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<2023年1月~4物価動向>加速する値上げ!~旅館・ホテルの失敗しない値上げ方法とは~


昨年7月こちらの宿研通信にて取り上げました「ホテル・旅館業に関わる今後の物価上昇」について、今回はその続報として現時点(2023年1月中旬)で分かっている2023年の値上げ動向と、原価上昇分を販売価格に転嫁する際に参考にしたい賢い値上げの方法をご紹介します。

※2023年夏・秋の最新物価動向と値上げ方法の具体的な方法はコチラの記事をご覧ください。

目次

1.2023年4月までの値上げ動向
2.値上げされる品目とは
3.2023年4までの動向まとめ
4.上手な値上げの方法
5.最後に

 

2023年4月までの値上げ動向


2023年早々、定期的に物価上昇に関する調査を実施している帝国データバンクから今後の食品関連の値上げに関し、驚くべき調査データが発表されました。要約すると以下の通りです。

 

2023年2月は値上げされる品目がとても多い(昨年10月に次ぐ過去2番目の多さ
2023年4月までの価格上昇率の平均は 18 %2022年通年の値上げ率よりも4%高い)


※出典元:帝国データバンク「国内食品主要105社」価格改定動向調査

 このように4月までは昨年に引き続き食品価格の高騰が確実視されています。
さらに、価格上昇率は昨年よりも平均的に高くなる見込みです。
各メーカーの食品値上げに対応するために、もう一度、販売価格や提供量
の検討を視野に入れる必要がありそうです。


※出典元:帝国データバンク「国内食品主要105社」価格改定動向調査

 

 

 

値上げされる品目とは?


では、具体的に何が値上げされるのでしょうか。 

● 2023年からの値上げラッシュで最も多いのは加工食品。一部アルコール類も

あらゆる飲食店で使用されているしょうゆやケチャップなどのベーシックな調味料や、 輸入酒、加工食品の値上がりが中心となる見込みです。他には、冷凍食品や小麦製品、水産缶詰といった品目での値上げも見受けられます。


※参考元:帝国データバンク「国内食品主要105社」価格改定動向調査ほか

 そして、気になるのがアルコール飲料関連。
サントリー(株)は、輸入酒(ウイスキー・リキュール・スピリッツ・焼酎等)の価格について、2023年3月1日(水)出荷分から価格改定を実施することを公表しています。
また、キリンホールディングス(株)は輸入洋酒、RTD、樽詰リキュールを2023年4月1日(土)納品分から値上げ、アサヒビール(株)もワインや輸入洋酒、シードルなどを2023年4月1日(土)出荷分から値上げすることをそれぞれ公表しています。具体的な商品名は各社の公式HPをご覧ください。

※サントリー公式HP:https://www.suntory.co.jp/news/article/14281.html
※キリンホールディングス公式HP:https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2022/1130_01.html
※アサヒビール株式会社公式HP:https://www.asahibeer.co.jp/news/2022/1101_2.html

 

 電気料金も値上げ。4月以降は政府の負担軽減策を超える値上げとなる見込み

政府の電気料金補助政策により、2023年1⽉以降⼀時的に電気料⾦は下がりますが、値上げをする電力会社※1の場合、4⽉以降は政府補助※2の値引き額を上回る値上げとなり、昨年12⽉の電気代よりも⾼くなる見込みです。 

※1値上げをする電力会社:値上げを計画中の電気会社各社は来年4月からの電気料金を平均で30~40%引き上げることを経済産業省に申請中。(詳細:東北電力:32.94%、北陸電力:45.84%、中国電力:31.33%、四国電力:28.08%、沖縄電力:43.81%の値上げを申請中)
※2政府補助:今年1月から8月分までは1kWh当たり家庭向けは7円、企業向けは3.5円、9月分以降は1kWh当たり家庭向けは3.5円、企業向けは1.8円引き下げるとしています。 1kWh=洗濯機(洗濯時のみ)約2時間半使用相当 

 

 

