
宿泊施設のための予約サイト(OTA)データ分析入門(じゃらん編)|じゃらんnetの特徴とデータの見方を解説
2025. 08. 20
最終更新 2025. 08. 20

「じゃらんnet」にある自社データ、最近いつご覧になりましたか?
じゃらんnetは2000年11月にサービスが開始されて以降、海外OTAが存在感を高める昨今においても、国内で高い信頼を獲得し、多くのユーザーに支持され続けています。20年以上たった今でも、国内トップのOTAとして多くの旅行者と宿泊施設をつなぐ役割を担い続けています。
そんなじゃらんnetに掲載されている宿泊施設は20,000軒以上。多数の宿泊施設が存在する中で選ばれるためには、ユーザーの予約行動やニーズを数字から読み解き、その結果をもとに良い改善策につなげていくことが大切です。
本記事では、これまでの<OTA分析の基本編><楽天トラベル編>に続き、じゃらんnet特有のデータの見方や改善のポイントを整理しました。本記事ご紹介する数字の見方や考え方が、皆さんの宿泊施設の売上アップはもちろん、スタッフの方々の知識やスキルを磨くきっかけになれば幸いです。
目次
じゃらんnetの基本情報と特徴
引用元HP:じゃらんnet公式サイト
じゃらんnetはリクルートが運営する国内有数の旅行予約プラットフォームで、宿泊予約を中心に多様な旅行サービスを展開しています。元は1990年創刊の旅行情報誌『じゃらん』から始まり、現在は紙媒体がほぼ休刊となったものの、長年にわたり幅広い世代に認知されています。
じゃらんnetの特性
じゃらんnetは、旅行予約サイトの中でも独自の特集企画や使いやすい検索機能を備えており、利用者・宿泊施設の双方にとってメリットのある仕組みが整っています。ここでは、その特徴を具体的に見ていきます。
① 特集・ランキング企画が豊富
じゃらんnetでは、年間を通じて多くの特集ページが公開されます。例えば「泊まってよかった宿ランキング」「人気温泉地ランキング」「ペットと泊まれる宿」などがあります。
宿泊施設が活用すべき視点として、これらの特集へ掲載されることで、宿泊先を探しているユーザーに自然な形でアプローチでき、集客のきっかけづくりにもつながります。
② 「使いやすさ・わかりやすさ」が支持されている
NTTコムオンラインの調査によれば、じゃらんnetは「知人におすすめしたい旅行予約サイト」で第1位に選ばれています。評価ポイントとして挙げられているのは、「予約・購入のしやすさ」や「ウェブサイトの使いやすさ・わかりやすさ」です。
じゃらんnetは、施設情報がテンプレート化され、条件に合った検索や細分化されたエリア検索ができるため、ユーザーは簡単に宿を比較・検討でき、この利便性が高く評価されていると推測されます。
引用:NTTコムオンライン NPS®ベンチマーク調査 ネット専業型旅行会社部門(2025年度)
宿泊施設にとっても、このテンプレート形式はメリットがあります。独自のデザインや大規模なページ作りは不要で、写真やテキストの差し替えだけで簡単に更新が可能。大きな負担をかけずに更新できるため、少ない人数でもページ品質や最新の状態を維持できます。
③ いま人気の検索キーワードがわかる
引用元HP:じゃらんnet公式サイト ― 宿名・キーワード検索ランキング ―
じゃらんnet内で検索されたキーワードの、検索回数が多いものをランキング形式で知ることができます。そのため検索キーワードの情報からトレンドや宿泊ニーズのヒントを得られます。
キーワードに当てはまる内容のプランがあれば、プラン名にキーワードを追加するなど、じゃらんnet内でもSEOのようなキーワード対策をとることが可能です。
このように、じゃらんnetは「テーマ性のある特集」「使いやすさ」「検索キーワードの活用」といった特性を持ち、集客力と利用者満足度を高めています。宿泊施設にとっては、これらの特性を理解して活用することで、効率的な集客や顧客獲得につなげることが可能です。
じゃらんnetのユーザー特性
じゃらんnetの利用者には、ポイント制度やキャンペーンを活用するお得志向と、旅の体験を重視する傾向が見られます。ユーザーの行動パターンや検索傾向を知ることは、集客戦略を立てるうえで重要なポイントです。
① 「過ごし方」から宿を選ぶユーザーが多い傾向
じゃらんnetのユーザーは、旅行の過ごし方や楽しみ方から宿泊先を選ぶ傾向があります。
Google検索キーワードから、じゃらんnetに関する検索動向を分析すると、「一人でゆっくりしたい」「ペットと一緒に泊まりたい」「非日常的なグランピング体験をしたい」といった、旅のコンテンツや過ごし方を重視する傾向が見られます。
楽天トラベルでは「お得に予約がしたい」傾向が見られましたが、じゃらんnetではこうした体験志向の検索が目立つという特色がわかりました。
② セールやキャンペーンを狙って予約
前途では、「過ごし方」から宿を選ぶユーザーが多いと記載したものの、やはりじゃらんnetもセールやキャンペーンをきっかけに予約する傾向が強いのが特徴です。
「じゃらん スペシャルウィーク」や「じゃらんのお得な10日間」といった企画の認知度も高く、開催時には予約数が伸びやすくなります。
