顧客満足度1位の企業から学ぶ 最終シリーズ3
顧客満足度6年連続1位『阪急百貨店』~ 多彩なオンリーワン戦略 ~
2022. 11. 15
最終更新 2024. 06. 18
目次
前々回のスターバックス編、前回のセイコーマート編に続き、サービス産業生産性協議会調査※の顧客満足度1位に選ばれた企業は「なぜ選ばれ、満足度が高いのか」をご紹介します。
最終シリーズ第3回は「百貨店部門1位」大阪・兵庫を中心に展開している『阪急百貨店』です。
阪急百貨店は同調査の百貨店部門において顧客満足度6年連続1位を獲得しました。
さらに今回の調査では以下の通り、全ての指標で1位獲得という文句なしの「顧客満足度No1.百貨店」の地位を築いています。
引用元:サービス産業生産性協議会
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/9a459d67f3cf151d4779b9fac0305fbb.pdf
関西以外の方からするとあまり馴染みのない百貨店かと思われますが、関西圏では唯一無二のブランドとして長年愛されています。
この顧客満足度No.1の裏にあるのは「オンリーワン戦略」今回、その戦略を支える重要な2つの仕掛けをご紹介。
阪急百貨店の旗艦店である「阪急うめだ本店」の人気の秘密に迫りたいと思います。
※サービス産業生産性協議会が7月27日、2万5167人を対象に実施した「2022年 日本版顧客満足度指数」の調査結果。
この調査は毎年30以上の各業種、約400社の企業を対象に行われています。
(出典:https://www.jpc-net.jp/research/detail/005937.html)
百貨店部門1位:阪急百貨店
百貨店市場の流れ
はじめに、国内の百貨店市場規模は消費税率5%→8%への引き上げに伴う駆け込み需要のあった
2014年をピークに年々減少しています。
その背景には、長年の景気低迷による消費者の節約・低価格志向の高まりや、専門店・郊外ショッピングセンター、ネット通販の台頭など小売業界を取り巻く環境の変化があります。
さらに、そうした外的要因に加え、富裕層だけを意識した品揃えや、出店店舗に売場を任せすぎたことによる「売場の同質化」を招いた百貨店側にも原因があったと言われています。
もはや、商品を置いているだけでは、お客様は来ない。百貨店市場は新たな販売戦略の構築が必要不可欠となっています。このことは宿泊業界にも当てはまることだと思います。
消費者は阪急うめだ本店の何に満足感を得ているのか
阪急うめだ本店に訪れた消費者は、どのような満足感を得ているのかを知るために、阪急うめだ本店のGoogle Mapのクチコミを調べ、頻繁に書き込まれている「満足感に関するキーワード」を書き出してみました。
筆者がランダムに選んだ他社の百貨店5店舗のクチコミ内容が、地下売場にある店舗の食品購入について「買えてよかった」「美味しかった」などの購入に関する満足感を得た書き込みが多いのに対し、阪急百貨店では上記のような「限定モノ」「体験ゴト」に関する満足感の多さが目につきました。
※阪急うめだ本店と他社百貨店との満足ポイントの違いがGoogleマップのクチコミをみると
はっきりと分かりますので、お時間ある際に是非ご覧ください。
顧客満足度を上げるための戦略
阪急うめだ本店が、顧客満足度を高めるためにとっている戦略は「オンリーワン戦略」です。
このオンリーワン戦略を支える仕掛けとして以下の2点があります。
この2点を掛け合わせることで「購入できたことの満足」ではなく、阪急うめだ本店で過ごしてもらう「時間そのものに満足」してもらう狙いがあります。
オンリーワン戦略を支える重要な 2つの仕掛け
①既存イメージを覆した独自商品の開発
商品の「オンリーワン戦略」として、他業種企業とタッグを組み、誰もが知っているあの商品を誰も知らない商品へと変化させることをしています。
一例として以下のような商品があります。
(引用元:Hankyu FOOD公式サイト https://web.hh-online.jp/hankyu-food/)
主に食品関係で多いこのオンリーワン化は既存の商品イメージを覆し、他では手に入らない“ワクワク商品”を開発することで消費者は他では買えないものを手に入れる満足感が得られます。
