣いが必要なのではないでしょうか。

「新しい」=「安らぎ」ではありません。
「お金をかける」=「おもてなし」でもありません。

人々が空間に癒しを求めるこんな時代だからこそ、
「古さ」を見直し、良いところは残して、費用をかけずに
変化させるという考え方が必要なのではないでしょうか。

「コミュニケーションデザイン」=「おもてなし」の大切さ。

それこそが宿屋の魅力を活かすことになり、
人々の記憶に宿屋を残すことになるのです。


プロフィール

田畑 明子 たばた あきこ

東京出身。グラフィックデザイナーとして企業のPR・企画制作などの業務に携わる。現在主に生活空間の演出からテーブルコーディネートをはじめ、生活雑貨のコーディネーションの提案。ギャラリーなどでその提案展及び企画プロデュース。雑誌掲載、テレビ出演等多数。

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