さらに、基本還元率が高くポイントが貯まりやすいため、Pontaポイントやdポイントを重視している利用者にとっても魅力的な予約サイトとなっています。
こうしたユーザー特性を踏まえると、宿泊施設はセールやポイント施策に加え、体験型やテーマ性のある宿泊プランを用意することで、利用者に魅力を伝えやすくなり、じゃらんnetでの集客力をより高められます。
データ分析の基本:じゃらんnet管理画面を活用しよう
指標の定義(じゃらんnet管理画面から取得可能)
じゃらんnetから取得できるデータからユーザーの動きやページの状況を具体的に数値で把握できます。
ここでは、基本指標とその定義、取得方法を確認しましょう。
アクセス人数 | 取得不可。 └ ページビュー数を基に、1人当たりページビュー数を仮定して算出することは可能。例えば、1人当たりのページビュー数を4ページと仮定することで、仮想アクセス数を一貫性をもって計測できます。 |
PV数(ページビュー数) | 「施設詳細」「プラン一覧」「プラン詳細」それぞれの表示回数を足したもの |
転換率(CVR) | 取得不可。 └ PV数(もしくは自身で算出した仮想アクセス数)に対しての成約率 【予約件数】÷【PV数(もしくは自身で算出した仮想アクセス数)】×100で、転換率が算出できます。 |
キャンセル率 |
予約された件数のうち、キャンセルとなった割合 【キャンセル件数】÷【(宿泊件数)+(キャンセル件数)】×100で、キャンセル率が算出できます。 |
1. お客様管理> ランキング・予約分析ダウンロード > 予約情報を確認する> 予約状況分析【年間】

2. CSVダウンロードデータより【 PV数 】がご確認いただけます。
3. 同じCSVダウンロードデータより【 転換率 】を算出します。
【予約件数】÷【PV数】×100の計算式から算出できます。
例)100(予約件数)÷ 50,000(PV数)× 100 = 0.2%
※注意点※
通常であれば転換率はアクセス人数と予約件数から算出しますが、じゃらんではPV数にて算出するため楽天トラベルなどの数値と比べると数字が小さくなります。
アクセス人数を算出する際に、PV数を基に1人当たりページビュー数を仮定して算出することは可能です。
※キャンセル率はダウンロードできる指標に無いため、手計算が必要になります。
1.お客様管理> ランキング・予約分析ダウンロード > 宿泊実績を確認する> 宿泊実績分析【年間】
2.CSVダウンロードデータよりキャンセル件数、宿泊件数の数字から算出します。
【キャンセル件数】÷【(宿泊件数)+(キャンセル件数)】×100の計算式から算出できます。
例)30【キャンセル件数】÷【 70(宿泊件数)+ 30(キャンセル件数)】×100= 30%
以上のやり方で、それぞれのデータを取得することが可能になります。
これらを表にまとめると、どの段階でユーザーの離脱があるのか、どの月に、どの程度の変化があるのかを可視化できるようになります。
じゃらんnetでどのように対策できるのかを考える
パーチェスファネルを使った分析
おさらいになりますが、パーチェスファネルとは購買行動プロセスを可視化したフレームワークです。パーチェスファネルを認知機会から宿泊に至るまでの行動の流れを段階ごとに分けて整理し、じゃらんnetより取得できるデータ指標を落とし込んでみると、下図のようになります。
アクセス人数が取得できないため、PV数の割合が非常に大きくなります。
実際にじゃらんnetから取得したデータを表にまとめてみましょう。
<分析の一例>
上記の表から読み取れるのは、2025年7月において「PV数」に課題があるという点です。
PV数が過去の月と比較し、「認知機会~比較検討」の段階が大幅に減少しています。転換率には変化がないことから「予約」への移行は問題なくこれまで通りであることが分かります。そのため、認知機会に変化があったと推測されます。このようなケースでは、掲載順位、キャンペーンや特集の参画状況などの認知環境や、この先の在庫販売状況に、これまでと何か変わったことが無いかを振り返ってみましょう。
このように、データを段階ごとに分解して見ることで、「どこでユーザーが離脱しているのか」「どの部分を優先的に改善すべきか」といった判断材料を得ることができます。
以下では、じゃらんnetの特性を加味した、段階ごとの打ち手を一部ご紹介します。
じゃらんnetで出来る改善策を一部抜粋
ここまで、ユーザーの傾向やデータの見方について整理してきました。最後に、じゃらんnetだからこそ活かせる独自の施策や機能について触れておきましょう。
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1.特集への参画をし、認知機会を増やす |
定期更新される特集を確認し、該当するものはエントリーしましょう |
じゃらんnetの特徴のひとつに、無料で参画できる「特集」があります。認知機会を広げるためには、条件を満たす特集には積極的にエントリーすることが重要です。少しの工夫で参加できる場合もあるため、集客につなげるチャンスとして活用しましょう。
管理画面には、年度ごとに「常設特集」「季節特集」の予定と詳細がまとめられた資料があります。これらをカレンダーに落とし込んでおけば、エントリー忘れの防止や過去の振り返りにも役立てることができるためおすすめです。
