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教えて!峡泉の働き方改革~シフト改善/中抜け勤務の見直し編~

従業員の働き方において頭を悩ませている担当者の方も多いのではないでしょうか。
元々、宿泊業は拘束時間が⻑く、休みが取りにくいイメージが強いですが
渓谷に佇む隠れ宿 峡泉では、仕事とプライベートの両立を推進しています。

社員が必ず休みを取れるよう定休⽇を設け、アルバイトの⼒を借りながら
残業は⽉平均20時間程度まで短縮を実現しました。
そこで今回は、従業員の働き方改革として、シフト改善に取り組み

中抜け勤務を見直した小林支配人に、そのお話を伺いました。

 

  協力:渓谷に佇む隠れ宿 峡泉 https://kyousen.com/
天龍峡に佇む隠れ宿「峡泉」。天龍峡の緑に包まれ、自然との一体感を五感で感じられる
温泉旅館。2020年度「日本の小宿10選」に選出。全8室 現在社員5名+アルバイト15名


※以下「峡泉」と略称させていただきます。

 

シフト改善を行う前の峡泉の課題

― 今回は働き方改革「シフト改善」についてお話を伺わせていただきます。
峡泉さんがシフト改善を行う前は、どのような課題があったのでしょうか。

小林支配人:全部門において中抜けシフトが主流であったため、従業員の1日あたりの拘束時間が
長かったことが課題でした。例えば、労働時間8~9時間にたいして、12~14時間拘束する日が
多かったですね。

 

― 働き方改革をしようと思った、きっかけになる出来事が何かあったのでしょうか。

小林支配人:きっかけというか、そもそも働き方改革する前提で峡泉をはじめました。
創業時、「宿の経営をビジネスとして成功させる」というテーマがありました。
宿泊業だから離職率が高いとか、給与が安いとか、人員不足だとか、悪しき慣習を
変えたかったので、一般企業と同じような雇用をしようと、チャレンジし続けています。

渓谷に佇む隠れ宿 峡泉 小林支配人

 

理想の姿と期待する効果

― シフト改善をしようと決めたときの、「理想とする姿」や「期待する効果」は
どういったものを想定されていましたか?

小林支配人:理想とした姿は【宿の従業員が「元気で」仕事ができる環境づくり】です。
期待する効果は以下の3つを想定していました。

シフト改善で期待する効果
①サービス品質の向上による顧客満足度の向上
②生産性の向上による経費削減
③離職率の抑制、定着率の改善

 


 

実際に行った対策

― 実際に行った対策を教えてください。
小林支配人:
主に、行った取り組みは以下の3つです。
①部門内で縦割りの役割分担を廃止するために、シームレス化*・マルチタスク化*のトレーニング
②いつ誰がどんな仕事をするか明確にするために、タスク・スケジュールを作成(デイリー、ウィークリー)

③中抜けに頼らないシフト、週2日連休になるシフトの作成

シームレス化*役割分担されていたサービス業務の垣根をとり除き宿の様々な業務をだれでも対応可能にすること
マルチタスク化*複数の作業を同時並行で効率的に行うこと

―業務のシームレス化・マルチタスク化は、最近よく聞くワードですよね。どんな流れで
取り組まれたのか、具体的に教えてください。
小林支配人:
以下1~3の順で取り組みました。

©渓谷に佇む隠れ宿 峡泉 業務の見える化シート

 

1 まずは、業務を「見える化」しました。
それぞれのシーンで行う作業や心がけることを書き出し、見える化することで全員が
どのシーンでも対応できるようにしました。

2 次に、トレーニング
特別なことはせず、経験値を上げるために各シーン(※上図参照)の仕事をローテーションで
行えるシフトにしました。

3 最後に、スキルや得手不得手のバラつきに対するフォローアップ
少人数なのでチームでフォローし合う体制をつくりました。

 

― 中抜けに頼らないシフト、週2日連休になるシフトにする為にどのようなシフトパターンを
考案されたのでしょうか。
小林支配人:
これは、峡泉の社員の現在のシフトパターン表です。対策前と後で比較していただくと、
分かりやすいのではないかと思います。

