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集客の匠に訊く:満足とクチコミが 生む善循環

集客の匠に、お客さまを呼ぶポイントを訊くこのコーナー。
今回は価値創造の匠が、
宿泊施設のよいクチコミが生む集客の循環についてお教えします。

よいクチコミが生む集客の循環

お客さまに情報を与えることが、
良いクチコミを生む

こんにちは、“価値創造の匠”小阪裕司です。
前回は、施設を「なんとなくいいな」と思ってもらうために必要な総合力の話をしました。

お客さまに「なんとなくいいな」と思ってもらえれば、
施設に滞在中の満足度は高いものが得られるでしょう。
しかし、「なんとなくいいな」という満足度は、
よいクチコミには繋がっていきにくいという側面を持っています。

新規のお客さまが施設を選ぶときにも見る、重要な集客のツールであるクチコミ。
良い言葉をお客さまにいただくためには、どうしたらよいのでしょうか?

私が思うに、情報を与えることが、よいクチコミをもらう近道です。

もちろん、大前提として施設でよい体験をしていただくということはありますが、
体験はなかなか言葉にはしにくいものです。
お客さまはプロのエッセイストではないので、
体験を語ってもらうためには施設から情報を提供する必要があります。

お料理の場合であれば、ただ「美味しかった」と思っていただくだけでは
クチコミには繋がっていかないでしょう。

例えば
「お料理に使っている食材はすべて自家栽培だ」
「使っている肉は女将さんの実家の農家から取り寄せている」
「魚は毎朝、主人が築地に行ってその日1番よいものを仕入れてきている」

など、お客さまの「美味しかった」という気持ちの裏付けとなるような情報があると効果的です。

私の知っているお店に、こんな飲食店があります。
そこは、店内の壁や机に敷いてあるものまで、
ありとあらゆる所に料理に関する情報が紹介されていました。
しかも、毎月内容を更新しているそうです。

なぜ、こんなにも徹底して情報を出しているのかと尋ねると、
情報を与えないとクチコミしてくれないからだと言います。

なぜ良いのか? その理由をお客さまに知っていただくことが、
評価の高いクチコミを得るためのポイントです。

また、お客さまに情報を与えることは、クチコミを得る他にもプラスの効果があります。

まず、語られながら体験すると、ユーザー満足度は自ずと高くなります。
すると、満足度が上がるので良いクチコミを得ることにつながり、
さらにそれが新規客の集客につながります。
新規のお客さまにとって、クチコミはいわば疑似体験のようなもの。
施設に行く前に、良い疑似体験ができれば必然的に行きたいのスイッチが押されるわけです。

そして、そのお客さまが施設に来て、また良いクチコミをしてくれる。
そんな循環が生まれれば集客の効率はアップします。

お客さま満足→クチコミ→新規客の獲得
良いクチコミを得て、この3つをうまく循環させられるように意識してみましょう。

それでは次回は、新規客を常連客へつなげるための心得をご紹介します。

プロフィール

小阪 裕司 こさか ゆうじ

オラクルひと・しくみ研究所代表博士(情報学)
作家、コラムニスト、講演・セミナー講師、企業サポートの会主宰、行政とのジョイントプログラム、学術研究、ラジオ番組パーソナリティなどの活動を通じて、これからのビジネススタイルとその具体的実践法を語り続ける。山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業にて実務を経験、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。また、人の「感性」と「行動」を軸にしたビジネスマネジメント理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。「ビールが正価で売れる酒屋」「どこでも買える商品の売上が50倍に伸びたスーパー」など、数千件の感性価値創造実例を生み出している。日本感性工学会理事、九州大学客員教授・静岡大学客員教授・中部大学客員教授。近年、飛び級で工学院大学大学院工学研究科情報学専攻博士後期課程を修了。著書は、最新刊『お客さまの「特別」になる方法』(角川書店)はじめ、新書・文庫化・海外出版含め計30冊。実践会・事例公開等の詳細 / 講演・各種プログラム等の詳細 / 小阪裕司ツイッター @kosakayuji2010

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