2023年4月までの動向まとめ


2023年2月に値上げの大きな波がくる。(昨年10月に次ぐ過去2番目の品目の多さ)
2023年4月までの平均値上げ率は18%で昨年よりも高い。(2022年通年の値上げ率よりも4%高い)
値上げが最も多いのは加工食品(3,897品目で全体の半数を占める)
4月までは電気料金は一時的に下がるが、4月以降はほとんどの地域で高くなる見込み。

 

▼そのほか宿泊業に関係する物価動向として以下のこともあります。

原油の取引価格は落ち着いてきていることから、直近の燃料費等の急激な価格上昇は予想されていない。(ただし、来年度の原油価格は昨年度の平均価格が反映されることから、4月以降は若干の高値が予想されている)
これまで物価上昇が比較的穏やかであった家電製品もこの冬から値上げとなる。

 

 

上手な値上げの方法


さて、少なくとも2023年4月までは引き続き原材料費の高騰がさらに進むことが明白となった今、
影響を最も受けると言われているサービス業、なかでも宿泊業は再び宿泊料金への価格転嫁が必須となるでしょう。

値上げをする際の1番の懸念点は「顧客が離反するのではないか?」ということがあります。
当然ですが値上げをすると、顧客数が減少する可能性があります。

では、価格転嫁(値上げ)する際に上手な値上げの方法はあるのでしょうか。
宿泊業界だけでなく、他業界でも実践されている上手な値上げ方法を簡単にご紹介します。

 

上手な値上げ⇒顧客がどう感じるか、どう行動するのかを考え目線を長くもち実施

① 商品・サービスを再設計する


単純に値上げをするのではなく、商品やサービスの設計を新しくする方法があります。
例えば、サービス、商品の一部を新しくする。もしくは、新しい組み合わせをつくり「数」を変えるなど、商品やサービスを再設計することが有効になります。飲み放題の選べるドリンクの数を増やすなど、コストが同じくらいの商品で選択できる商品数を増やすことも効果的です。

価格変化があった商品を購入する際に、人は無意識のうちに以前と比較しようとします。
単純な値上げだけでは割高感が感じられ値上げに対して納得できず、購入されない可能性があります。そのため、顧客が比較しづらい再設計ということがポイントになります。
 

 

② 適切なタイミングで実施し、効果を見定める


値上げをする適切なタイミングとはどのような時期を指すのでしょうか?

1つのタイミングとして、自社の稼働率が高くなった段階で実施する方法があります。

稼働率がある程度高くなったタイミングで、顧客数が減少することを見込んで値上げを実施します。
その際、値上げによる粗利額の上昇と売上高減少の影響をどの程度まで許容できるのかをしっかりと見定め、値上げの内容を継続させるのか、変更するのか判断します。

 

③ 納得すべき理由と一緒に事前説明を行う


既存顧客(リピーター)に対しては、値上げをしますとは伝えにくいものです。

このような場合は期間を空け、事前にしっかりと伝えるということが重要です。

シンプルに「原材料費が値上がりしたから」という説明も出来ますが、「お料理のリニューアルに伴い、今後は○○を提供いたします」といった付加価値を説明したり、「●●月から値上げ予定です」など少し期間に余裕を持つことで納得を得られやすい傾向があります。

さらに詳細の値上げ方法、2023年5月以降の物価情報はこちらの記事をご覧ください

 

さいごに


自社の都合が優先された値上げとその説明だけでは、単に値上げに関するネガティブな情報の発信となるだけでなく、価格と対価が釣り合わなくなってしまうケースがあります。それを防ぐためにも、
しっかりと利益が残る価格設定を行ったうえで、顧客に納得感をもってもらうサービスの再設計と事前の情報発信を行うことが成功する値上げのポイントです。

また、自社HPや予約サイトに掲載されている写真、テキストも見直し、価格に似合う価値であること(過剰な期待を持たせないことも重要)を認識してもらうことも大切です。
この物価上昇分を価格転嫁する際に「第三者の意見が聞きたい」、「アイディアがほしい」などの相談事がありましたらお気軽に弊社までご連絡下さい。私たち宿研が一緒に考えます!

 

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