上記の緑の表「Before」は峡泉がオープンして間もないころのシフト例です。
シフトパターンが4タイプしかなく整理・細分化されていないので、特定の人に業務が集中して、
結果ズバ抜けて労働時間が集中してしまっていました。(主に私なのですが!笑)

下のAfterは現在利用しているシフトパターンです。パターンを9タイプに整理・細分化したことで、
「経験値を上げる為のローテーション」も組みやすくなり中抜きシフトの割合も大幅に減りました。

 

 

― とても良いですね!従業員の皆さんは、相当喜ばれたのではないでしょうか。
小林支配人:
実はそうでもないですよ。当たり前のように行っていた「中抜け」をやめようとする
動きに対して、スタッフから「なぜ?」や、慣れからくる反発などもありました。

 

たしかに・・・新しい取り組みは「忙しいのに覚えることが増える」という感覚に
なってしまいそうですね。
改革に戸惑われた従業員の意識を前向きにさせる工夫や実行されたことを
教えてください!

小林支配人:まずはスタッフ自身の意識改革から始める必要があると思い、中抜けをなくす
メリットを伝えるワークショップなど、スタッフとコミュニケーションを図り、理解を深めて
もらいました。

 

― 従業員の方々を置いてけぼりにしないこと、あたりまえのことですが、改革をスムーズに
進めるうえでは
意外と重要ポイントになりそうですね。ちなみに今回の取り組みにおいて何か、
事例や資料を参考にされましたか?
小林支配人:
はい観光庁「宿泊業の生産性向上事例集」(http://www.shukuhaku-kaizen.com/)
を参考にしました。
宿泊施設が抱えやすい課題がテーマ別で組まれていて、改善策のモデル事例を紹介してくれています。
動画もあるのでわかりやすかったです。

 


 

実行した結果

― シフト改善を実行した後、どのような結果がでましたか?
小林支配人:
期待する効果に対してはこのような結果になりました。

①サービス品質の向上による顧客満足度の向上
┗口コミが上がった(下記参照)

渓谷に佇む隠れ宿 峡泉OTA口コミ 2017年3月と2020年3月比較

 

②生産性の向上による経費削減
┗社員の残業代を抑制(⽉平均20時間以内に短縮)

③離職率の抑制、定着率の改善
┗週休二日制を導入できた。
しかし、離職率・定着率についてはシフト以外の要因もあるので、引き続き課題として
残っています・・・。

 

―従業員の皆さんの反応や感想、業務上の変化はありましたか?
小林支配人:
中抜けシフトが減り、職場にいる時間が減った分、プライベートの時間や
休息の時間が増えたので、「生活にメリハリが生まれて良かった。」というような声がスタッフから
よく聞こえました。
また、従業員それぞれの担当業務や役割が明確になったので、業務スピードも改善し、
全体の残業時間削減になりました。

 

― 旅館やホテルさんの採用活動は大変だと聞きますが、採用時のアピールポイントにも
なりそうですね。
小林支配人:
はい。一般企業であれば「あたりまえ」なことでも、特殊な働き方になる
宿泊業界では魅力的なこととして捉えていただけるのではないかと思います。

 


 

さいごに
― 大変興味深いお話、ありがとうございました。最後に、働き方改革やシフト改善で悩まれている
施設様に向けてひとことお願いします。

小林支配人:持続可能な経営を続けるためには従業員の存在がなくてはなりません。
そして、従業員の離職を防ぎ、
定着させるためには「働き方改革」が重要視されています。
分かってはいても、絶えず営業を続ける毎日の中で、新しい「働き方」を推進することは
とても大変です。
ですが、
忙しいからこそ、時には立ち止まって、じっくり向き合って考える時間
つくることも大事です。

何から手をつければ良いか分からずお困りでしたら、ぜひ一度、峡泉にお声がけください。

 


 

いかがでしたでしょうか。
今回のインタビューが少しでも皆様の働き方改革に役立てば幸いです。

 

今回見せて頂いた実際の資料は
こちらからダウンロードしてご覧いただけます。

 

タスク管理シート例.pdf

 

業務見える化シート例(Excelテンプレート)

 


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