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近年注目の旅行・観光トレンド『ウェルネスツーリズム』とは?参考にしたい国内外の宿泊施設事例を紹介

近年の旅行・観光トレンドに「ウェルネスツーリズム」があります。
旅先で「健康と幸福」を追求するこの新たな旅行スタイルは、インバウンドをはじめ国内の若者世代でも需要が広まりつつあります。
そこで今回は、今注目されているウェルネスツーリズムの概要や特徴を分かりやすく解説し、実際に取り組みが行われている国内外の宿泊施設をご紹介します。

————-もくじ————————————————-
1.ウェルネスツーリズムとは
 ウェルネスツーリズムの市場規模
 ウェルネスツーリズムの要素
2.ウェルネス・ツーリズムの取り組みはインバウンド集客の鍵
3.ホテル・旅館のウェルネスツーリズムの取り組み事例
4.さいごに
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ウェルネスツーリズムとは


「ウェルネス」とは、健康を広義的に捉えた概念です。身体的な側面だけでなく心理的な側面にも着目し、豊かな人生に向けて働きかける行動全般を指します。ウェルネスツーリズムとは、この「ウェルネス」を提供する旅の総称です。

よく似た言葉で、ヘルスツーリズムというものがあります。これは身体的な側面から健康を整える旅のことです。さまざまな療法や医療サービスを通し、身体の健康を維持・向上させることを目的としています。一方、ウェルネスツーリズムとは、健康を多角的な面から捉え、主に精神面での健康を整える旅を指します。

ウェルネスツーリズムの市場規模

 

人生100年時代といわれる今、「できるだけ長く心身ともに健康に過ごしたい」という生活者のニーズが高まっています。さらに新型コロナウイルスの影響も相まって、健康・ウェルネス市場は拡大の一途にあります。
Global Wellness Instituteの調査によると、世界のウェルネスツーリズム市場はコロナ直前の2019年時点で7,200億ドル(約98兆円)で、世界最大のウェルネスツーリズム国であるアメリカは世界市場の37%を占めています。
また、特筆すべきはウェルネスツーリズム旅行者の旅費の高さです。彼らは国内旅行の場合、通常の旅行者の2.8倍、海外旅行の場合でも1.5倍も多くの費用をかけています。

 

ウェルネスツーリズムの要素


では、実際にウェルネスツーリズムとして旅行者に喜ばれる企画にはどんなものがあるのでしょうか?その一部をご紹介します。

ヨガ

「ヨガ」という言葉には「調和」「統一」「バランス」という意味があります。現代ではエクササイズの観点で注目されがちですが、もともとは瞑想や幸せに生きるための哲学が起源です。ヨガには心身を調和させる効果があるため、続けることで心も鍛えられます。健康で充実した生活を目指すのに適した活動として最も知名度が高く人気です。

 

スパ

「スパ」には「水の力で治癒する」という語源があります。そのため、スパは日本の温泉療法に似ていると言っていいでしょう。現在は、入浴に加え、サウナ・アロマ・ヨガ・フィットネス・マッサージなど健康促進や癒し効果のある施設やサービスを総省して「スパ」と呼びます。一度にさまざまな角度から心身を癒したいユーザーに人気です。

 

瞑想

瞑想には、自律神経を整える効果があります。活動時の交感神経・リラックス時の副交感神経のバランスが整うため、精神の安定が可能です。交感神経を刺激するものが多く、バランスを崩して不調をきたす現代では、瞑想が適した活動として浸透しつつあります。

 

フィットネス

フィットネスは、健康の維持・促進のために行う運動のことです。筋力の強化や心肺機能の向上など身体的な効果だけでなく、病気の予防やストレス解消も期待できます。フィットネスはヨガ・ピラティス・エアロビクス・筋力トレーニング・ストレッチなどさまざまなものが該当します。筋力をつけることで基礎代謝を上げ、総合的に健康でいたいユーザーにとって関心の高いものであるといえます。

 

ヘルシー食

ヘルシー食とは、健康に配慮したメニューのことを指します。主食・主菜・副菜が揃ったバランスのいい内容の食事を指します。カロリーなども計算されているため、ダイエットをはじめ、高血圧・糖尿病・痛風など、さまざまな症状に効果があります。また、ひと口ひと口をゆっくり味わうことで心が穏やかになり、摂取量の軽減にも繋がります。「食事」は日々の生活から切り離せないため、ウェルネスツーリズムでもよく取り入れられています。