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2.一覧ページのファーストビューにこだわりを |
写真、キャッチ、コピーはお客様が求めているものにしましょう |
お客様が一覧ページから宿を選ぶ際に、写真、キャッチ、コピーは興味を持って施設ページをクリックしてもらえるかどうかを左右する重要な役目があります。
実際の一覧ページに表示されている画面を、PC・モバイル・アプリで見比べてみると媒体によって違いがあることがわかります。モバイル・アプリは、PCにあるキャッチ(オレンジ色の枠線)はなく、施設の外観写真が表示されています。
変わらず表示されているのは、コピー(赤色の枠線)です。文字数は全角96文字の登録ができますが、表示されている文字数は閲覧する媒体により異なるため、いかにテキストの前方へお客様が求めているもの、気になるキーワードを入れられるかが重要です。
PCの場合、キャッチと写真で施設の魅力を強く印象づけることができます。特に写真は、その地域に来る人が求める景色や体験、季節感、そして「この施設に泊まる価値」を感じられる1枚を選ぶことが重要です。こうした写真は、お客様に「雰囲気がいい」「ここに行ってみたい」と思わせ、興味を引くきっかけになります。
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写真とテキストで施設の印象をアップ |
写真で興味を引かせ、テキストで明確に情報を伝えよう |
施設ページやプランページの写真は、宿の魅力を伝えると同時に一定の枚数を用意したうえで、テキストで情報を明確に伝えることが重要です。
まず、写真を選ぶときは、ページの種類によって意識すると効果的です。
●施設ページ
宿全体の魅力を伝える写真を中心に、外観・ロビー・客室・食事など、清潔感や雰囲気が伝わる写真を選びましょう。特に客室の情報量は大事です。
●プランページ
プランの目玉や体験の瞬間、非日常感を感じられる写真がよいでしょう。体験中の様子や料理の主役、季節感のある景色など、ユーザーが「このプランを体験したい」と思える写真が理想です。
Point!
・季節感を意識した写真は、滞在中の雰囲気や楽しさをイメージしやすくなります。
・写真の色味や雰囲気をそろえると、ページ全体の印象がまとまり、宿の魅力がより伝わりやすくなります。
テキストを書くときは、まず冒頭にカテゴリを入れると読みやすくなります。たとえば [客室] [夕食] [朝食] [施設設備] [ロビー] など。カテゴリのあとに説明を書くと、ユーザーが知りたいことをすぐに理解できます。
さらに、その施設ならではの特長を具体的に書くと、写真以上に情報が伝わります。写真とテキストをうまく組み合わせれば、滞在のイメージもぐっと膨らみ、施設の魅力がもっと伝わるページになります。
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「今、ここでしか得られない理由」を強化する |
代替できない選択にすることで、他社へのスイッチングや旅行自体の延期を防ぐ。 |
前途でも記載の通り、じゃらんnetのユーザーは、どんな過ごし方をしたいか体験を重視して宿を選ぶ傾向があります。キャンセルが「他施設への乗り換え」だと想定するならば、対策の要は『今、ここでしか得られない理由』を強化することです。少しでも「代替できない選択」にできれば、他社へのスイッチングや旅行自体の延期を防げます。
具体的には、「○月限定の○○体験」「当館だけの○○プラン」など、時期や場所の限定性を打ち出し、写真やテキストで特別感を伝えることが有効です。お客様に「良い選択をした」という満足感を予約時点で感じてもらえれば、心変わりによるキャンセルを抑えてくれます。
さいごに
ここまででお伝えしてきたとおり、宿選びには過ごし方が大きな要素になってきています。じゃらんnetのデータには、そんな「過ごし方への期待」を持ったお客様の一連の反応が記録されています。
20,000を超える施設が掲載される競争環境で選ばれ続けるには、このデータを読み解き、根拠に基づいた改善策を的確に実行できる専門知識とマーケティングスキルが不可欠です。そして、このスキルを持った「人材」を育てていくことが、施設の経営資源を最大限に引き出す鍵といえるでしょう。
なぜなら、「人材」という資源だけが、他の資源「お金、時間、モノ(設備やサービス等)、立地、情報(歴史や想い等)」を活かしたり、半減させたりする唯一の存在だからです。どれだけ良い環境があっても、それを効果的に扱い、お客様の体験価値として届ける「人材」がいなければ、その価値は埋もれてしまいます。
3回に渡りご紹介したデータ分析の考え方は、まさに他の経営資源を活かせる「人材」を育てるための土台です。ここまで読まれた皆さんは、ぜひ他のスタッフの方と一緒に管理画面を開き、数字と向き合ってみてください。その先にある学びや気づきが、きっと皆さんの施設の安定した未来を形づくっていくでしょう。
まずは、課題を見える化しよう!
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