これは贈り物で特に喜ばれやすく、贈る側・贈られる側、双方の満足度が高まります。
「限定モノ」に関するクチコミが多い理由はこのためです。
全く新しいモノを作るのではなく、既存のモノを変化させるという手法。
日頃、プランや料理、サービス、企画など新しいアイディアの創造に頭を悩ませている施設担当者様は、全く新しいモノ・コト、手法を創造しようと考えるのではなく、「既存と既存の新しい組み合わせを考えてみる」「一つの要素を変化させてみる」という発想が、新たなアイディアを考える上でのヒントになります。
②さまざまな客層と関わる企画・イベントの実施
阪急うめだ本店では、さまざまなイベント・企画を絶え間なく開催することで幅広い顧客層にアプローチし、顧客接点数の増加を図っています。
例えば、季節のイベントだけでなく、さまざまな嗜好に向けたイベントや、年齢や家族構成を切り口にしたイベントなど、多種多様なイベントが開催されています。
筆者も時々阪急うめだ本店に足を運びますが、常に何らかのイベントが開催されており、これまで関心が低かった分野でもついつい足が止まり十分に楽しめます。
(引用元:阪急うめだ本店 https://www.hankyu-dept.co.jp/honten/)
また、阪急うめだ本店は絶え間なくイベント・企画を開催するために自社主催だけでなく、他業種の企業を呼びイベントを主催してもらうこともよくあります。
例えば、エルメスには、本場の職人さんたちを連れてきてもらい、バッグなどがどうやって作られているのか、手仕事の技をお客さまに披露するなど、購入する人だけでなく、購入するつもりがない人でもこういった貴重な体験機会に満足感を得ることができます。
(引用元:阪急うめだ本店 https://www.hankyu-dept.co.jp/honten/)
阪急うめだ本店のまとめ
このように阪急うめだ本店は、顧客を楽しませるための『商品づくり』と『体験機会』を絶えず考え、それぞれの中に常に『オンリーワン』が取り入れられています。
“ここに来れば何か新しい「ヒト」「モノ」「コト」と出会える”
そんなワクワク感を創造し、それらと出会えた喜びが満足感に繋がっているといえるでしょう。
どこかの真似をするのではなく、自社だけで完結するサービスを提供するのでもない。
他の業種とも積極的に関り、新たな商品開発やサービス提供に取り組む、いわゆる“ オープンイノベーション ”です。
これには、オンリーワンを絶えず実現するための戦略だけでなく、幅広い嗜好と関わることでたくさんの人に興味をもって足を運ばせる“接点機会を増やすマーケティング戦略“も隠れています。
3シリーズを通して見えてきた「一貫性」の重要性
これまで3回のシリーズでご紹介させていただいた「スターバックス」「セイコーマート」「阪急百貨店」。
この3つの企業に共通していることはビジネスの一貫性です。
それぞれの企業は、自社のサービスを通して顧客に何を届けるのかを明確化し、この1点をひたすらに磨き続け、さらにその1点を決して落としたりはしていません。
スターバックスコーヒーは、家でも職場でもない憩える第3の場所を。
セイコーマートは、地域に住む人にとっての便利さを。
阪急百貨店は、新しい刺激、ワクワクを。
これらを常に意識した日々の活動や判断の積み重ねがやがて他社では簡単にまねできない差となり、同時にそれぞれの企業でしか体験できない顧客満足度につながっています。こういった他社との違いを時間をかけ積み重ねていくことを“差積化”と呼びます。この差積化された状態は、単純な他社との違い“差別化”と比べ非常に競争優位性が長く続き、市場における強固な地位を築くことができる要素です。
この差積化への第一歩は、自社のコンセプトを持つことです。そして、そのコンセプトを従業員含めビジネスに関わる全員が理解し動くこと。さらに、あらゆる判断基準は権限者が行うのではなく、コンセプトによって判断すること。この徹底された活動が一貫性を生み出し、顧客満足度を高めやすくなります。
是非、みなさんの施設でも改めてコンセプトを見つめ直してはいかがでしょうか。
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