レクリエーション

レクリエーションを行うことで、身体機能の向上や脳の活性化が期待できます。また、レクリエーションを通して他者とのコミュニケーションも可能です。これらの観点から、高齢者施設でも積極的に取り入れられています。具体的な内容は身体を使うゲームやクイズ、創作活動などです。楽しいひとときを過ごすことで心身共に健康になり、豊かな生活を送れます。


交流

ウェルネスツーリズムでは、旅先での現地の人々との交流も大切にされています。他者とコミュニケーションをとることで新たな出会いや繋がりが生まれるため、そのきっかけ作りです。人との触れ合いは生きがいを作る要因にもなり、新たな人生の目標ができます。

…………


必ずしも上記のことに取り組む必要があるかというとそうではなく、あくまでも旅行者の心の健康を目的とするものであることが大切です。今の状態からひと工夫するだけで旅行者の心の健康に寄与できることもありますので、是非ご自身の身の回りでできることはないかご検討ください。

 

ウェルネス・ツーリズムの取り組みはインバウンド集客の鍵


日本の宿泊施設が「ウェルネスツーリズム」を打ち出すにあたって、意識すべきターゲットは外国人観光客だといえます。

インバウンドの集客への可能性


ウェルネスツーリズムの概念のひとつに「地域の資源に触れ、新しい発見と自己開発ができる旅」という目的もあるため、インバウンド誘致に有効であると考えられます。
さらに日本は、世界遺産にもなったヘルシーな和食、温泉やサウナ、座禅など自国ならではのウェルネスなコンテンツが揃っており、ウェルネスツーリズムに適した国と言えます。
観光庁が発表している「訪日外国人の消費動向 平成29年4-6月期報告書」によると訪日外国人の4人に1人が「温泉に入浴すること」は楽しみにしていると回答しており、ヘルスケア施設の観点で見ても温泉はインバウンド向け観光資源として活用可能であることがわかります。

マーケティングPOINT
✓海外でもヘルシーなイメージが強い和食
✓スパ・ヘルスケア施設として代用が可能な温泉やサウナ

 

 

 

 

ホテル・旅館のウェルネスツーリズムの取り組み事例


さいごに、ホテル・旅館のウェルネスツーリズムの取り組み事例について、具体的にご紹介します。
是非、各施設の「ウェルネスを意識したPR手法」の視点もあわせて確認してみてください。

 

┃山梨県:大月ロハス村の雲水舎


引用:
http://lohasnomori.com/unsuisha.html


「大月ロハス村 雲水舎」は、1万坪の広大な大自然の中で、ウェルネスツーリズムを体験を提供しています。宿泊をしながら腸内環境の改善・デトックス効果が期待できるファスティング(断食)や、自分と向き合う精神修養(ヨガや瞑想)の体験が可能です。
僧侶のワークショップ、禅の講話会やお茶会も実施しています。宿泊施設内で参加できるのは珍しく、この施設ならではとなっています。
築50年の日本家屋が改築された宿泊施設には、本格的な茶室や薪ストーブが完備されています。富士山の檜を使用した檜風呂や富士山マグマの岩盤浴もあり、疲れた身体を癒せると大変人気のある施設です。

 

┃東京: do‐mo forest 自然人村



引用:https://shizenjin-mura.com/stay/

「do‐mo forest 自然人村」では、地元・多摩産の木材を使用した縦型のバレルサウナを提供しています。体を温めた後の水風呂は、目の前の清流や滝壺でも代用でき、風の音、鳥や虫の鳴き声、川のせせらぎを感じながら自然の中で外気浴が出来ることを魅力として打ち出しています。解放感抜群のアウトドアサウナは、日本人にも大変人気で、その土地の資源を最大に活かしている点も参考にしたいポイントです。

 

┃三重県:アマネム


引用:https://www.aman.com/ja-jp/resorts/amanemu/wellness/wellness-immersions

「アマネム」は日本旅館に息づく伝統を取り入れたリゾートとして、都会の喧騒から離れた豊かな自然環境、日本ならではの温泉やこの地域の豊かな食文化を楽しめる宿泊施設です。
ウェルネスのプログラムが全4種類用意されており、お客様の目標や健康状態や合ったプランを選択できるようになっています。

✓心の安らぎを保ちたい人
✓健康な生活を追求したい人
✓手術や怪我からの回復を目指したい人
✓美容を強化したい人

ウェルネスコンシェルジュが、お客様へ利用可能なウェルネスの選択肢をご紹介したり、電話やEメールにて、ヘルスケアの専門家が質問に答え、お客様の要望に合ったコースの選択をアドバイスするサービス等も設けています。
 

 

┃沖縄県:星のや沖縄


引用:https://hoshinoya.com/okinawa/experience/ryukyuyojyo/

「星のや沖縄」は、沖縄の自然や文化に触れる「琉球養生」を3泊4日で体験プランを展開しています。現代のストレス社会では緊張状態が続くあまり、心身のバランスを崩す人が多くなっているという問題点に目をつけ、自分で緊張・弛緩のバランスをとるヒントを得るプログラムを提案。
滞在中に緊張と弛緩の波を何度も繰り返すスケジュールになっており、プログラムを終了する頃には、自分で緊張と弛緩のバランスをコントロールできる状態を目指します。

ウェルネスの視点だけでなく、琉球空手や琉球舞踊など、その土地ならではのプログラムが用意されているところも魅力的です。

 

┃スペイン:SHA Wellness Clinic(シャーウェルネスクリニック)

 


引用:https://shawellness.com/es


「SHA Wellness Clinic(シャーウェルネスクリニック)」は、ウェルネスツーリズムに特化した宿泊施設です。長期滞在が可能で、最大27泊28日滞在まで可能になっています。南国の雰囲気たっぷりのホテルでバスローブに着替え、自然との一体感を感じる体験を提供しています。

ウェルネスに関するプログラムが多数用意されており、ヨガ・エクササイズ・フィットネス・料理教室・美容医療・自然療法などがあります。

ホテルで提供される日本と地中海を掛け合わせたマクロビオティック料理は、栄養面が考慮された内容です。好みのタイプを選べ、通常メニューの「SHA」、ややカロリー低めの「BIOLIGHT」、最も低カロリーでヘルシーな「KUSHI」の全3種類になっています。

 

 

┃タイ:Chiva Som(チバソム)


引用:https://www.chivasom.com/


「Chiva Som(チバソム)」は、ウェルネスとリゾートを掛け合わせた宿泊施設です。徹底的にウェルネスを追求し、一人ひとりに適した滞在プログラムを作成しています。初めに専門のメディカルスタッフによるカウンセリングを行い、心身共に健康を目指す体験を提案しています。

チバソムでは、全ての顧客がプログラムに安心して取り組めるよう、さまざまなルールがあります。ビーチ以外は全て禁煙で、レストランのディナー以外ではアルコールの提供もありません。スマートフォンの使用も禁止になっており、スマホ疲れから解放されます。

スパの種類も豊富で、専門スタッフによって自分の希望に沿ったメニューを組み込めるようにして、最適なスパの体験ができるように工夫されています。

 

 

さいごに

ものや情報があふれる現代において、心身の健康に着目する「ウェルネス」へ関心・ニーズはますます高まることと思われます。特に訪日外国人旅行客数が大きく回復基調にある中、ウェルネスツーリズムの観点を宿の価値として取り入れるには絶好のチャンスとも考えられます。
ヘルスケアの観点に加え、日本の歴史や文化背景やその土地ならではの資源・文化も絡めて紹介することでストーリー性が増すでしょう。ウェルネスの視点で行うプランは連泊が多く、目的によってコースを選べることもポイントになりそうです。
ウェルネスツーリズムに興味のある施設様は、宿泊業界の取り組み事例もあわせて是非参考にしてみてください。

 

記事監修

はしもとかな

 

2015年入社後、コンサルティング営業室のコンサルタントとして全国のホテル・旅館のWEB集客支援を行う。現在は、宿泊業界のWEBマーケティングを支援するため、宿研通信の運営を担う。施設様のお悩みに寄り添った有益な情報発信を行うべく、日々業界のトレンドや情報の収集・分析を行っている。

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